第3章
《普通学級での、あんなとき、こんなとき…
教員・介助員として、どうすればいいの?》
普通学級の子どもに、迷惑にならない対応とは、「困った人を助けてあげる」「できないことを、できるように援助してあげる」というものではありません。
これらは一般的には大切なことですが、普通学級の配慮としては十分なものとはいえません。
なぜなら、一般的に教員や介助員の人は、普通学級に障害児がいるのが当たり前の環境で子ども時代を過ごした経験がないからです。
だから、その人が自分の経験した「学校」や「教育的配慮」をもとに「介助」を行うと、「お節介」や「余計なお世話」になってしまうことが少なくありません。
「できないことを助けてあげる」という態度で介助をすることは、「障害があるけれど、みんなと同じようにふるまえるように見せる」特別扱いになってしまいます。
その「特別扱い」は、「みんなと一緒」に違和感を埋め込みます。
「特別扱い」には、「みんな一緒」に自然と含まれる「特別扱い」と、「みんな一緒」を嘘っぽくさせる「特別扱い」の二種類があります。
普通学級の配慮として欠かせないのは、「みんな一緒」を壊さないための配慮のスキルです。その自覚がなければ、「特別扱い」でなく、「合理的配慮」という言葉を使って行ったとしても、結果は同じです。あくまでも「みんなと一緒」に含みこまれる配慮の感覚を、あなたのなかに育ててもらいたいのです。
「できない子」としてではなく、ただ「子ども」としてつきあってほしいのです。
長い間、「障害のある子」を想定してこなかった学校で、まして生まれて数年しか人生経験のない子が、自分の手持ちの力で、安心の場所と所属を手に入れるために、あなたにできることを考えてほしいのです。
そのために、わたしたちは自分が「介助」(援助)する子どもにどのように影響を与えているのか、を理解しなくてはなりません。
実際、まだ幼い子どもが、なんらかの障害をもっているとき、できないこと、失敗することがあります。それを障害のせいで起こる「問題行動」とみる人も大勢います。
でも、「問題行動」「障害のせい」とみれば、それへの対応は、その子の思いや気持ちからは離れたものになります。
そうした「特別支援」や「教育的指導」に囲まれた環境はこう呼ばれるようになりました。
「遅れを招く環境」。
「将来のため」「自立のため」という言葉で着飾った「支援」は、子どもの「所属感」を障害します。
子どもが持っている障害が、クラスへの所属や仲間感を、じゃまするのではありません。
大人の対応が、子どもが障害をもったままで「所属」するクラス、仲間を奪うことになるのです。
「遅れを招く環境」とは、子どもが持っている力を奪い、障害によって制限されていること以外の大切な、「観察学習」や「自尊感情」を損ねます。
そして、その原因が「自分の障害」にあると思わせて、普通の子どもとして抱く希望をあきらめさせる力を持っています。
6歳の子どもにとって、初めての学校、なじみのない授業という生活、大勢の見知らぬ子どもや大人。
初めてのことに慣れたり見通すことが苦手な子どもは、不安や思い通りにいかないジレンマを抱えることが多くなるかもしれません。
そんなときに、「できない」「わからない」「わがまま」「仕方ない子ども」という扱いをされれば、不安な気持ちはいっそう強まります。
自分のやり方を認められなければ、自分のやり方を見つけることができません。
そして、私たちも、その子の障害をもって子ども時代を過ごしたことがないために、その子のやり方を教えることができません。
また私たちは、他人が敬意をもって自分に接しないとき、落ち着かない気持ちになり、自分が何者ななのか不安になってしまうと知っています。
子どもも同じです。
遅れを招く環境という考えがなかった時代、すべてのできなさや失敗は「障害」の一言で片づけられてきました。
私たちは、なぜ子どもの「適応しようとする行動」を「問題行動」と読んできたのかを考える必要があります。
それを「矯正」してあげようとして、私たち自身が「遅れを招く環境」の一部になってしまい、その子にとっての大切な「体験学習と失敗する権利や、大切なものを奪ってしまったのか、について理解すれば、どうすればそれを奪わずにすむのかについてもわかるようになります。
ここでは、よくある状況と、「遅れを招く環境」的対応と、「子ども自身の適応行動を促す」対応の例をあげてみます。
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