国会図書館蔵の「源氏物語」です。
慶長年間に写された物です。
原文は「光源氏、名のみことことしう言ひ消たれたまふ咎多かなるに、いとどかかる好きごとどもを、末の世にも聞き伝えて軽びたる名をや流さむと、忍びたまひける隠ろへごとさへ語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。」となります。
これを与謝野晶子訳で訳すと次のようになります。
「光源氏、すばらしい名で、青春を盛り上げてできたような人が思われる。自然奔放な好色生活が想像される。しかし実際は、それよりずっと質素(じみ)な心もちの青年であった。そのうえ恋愛という一つのことで後世へ自分が誤って伝えられるようになってはと、異性との交渉をずいぶん内輪にしていたのであるが、ここに書く話のようなことが伝わっているのは、世間がお多弁(しゃべり)であるからなのだ。」
帚木の冒頭の部分ですが、与謝野晶子訳はとてもわかりやすいです。4人の男性が女性談議をする「雨夜の品定め」で有名な段です。