《居ることを聴く》②
「わたしたちのたねまき」という絵本がある。
「わたしたち」というのは、「雨や風や太陽の光、鳥や獣たちや人間、そして川」のこと。
ページをめくりながら、ふと思う。
わたしたちが見てきたのは、「ここに居てはいけないと言われない場所」の「子どもたちのたねまき」だった。
「ここに居てはいけない」と「誰も言われない学校」に出会う子どもたち。
「ここに居てはいけない」と誰ひとり言われないことは、どんな感じ方も、どんな個性も、どんな主体感覚もあなただけの大切なもの、と伝えるメッセージだった。
それは「一部の子ども」でなく、「すべての子ども」の主体感覚のために大切なものだった。
「制度が整っていなければできない」とか「居るだけ」と言われるが、むしろ大人が道を知らない分、子どもたちの手作りのつながりの道や学びの道が拓けた。
道ができると、見える景色も違ってくる。
分けられて育った私には想像もつかなかった世界を、子どもたちは見せてくれた。
だから、大人の教えは最小限にして、ただ子どもたちのうしろをついていけばいい。
そうしてはじめて、子どもたちがまいたつながりのたねの声、まなびの声がきこえてくる。
【写真:仲村伊織】