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書評:「口語六法全書 憲法」 自由国民社 刊

2014年06月11日 23時59分59秒 | 書評(政治経済、歴史、自然科学)
「口語 憲法」自由国民社 刊 星野安三郎、小林孝輔 監修

 本書は「口語六法全書」というサブタイトルがついている。その名の通り、日本国憲法の条文の解説だけでなく、憲法をめぐる論争点も記述している。その論点に関する判例も記載されている。

 六法全書だが、一般の社会人、学生が読者として想定されている。それゆえ読み易い、また論争点、憲法解釈の経緯も年表にまとめられている。

 先ず「はしがき」の一文を紹介しよう。

「一般に憲法や法律の意味内容を条文ごとに、法全体として矛盾なく解説する本を外国語でコメンタールという。日本国憲法のコメンタールは、すでに三種ほど出版されている。どれも信頼できるものであるが専門書的色彩が濃い。それに対し、本書はもっぱら一般市民や学生のために憲法の常識的理解に役立つことを期待している。」

 ここに本書の最大の特長があると言えよう。本書の構成は、ページ下段に憲法の条文、その上に解説が書かれている。そして巻末には「知っておきたい重要判例解説」「改憲論議のあゆみと問題点」「三日間でわかる憲法総解説」の三章が「追編」として収録されている。

 日本国憲法の三大原則に沿って内容を紹介しよう。

1、国民主権:

「明治憲法の体制が、政府による戦争の惨禍をまねいたとするならば、戦争を防止するためには、その反対の原理、すなわち、平和と自由を愛する国民が主権者となり、その意思によって一切の政治を運営し、平和を愛する他の国民と協力することが必要となるはずである。」


2、恒久平和:

「第二章は九条、一か条しかないが、現行憲法における最大の特色であり、中心である。・・・戦争第一主義・軍事優先主義の明治憲法と比較すれば、百八十度の転換を意味するものであり、国際的な平和維持に必要なだけでなく、国民生活のうえでもまさに画期的であった。」

3、基本的人権の尊重:

「18~19世紀に確立された人権理論はもともと国家権力からの不当な干渉の排除によって得られた、いわば消極的な国家権力鑑賞排除という形での自由権であった。20世紀になると、経済社会の情勢の変化に応じ、人間らしい生活の保持のために、国家の積極的政策を要求する生存権の主張が強くあらわれてきた。」


4、国会について:

「政治を”強い国会と弱い政府”にやらせ、そのことによって、できるだけ、国民の権利と幸福を確保しようとする。」


 以上が内容のあらましだが、執筆者は、総勢16人の法学者だ。「改憲論」が声高に叫ばれ、「解釈改憲」がおこなわれようとする今、専門的知識を含めて、考えさせられ、また考える材料を提供してくれる一冊だ。





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