岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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原発の事故:人間と科学技術

2011年06月02日 23時59分59秒 | 政治経済論・メモ

 科学技術と人間の問題。最近の問題で言うと、やはり原子力発電所の問題を考える

 どうやら原子力発電所は無害先端技術ではなさそうだ。元来原発には放射性物質が漏れないように「5つの壁」があるとされてきた。

1・燃料をペレット状に加工してある(棒状に固める)。

2・そのまわりを被覆管という金属で覆い放射線を防ぐ。

3・その燃料を圧力容器という鋼鉄製の容器に入れ、水で冷却しながら放射線を遮る。

4・それをさらに原子炉格納容器で囲む。

5・その格納容器をコンクリート製の原子炉建屋で覆う。

 ところが、まず原子炉建屋が水素爆発で吹き飛んだ。1号機は上部のみ、3号機は原型をとどめぬまでに。

 それでも格納容器より内側は異常なく、津波で非常電源とそれを稼働する重油タンクが津波にさらわれ一時的に冷却機能が失われたので放水により冷却水を補っている。外部電源と冷却機能が復旧すれば、燃料を安定冷却の状態に戻すことができる。燃料は一部が損傷しているが、全体の3分の2は水につかっている状態だ。

 これが何度も繰り返された原子力安全保安院の説明だった。しかし当初からこの説明には釈然としないものがあった。復旧までの工程を聞かれた原子力委員会の委員が、

「とんでもない。今、事故は現在進行形だ。終息の時期を話す段階ではない。」

と言ったからだ。ブルブルと頬を左右に激しく振ったのを覚えている。

 そしてこの数日、驚きの情報が相次いで発表されている。

・燃料の一部損傷ではなく、炉心溶融(メルトダウン)が地震直後に起こっている。

・その溶けた燃料が圧力容器から外へ漏れ出している。

・漏れた箇所は配管があり、その周りのシールが損傷している。

・穴の大きさは数センチに及ぶ。

・その損傷は津波によるものではなく、地震の揺れによって出来たものだ。

 こうなって来ると津波対策だけでなく、日本中の原発の耐震設計への信頼が揺らぐ。浜岡原発の再開条件、「津波対策ができたら」というのも見直さねばならないだろう。

 比較的安定していると繰り返し記者会見していた原子力安全保安院の N 審議官の顔をこの頃あまり見なくなった。震災までは貿易を担当していた経済産業省の官僚が、突如、原子力安全保安院の広報担当になったとも聞いた。科学者であれば状況がひっ迫していることは自明なので、つい本音が出るかも知れない。だから原子力の素人を広報担当にあてたと考えるのは、うがち過ぎだろうか。

 しかもこの情報の開示は、国際原子力委員会( IAEA )の調査団が来日する直前。国際原子力機関の目は誤魔化せないと思ったというのは、さらにうがった見方か。どうだろうか。





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