「あなたのお子さんは、障害がありますね。
だから、あなたのお子さんにあった教育をしてくれる
専門の先生がいる特別支援学級がいいですよ」
学校の校長先生にそう勧められて、
それを断る強さが
私にあるだろうか…?
「歩けなくても、
言葉が話せなくても、
字が書けなくても、
この子は普通学級でみんなといっしょがいいです」
校長先生と教頭先生と担任の先生と、
教育研究所からきている先生方に囲まれても、
ちゃんと自分の言葉で断る勇気が、
私にはあるだろうか…。
それは、根拠のない不安ではありません。
若い母親なら20代で、そういう場に立ち会うこともあります。
校長先生、教頭先生、学年主任、担任の先生と養護教諭の先生。
教育委員会の主事に、教育研究所の相談員と、
10人近い先生たちに、母親一人で対峙し、
話し合いが行われることも珍しくはありません。
自分の父親よりも年配の男性に囲まれて、
指導・説得される立場になることを考えただけで、
息苦しくなるのは当たり前のことだと思います。
客観的にみて、それは警察の取調室のようでもあります。
人数だけで言えば、取調室より重圧があります。
☆ ☆ ☆
そもそも、学校の先生や教育委員会の人は、
人数の圧力=脅迫ということに関して、あまりに鈍感です。
子どもに対しても、親に対しても同じです。
うちの娘が高1のとき、スカートの長さが短い、校則違反だと、
男の先生10人ほどに取り囲まれたという話を聞いて、
私は即電話しました。
娘は入学のときから同じ制服で通っていること。
それを、一学期の間ただの一度も注意も指摘されず、
2学期が始まったとたん大勢に囲まれて
指導するというやり方はおかしいだろうと。
制服などいつも見ているのだから、丈が短いと思ったら、
担任や、生徒指導の先生が普通に話をすれば
いいことではないのかと話しました。
教頭から返ってきた返事は、
「うちは集団指導体制ですから」でした。
集団指導体制?
独裁国家の、自分では何も考えない人間と同じような答です。
私は聞いてみました。
「10人の大人の男性に取り囲まれて、
スカートの長さを図られる15歳の女生徒の気持ちを
考えてみたことはないのですか?」
「うちは集団指導体制ですから」
真面目に自分の頭で考えることができない教頭は
同じ言葉を繰り返し、
「実際にスカートの長さを測るのは女の先生ですから」
と言いました。
この壊れたロボットみたいな人に何を言っても
伝わらないだろうとは思いましたが、
「その≪集団指導≫を、電車の中でやったら集団痴漢ですよ」
と教えてあげました。
大の男が10人もよってたかって、
一人の女生徒を取り囲んで下半身を覗き込んでいる図は、
やはり「異常」だと思います。
娘は表立って反抗するタイプではありませんでした。
でも、途中で退学していった仲間の中には、
理不尽な「集団指導」で「自主退学」に
追い込まれた生徒もいたようです。
☆ ☆ ☆
また、つい先日、特別支援学級から
普通学級に変わりたいという相談がありました。
校長先生に話すと、「教育研究所」に相談してくださいと言われ、
教育研究所の人に相談してきたが認めてくれない、
という相談がありました。
会の人がつきそって教育委員会に行きました。
その話し合いの途中で、母親は泣きながら訴えました。
「この部屋です」と。
たまたま、通されたその「同じ部屋」で、
何時間話しても真剣に取り合ってもらえず、
あきらめなければ帰してもらえなかったこと。
「5時を過ぎて警備員さんが見回りに来ても帰してもらえなかった」
と、泣きながら、震えながら訴えました。
その様子に、付き添った会の人も、その方のご主人も、
対応した教育委員会の人も、驚いたそうです。
その訴えは、まさに「取調室」での恐怖の訴えそのものでした。
そうした現実を、私は少しも「珍しいこと」と思わなくなりました。
この25年あまり、毎年毎年、聞いてきたからです。
被害にあうのは、本当にごく少数の人です。
子どもに「障害」があって、
しかも「普通学級を希望する」場合にだけ、ぶつかる被害です。
全体からみれば、1%、いえ0.1%もないでしょう。
でも、私はそうした話を毎年、毎年、聞いてきました。
(つづく)
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