(A)
【スタートは早い方がいい。すなわち乳児が正常に発育するには、主に一人か二人の特定の養育者から献身的な世話を受ける必要があり、そしてこの養育者には、新米の親に課せられる骨身を削るような負担を理解し和らげてやる、優しいコミュニティが必要だ。】
(『犬として育てられた少年』ブルース・D.ペリー)
(B)
スタートは早い方がいい。すなわち障害のある子もない子も、この社会には様々人たちが一緒に生きていることを知る必要があり、誰もが手を借りるように知恵を借り、手をかすように知恵をかしあって生きていることを感じる必要がある。人間は社会的な哺乳類であり、お互いに助け合って生きていく生き物だということを感じ、人間の社会への信頼を感じながら成長していくには、すべての子どもの安心と安全が大事にされなければならない。
障害のある子どもの中には、幼いうちは人とつきあうことが苦手な子どももいる。この世の中の仕組みの中で、どうふるまっていいのか、とまどい、探り、自分の安心と安全を見定める間の時間、ほかの子どもより少しだけ長い時間、「赤ちゃんのように」見えることもある。
その間に、その子どもを「赤ちゃんと同じ0歳の知能」だと間違って値踏みしたり、人間関係に無関心な障害だと間違える専門家にだまされないことが必要だ。
子どもが人への関心やつながりを開放するためには、親や、親の代わりの特定の養育者に、ありのままを受け止められ、周囲の無理解から守られる必要がある。その親や養育者には、「新米の親に課せられる骨身を削るような負担を理解し和らげてやる、優しいコミュニティが必要だ。」
それと同時に、子どもが試行錯誤しながら必死に人とのつながりを求めている姿を理解し和らげてやる、優しい学校が必要だ。
幼稚園や小学校という、子どもが集団で育ちあう場所でも、いろんな子どもたちが育ち合う機会は、早い方がいい。障害のある子どもの友だちへの興味や関心、つながりを求める気持ちを理解するには、幼い頃にいっしょにその場、その時間、その体験を共有することがいちばんだ。
子どもが自分の障害含みの苦労を抱えながら、ここが自分の居場所だと受け止め、膨大な量の観察学習を通して学び成長していくように、障害のない子どもたちも同じ場面のなかで、膨大な量の観察学習を重ね成長していく。その体験は、将来の「障害のある子どもを知らない親」の苦労を減らし、すべての子どもが守られる安全で優しい学校、優しいコミュニティの在り方を確かなものにしていく。
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