《支援から子どもを守る7つ》(メモ5)
「あのな、たいおーいやってみたいんやけど、ちょっとつきおうてくれるか」
「はぁ、なんて?」
「たいおーいや、たいおーい」
「だから、そのたいおういって、何のことや?」
「知らんのか? たいおーいやで、たいおーい!」
「そんな元気なあいさつ、知らんわ」
「たい焼き、呼んでるわけやないで」
「わかっとるわ。はよ説明せーや」
「昔はな、《その患者》がきたら専門医を紹介してたんや。でもな専門医が足らんいうて、対応医にしたんやて」
「大丈夫か、そんなお手軽で」
「そやから《高校生以上》って決めたんや。初めはな」
「初めは?」
「それでも足りんようになったから「中学生以上」にしてな、で今は「小学生以上」になったやけどな」
「ほんまにだいじょうぶなんか、その病院」
「何言うとんねん、れっきとした大学病院やで」
「ほんまかいな」
◇
では、ここから真面目に。
発達障害のたいおーい(対応医)。聞いたことがあるだろうか。
その大学病院ではもともと、【一般精神科医が発達障害を疑った場合は、児童・青年期の専門医に紹介】していた。ところが、「専門医」不足のところに、【自尊感情が低下し、抑うつや不安障害などの二次障害を発症してリストカット・過剰服薬などを起こし、救急受診する発達障害の人が多く】なってきた。
そこで、【事態の解消を図るために、一般精神科医も「対応医」として発達障害の診療】をするようになったのだという。
なんか、どこかで聞いたような話だと思ったら、特殊教育だ。
昔は、養護学校も特殊学級も、「特殊教育の教員免許」を持っていない人の方が多かった。「免許」を持ってないのに、「専門家の教育を受けられます」と宣伝するのは詐欺なんじゃないかと思っていた。
でも、これ昔の「特殊教育」の話じゃない。「特別支援教育」になった今も、専門の「免許」のない先生はいっぱいいる。もちろん教員免許は持ってる。社会とか数学とか。でも、「特別支援の免許」は持っていない。普通の中学校とかなら、免許以外の教科を教えることはできない。どんなに教え方が上手でも、先生が足りなくても、それをやると「違法」だから「できない」のだ。
ところが、特別支援は「教員免許」さえあればいいのだ。「専門家」じゃなくてもいいのだ。
ここは私が怒ることじゃなく、本来は支援教育を支持している教師や親たちが、文科省に怒るべきじゃないのかな。子どものニーズに合った専門家が売りなのだから、「専門」の資格を義務付けるべきだと思う。(ちなみに、私は中高の国語の免許と養護学校1級の免許を持っていた。)
「時を戻そう」(=゚ω゚)ノ
対応医の話で、気になったのは次の一節。
【ちょうどその頃、ADHDの薬や一部の抗精神病薬の適用拡大が進み、一般精神科医がこの領域に参入しやすい環境が整ってきました。】
つまり「児童・青年期の専門医」でなくても、薬を出しやすくなった、と聞こえる。
しかも、【当初は、高校生以上】としていた制限も、リストカットなどをした発達障害患者の救急受診が続いたため、対応医の対象年齢を【「中学生以上」にし、さらに「小学生以上」にと拡大する】ことになったのだという。
この後、「支援」を考える上で、さらに気になることが書かれている。
【ただし、このような年齢を対象とする際には、…専門医や臨床心理士や言語聴覚士との連携が不可欠です。】とあるが、連携が必要な理由は、【療育訓練や学習障害の評価など、我々だけでは《手に負えない》部分があるためです。】と書かれている。
つまり、「療育」や「学習」、つまり子どもの学校生活にかかわる支援については、医師の手には負えないものだという。だから、そこから「支援」が「次の場面」に移るのだと見えてくる。
子どもの生活まるごとをみる人はどこにいるのか。
「不思議」が止まらない。
(つづく)
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