昨日は高校の前期試験の合格発表でした。
会から受験した子どもたちは、定員割れの高校で一人合格。
定員オーバーでの受験だった3人は不合格でした。
3時から県教委と2時間余り話し合いましたが、「結果」が出てしまった後に何を話しても空しくなります。障害のある子にとって、「不利益」そのものである入試を前提に話し合うしかない、そのことに無力感を感じます。
そんな中で唯一の救いが、T君の合格でした。
T君は小学校1年生は普通学級で過ごしましたが、2年生から特殊学級に移りました。
でも、彼は本当はずっと、普通学級にいたかったのです。
特殊学級に移ってすぐ、「ここは学校じゃない」と言って、学校に行かなくなります。
特殊学級の担任から、「薬を飲ませてください」と言われ、病院に行き薬を飲みはじめます。
普通学級に行きたくて、「不登校」や「落ち着かなさ」が生じているのだから、薬が効くはずがありません。そして、薬は増え続けます。
中学に入るときも、T君は「普通学級」に行きたいと言いますがかなわず、不登校になります。
お母さんは言います。「学校や専門家の人たちの言うことが一番だと信じていた」
信じていた、と言いながら、でも「担任にも学校にも逆らうことが恐くて、息子の希望を伝えることができませんでした」と言います。
お母さんが「会」に来たのは、中3の11月7日でした。
私は、それまでの経緯を聞きながら、この時点でお母さんが、全てを覆して、特別支援学級から普通高校を受験するには、どれほど高い壁を越えなければいけないかを思いました。
でも、私はどんなにお母さんが苦しんで迷うことになっても、言わずにいれませんでした。
「中3のこの時期に、普通学級に戻って、さらにそこから受験するというスケジュールがきつければ、特別支援学級からでも、普通高校の受験はできますよ」
「担任や校長は、反対するかもしれません」
「無理だと言われると思います」「受験はできても、合格できない」「たとえ合格できたとして、高校の授業についていけるのか。小学校も、中学校も不登校だったのに」
そんなふうに言われるかもしれません。
現実には、合格できるという保障はありません。
でも、小学校2年から、7歳のときからずっと、「普通」に戻りたかった、そこが自分の居場所だと信じて願い続けてきた彼が、今も普通高校に行きたいと言うなら、現実に入れるかどうかわからないけど、今度こそ彼の願いにそって動きませんか。
私たちは全力で応援しますよ。
そんな話をしたのだったと思います。正直、お母さんが受験を決断してくれるかどうか、11月15日の県教委交渉の日に来てくれるかどうか半信半疑でした。
でも、北村小夜さんが言う通り、「母親」は素敵ですよね。
15日に、お母さんは今度こそ息子の実持ちを尊重してあげたいと、交渉に参加してくれました。
それだけでなく地域の会の応援を受けて、12月には、学籍も「特別支援学級」から「普通学級」に戻しました(o|o)
もちろん、中3の12月に「普通学級」に戻ったからといって、すぐに学校に行けるというわけではありません。
でも、7歳から願い続けてきた「自分の居場所」、「普通学級」に戻ったことで、「まるで別人のように落ち着きました」とお母さんは言います。
そういう長い長い、苦労を超えて、彼は受験に臨んだのでした。彼以上に、「普通高校」に入りたいと言う強い願いを持った子どもが、どれだけいるでしょう。
彼の7歳の魂は、岩窟王のように、強く希望を持ち続けたのだと、私は思うのです。
7歳、8歳、9才、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳と、ずっと彼は「普通学級に戻りたい」と願ってきたのです。
その彼が、昨日高校に合格しました。
7歳から願い続けてきた希望が、ようやくかなったのです。
6歳の時に一緒だったみんなと一緒の世界に、やっと戻って来れました。
不合格になった子たちのことを思って、ずっと硬い顔をしていたけれど、「喜んでいいんだよ」と声をかけられた後の笑顔は、本当にすてきな笑顔でした。
合格発表の掲示板に、自分の番号を見つけた直後、応援にかけつけた会の人たちを振り向いて言った言葉は、「(会の)みんな合格できてるかなあ」でした。
毎年、発表の日に思うのですが、先に受かった子どもたちは、自分の喜びよりも、不合格になった子どもたちの心配をします。
月に1回、顔を合わす、同じ受験生仲間の心配をします。
この子たちを、発達の遅れがあるとか、コミュニケーションの問題があるとか、あげくに薬を飲ませて大人しくさせようと言う大人たちは本当にばかだと、私は心の底から思います。
次の後期試験の発表は3月8日です。
全員、合格して、高校生になれますように(・o・)
そして、T君が今まで奪われてきた、みんなと一緒の生活を、高校生活を、思い切り楽しめますように(^_-)-☆
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