「安倍9条改憲は戦争への道」 九条の会ブクレット
2017年5月3日の安倍首相の改憲発言の直後に緊急出版されたもの。事務局長の小森陽一が「序文」を書き。憲法学者の浦田一郎が「九条加憲の意味と危険性」を書き、政治学者の渡辺治が「運動の方向性」を書いている。
渡辺の一文は、「改憲の動きの歴史」から説き起こされている。改憲の動きはこれまで三回あったとされる。
1960年の安保改定の際の改憲の動き、1990年以降の改憲の動き、第二次安倍内閣による改憲の動き。いまが三度目ということだ。
1960年の動きに対しては60年安保の運動が反撃となった。社共両党を中心とする「安保改定阻止国民会議」の国民的運動が立ちはだかり、1990年以降の動きに対しては「九条の会」型の共同が阻止の力となった。
この二つを経て「九条廃止、国防軍創設」は困難であることが分かった。だから第三の安倍内閣は、それを踏まえて、改憲の戦略を変えた。
より改憲しやすいように、「自衛隊加憲」「教育無償化などとの抱き合わせ」の二つを持ち出してきた。「自衛隊加憲」は単に明記するだけではなく「九条の意味を変えるもの」ということが説かれる。第一第二の改憲の動きをへて自衛隊は軍隊としての機能を果たすのに制約がかかってきた。自衛隊を条文に明記するだけで、その制約がなくなってしまうことが明らかにされる。
九条第三項がどういう条文となろうが、「自衛隊」が条文に書き込まれることで、国際法上の軍隊と同列になり、軍法会議の設置、海外への派遣の拡大、九条の空文化が進む、と論じられる。
三度目の改憲の動き。これに総がかり行動実行委員会、市民連合が立ちはだかっているとされる。そこで野党共闘が本格的に構築される前に改憲をしようと、2020年改憲の期限が区切られたのだと分析する。
何をするか。三つ提起されている。1、実質的改憲の沖縄辺野古基地建設阻止、戦争法発動阻止に力を注ぐ。2、3000万署名によってかつてない協力共同を作る。3、憲法の学習運動を全国で展開する。
これらが政治学の立場から論じられ、運動論となっている。
そして目標は「改憲の発議を止める」「安倍内閣を退陣させる」この二つを強調している。
浦田の一文は、これまでの、政府の憲法解釈の変化、自衛隊を明記することで九条の性格が変わってしまうこと、九条加憲が九条二項削除につながることが、憲法学の立場から論じられる。
是非、一読をお薦めしたい。500円。