《アンケート》
そのアンケートは不思議な感覚を教えてくれた。
Q『今日の相談会で印象に残ったことを教えてください』
A『決められてよかったです。そうだよなァーと本当、思いました。そうしたかったので、本当、話が聞けてよかったです。』
私の頭の中に???が並んだ…。
決められてよかった…「何を?」。
そうだよな…「何が?」。
そうしたかった…「どうしたかった?」 …突っ込みまくり(・ω・)ノ
でも最後の質問には、丁寧に答えが書かれていた。
Q『今の時点で、子どもの就学について考えていることを教えてください』
A『普通級にするか、支援級にするか、通級にするか。普通級にするのは親のエゴなのか、なやんでいましたが、普通級にすることに決められてとても助かりました』
◇
《大丈夫?》
マックで隣に座った2歳くらいの女の子を思い出した。
お母さんと二人でいたのだが、気づくと一人で座っている。
辺りにお母さんの姿は見えないが、女の子は平気な顔をしている。
しばらくして遠くにお母さんの影が見えると、店中に響く大きな声で叫んだ。
「おかあさん、だいじょーーーーぶ?」
大丈夫がなくなりかけたのは、女の子の方だったんだな。
でも、大声でお母さんを心配してあげて、自分の不安を追い出して、また元気におしゃべりを始めた。
そういえば、別の2歳くらいの女の子も、スマホに夢中になっているお母さんに、「だいじょうぶ?」と声をかけていた。
お母さんが自分を見ていない時間、自分のいない時間は、子どもにとって「大丈夫じゃない」感じなのだろう。
子どもが、「だいじょうぶ?」と聞くとき、「だいじょうぶじゃない」自分の身体感覚をもとにして、大好きな人の心配をするものらしい。
「大丈夫?」と聞きたくなる不安は、どうすれば安心するか?
答えは、わたしの中にある。
どこか、別の場所、特別な専門家が、答えを知っているのではない。
だって、その不安は、私のなかにある「安心」が揺らぐことだから。
答えは、わたしの中にある。わたしが、安心できることが答え。
わたしが感じているまま、わたしはわたしでいいと、私が思えること。
◇
《行ける? 大丈夫?》
昔、相談会にきた2年生の女の子の声が聞こえる。
はじめに両親は支援級を選んだ。学校にも慣れたと思ったころ、女の子は「お兄ちゃんと同じがっこうにいきたかった」とつぶやいた。校区には支援級がなかったので別の学校だったのだ。
ふだんあまり話さない子の一言を両親は率直に受け止めた。すぐに学校に転校の希望を伝えたが聞いてもらえず、2年生の終わりごろ相談会に来た。
相談会のあいだ、女の子は両親にはさまれて黙ってお絵かきをしていた。その後、私が両親と話している間も女の子はずっとお絵かきを続けていた。そして私が両親に大丈夫だから一緒に動きましょうと話したとき、私ははじめて女の子の声を聞いた。
「いける? だいじょうぶ?」
女の子はお絵かきの手を止め、となりのお母さんの顔をのぞきこんでいた。
女の子が約2年の間、小さな身体におさめていた消えそうな「だいじょうぶ」を思った。
3時間余りの相談会の間、大人たちの会話をどんな思いで聞いていたかを思った。
◇
《アンケート2》
相談会から十日が過ぎる。
はじめのアンケートを読んだ瞬間の???から、次々と思い出す場面があった。
数え切れない子どもたちの顏が浮かんだ。声が聞こえた。
「選べてよかったね。
自分の守りたい形で、一番大切なものを守る覚悟を、自分の力で選べてよかったね。
耳を傾けてくれて、うなずいてくれて、『同じ、同じ、迷って当たり前』、そう言いながら微笑んでくれる人たちに包まれて、自分の選びたかった道を選べてよかったね。」
「自分の本当の声が聞こえてよかった。
自分の本当の思いで、決められてよかった。
自分で耳を塞いでいた。目を閉じていた。心をあきらめていた。
自分の感覚を信じられないでいた。
誰も聞いてくれなかったから。
誰も耳を傾けてくれたことがなかった。
誰も関心を持ってくれることがなかった。
だから、私の思いは、取るに足らないことなのかと間違えていた。
本当は、これが、この子を思う私の一番の願いだった。」
「大丈夫と思えてよかった。不安が全部なくなった訳ではないけれど、ひとつ怖れはなくなった。
そしてこの子が初めての学校に行くことへの、『ふつうの不安』を、感じられるようになってよかった。
子どもも、安心して、自分の不安を感じることができる。
この子がいることは、『怖れることではない』と。
この子からの贈り物を、受け取れてよかった。」
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