治療や訓練、リハビリによって、
障害を治すこと、減らすことが、
親の一番の役割だと思うと、
すれ違う。
医学やテクノロジーの進歩だけが、
子どもの障害を克服する希望だとすがると、
すれ違う。
それは、「障害のある身体・姿」では、
生きることが許されなかった時代の幻想の名残だ。
日本のろう学校が、
手話を「みっともない」として長い間禁止してきたように。
身体障害や知的障害の人を、
一括して精神障害として扱ってきたように。
そうした強固な「差別扱い」をされる人々への怖れから、(ハンセン病)
差別されたものから免れるためには、
治ることしか希望がなかった時代、
障害を否定するしかなかった時代のコンプレックスだった。
これ以上、私たちは、
障害への嫌悪、差別、恐怖、を衝動として生きたくはない。
専門家がなんと言おうと、
国や行政がなんと言おうと、
自分が子どもとの生活を楽しむことができるように、
信じられる社会だと思えるように、
自分の生き方を作りたい。
その上で、必要な子どもに、
必要な治療やリハビリが、
それぞれ一人一人の子どもの生活の場を壊さないで、
提供できる仕組みを作りたい。
そういう社会へ少しづつ、変えていきたい。
「障害」をもつ子どもとの出会いは、
日ごろ、容認し、あるいは見ないようにして
適応してきた社会のあり様に
疑問を浮き上がらせる。
そうした子どもとの出会いは、
親や教師に、自分の生き方を問い直せと言っている。
それは、単に障害があるのにこんなにがんばっているという
24時間テレビ的な話ではない。
がんばらなければならないのは、子どもたちではなく、
いつだって私たち大人の方なのだから。
偉そうに「援助」しようとしている私たちの方が、
実はこの社会で「遭難」していることに気づいていない。
ただ子どもに障害があるだけで、
ただ子どもが病気だというだけで、
こんなにも生き辛いのだ。
さらに、障害があっても、
兄妹や地域の子どもたちと同じ生活をしたいと望むだけで、
こんなにも生き辛いのだ。
まして、千葉県では、日本初の「障害者差別禁止の条例」で、
障害児の親が差別者だという、日本初の解釈を出している。
「特別支援教育を受けさせない親は差別者だ」という。
そんなバカな話が…いま現実にある。
養護学校義務化のまえは、
親が子どもを学校に行かせず、座敷牢に入れていても、
「差別者」だとは言われなかった。
こんな子はいらないと、施設に子どもを捨てても、
それでも「差別者」だという法律はなかった。
養護学校義務化に反対して、
地域の普通学級に通うために、座り込みをし、裁判をして、
養護学校に行くことを拒否しても、
親が差別者だと言われたことはなかった。
中学生の当事者が、
自ら特殊学級には通いたくないと裁判を起こして闘っても、
親が差別者だと言われることはなかった。
それが、いま、
特別支援教育を受けさせない親は、「差別者」だという。
そんな、バカな現実が、
いまこの時代、千葉県にはある。
いま、ここで、生き辛いのは、
「子ども」に「障害」があるからではなく、
「健常」と言われる私たち自身が、
生き辛くて、息苦しくて、仕方がないのだ。
やっぱり、息苦しくて、遭難しているのは、
子どもよりも私たちの方なのだ。
子どもたちは、その障害のあるままで、堂々と生きている。
やっぱり、救助が必要なのは、私たちなのだ。
子どもたちに当たり前の援助や配慮が準備できない社会で、
苦しむ子どもたちを前にして、
子どもたちにいっぱいいっぱい我慢させている、
力のない私たちもまた、遭難しそうなのだ。
この社会に。
自分が本当に望んでいる、人と人とのつながりをあきらめ、
心は遭難したままなのだ。
その私たちに、「待っててね。いま助けに行くからね」と、
いつもそばにいてくれるのは、子どもたちだった。
私たちが、保護しなければ、援助しなければ、と、
かばおうとする、その子どもたちだった。
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