詩人、室生犀星は私生児として生まれました。その生い立ちの不憫さと貧しさゆえ、食に対するこだわりも強いものがあったようです。
大正12年疎開した金沢では、つぐみという小鳥を食べました。
その事は詩集「高麗の花」に書いてあります。
春さきになると小鳥がおいしくなる/ 美しい柔らかい羽根をひいた裸のまま/火に炙ると漆のやうに焦げる/人間の心をよろこばせる美しい味ひと/それを食べたあとのからだが/ほんのり桜いろに温まつてくる/冬木にとまる小鳥をみると/小ぢんまりしたからだを感じるのだ。
娘の室生朝子は「父室生犀星」の中で、つぐみの毛を何羽もむしったことを回想しています。山にかすみ網を張って大量のつぐみをとって持ち帰り、バケツのなかでつぐみの羽をむしりました。それはかなり辛抱のいる作業でした。肉はバターでいためました。内臓は別に料理し、骨はこまかく叩いて小量のメリケン粉を加えて団子とし、じぶ煮としたといいます。
犀星は果物好きで、杏や柿、いちじく、といった野性味のある果実を好みました。
戦争中、軽井沢に疎開したときは、野草を食べて生き延びました。
この春、/われ市上に食物を見ることなく/つひに路傍の野草をあされり、/いたどり よめ菜 ぎぼしなぞ/日として摘み取らざることなく/和へて食さざることなかりき・・・・・
犀星の食への思いが飢渇感となり、よりいっそうの荒涼とした抒情性を感じさせてくれるのです。
大正12年疎開した金沢では、つぐみという小鳥を食べました。
その事は詩集「高麗の花」に書いてあります。
春さきになると小鳥がおいしくなる/ 美しい柔らかい羽根をひいた裸のまま/火に炙ると漆のやうに焦げる/人間の心をよろこばせる美しい味ひと/それを食べたあとのからだが/ほんのり桜いろに温まつてくる/冬木にとまる小鳥をみると/小ぢんまりしたからだを感じるのだ。
娘の室生朝子は「父室生犀星」の中で、つぐみの毛を何羽もむしったことを回想しています。山にかすみ網を張って大量のつぐみをとって持ち帰り、バケツのなかでつぐみの羽をむしりました。それはかなり辛抱のいる作業でした。肉はバターでいためました。内臓は別に料理し、骨はこまかく叩いて小量のメリケン粉を加えて団子とし、じぶ煮としたといいます。
犀星は果物好きで、杏や柿、いちじく、といった野性味のある果実を好みました。
戦争中、軽井沢に疎開したときは、野草を食べて生き延びました。
この春、/われ市上に食物を見ることなく/つひに路傍の野草をあされり、/いたどり よめ菜 ぎぼしなぞ/日として摘み取らざることなく/和へて食さざることなかりき・・・・・
犀星の食への思いが飢渇感となり、よりいっそうの荒涼とした抒情性を感じさせてくれるのです。