【助けづらい話】(7)
《「たすけにいく」と「たすけにくい」》Ⅳ
《新しい・助け方は、子どもに聞け》
(前回までのまとめ。)
医療は子どもの命を「たすけにいく」。
教育と福祉は子どもの生活を「たすけにくい」。
「たすけにくい」「助けづらい」とみられてきたのは、「子ども」だったが、
本当は、大人が「助け方」を知らなかっただけなんじゃないか。
では、「新しい助け方」とは何か。
医療の世界なら、赤ちゃんに呼吸器をつけること、気管切開をすること、があった。
保育・教育・福祉の世界なら、呼吸器をつけた子、気管切開の子の、ふつうの「子どもの生活」を守ることだろ。
◇
歩さんの「バクバクっ子の在宅記」から。
【保育園側が私を保育するにあたって最初に考えたのは、園児たちに「みんなとは違う」という意識をもたせたくなかったため、「特別扱い」をしないということだそうです。
そのため、遠足や運動会などの行事はもちろん、友人とお絵描きやプールに入ったり……と、友達と一緒の保育園生活を送りました。また、運動会や劇あそびなど、「できないではなくどうすればできるか」を、友達と保育士さんと私で常に考えながらしてきました。】
そうすることで、子どもたちの中から「新しい・助け方」を、私たちに教えてくれる子が現れます。
【ある日友達に、「歩、どけや」と言われているのを園長先生が見て、「すっかり私がクラスの一員になったなと思ったそうです。】
呼吸器をつけて手作りのストレッチャーに横たわっている歩ちゃんに向かって、「どけや」という子が「いる」ということ。
「どけや」と言える子を育て、「どけや」と言われて「なによ」と感じる子を育てるということ。
そこから、私たちは「新しい・助け方」を学ぶことができます。
◇
そして、「歩、どけや」から20年後、保育園の子どもたちは、はさらに「新しい・助け方」を私たちに教えてくれます。
【母やヘルパーからは、「歩、就職どないするん? また今年もプー太郎するんか?」と言われていました。
……思い切って園長先生に「働かせて下さい」とメールでお願いしました。
「卒園した歩さんが働きに来るのは嬉しい。園長会議にかけてみるから一ヶ月程待ってね」
…母に内緒にしていました。
内緒にしていたので結果がわかったとき、母に怒られないかと心配しました。
…働けるとわかり、……母は嬉し涙を流していました。】
【最初の頃、毎年言われることですが、園児たちから「歩お姉さんって死んでいるの?」と聞かれショックだったけど、手を動かして、「死んでないよ。ちゃんと手動いているでしょ」と言うと、園児たちは「ふ~ん、そうなんや」と納得したようなしてないような顔をしていました。
……そして、卒園児が時々道で私を見つけると、「歩お姉さん」と声をかけてくれます。】
◇
いま、私が思っている「新しい・助け方」。
それは、「歩、どけや」と言える子ども。
「歩お姉さんって死んでいるの?」と聞ける子ども。
そのことが、「歩お姉さん」と声をかける子どもたちがあふれる町になるということ。
だから、《新しい・助け方は、子どもに聞け》ということ。
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