朝日新聞の「定員内不合格」(千葉と沖縄)の記事3つ
(その1)
定員割れの公立高、延べ2千人が不合格 詳細答えぬ校長と荒れた息子
上保晃平 近藤咲子 編集委員・氏岡真弓2024年11月24日 18時00分
「高校進学は多くの人にとって一般的なこと。息子が公教育から排除されていることは理不尽」
ダウン症で重度の知的障害がある男性(16)の母親は訴える。男性は6月、公立高校の入学試験の合否判定で差別があったなどとして、千葉県弁護士会に人権救済を申し立てた。
男性は、介助者による課題の説明や、面接での発言内容の代弁といった配慮を受けて受験。しかし2月の県立高入試では、受験校の受験者数が定員を下回っていたにもかかわらず、1人だけ不合格となった。男性は浪人し、8月の秋季入試で定時制に合格することができた。
■理由は「総合的に判断した」…
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定員割れの公立高、延べ2千人が不合格 詳細答えぬ校長と荒れた息子:朝日新聞デジタル
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(その2)
定員内不合格 沖縄は最多、東京や大阪は「ゼロ」のなぜ 文科省は?
上保晃平 近藤咲子 編集委員・氏岡真弓2024年11月24日 18時00分
文部科学省が2022年度から始めた「高校入学者選抜の改善等に関する状況調査」によると、定員に余裕があるのに不合格になった人は23年度、全都道府県で延べ2004人だった。都道府県別で見ると、沖縄が延べ226人と最多で、福岡が同153人、高知が同130人と続く。東京や大阪、北海道、埼玉など9都道府県はゼロだった。
東京都教委の担当者は「点数がほとんど取れていなくても定員内であれば入学許可を出す。高校は学力が十分でなくても、入学後、社会に出ていく力をつけられるようにしっかり指導しなければならないと認識している」と説明する。埼玉県教委は「入学を希望する人を定員内なのに不合格にする理由はない。県として県民のニーズに応える」。
「校長が判断することになっている」
一方、沖縄県教委は「定員内不合格が最多なのは重く受け止めている」とし、学ぶ意欲のある生徒は受け入れるよう、高校に通知を出してきた。しかし「最終的には受験した学校の校長が学力的についていけるかを考え、判断することになっている」と言う。130人と多かった高知は「定員内不合格を出すには、その理由がやむを得ない理由であるか詳細に聞き取っている」とした。
千葉県立高校長をつとめた、明海大教職課程センターの浅田勉教授(学校経営)は「校長には生徒が心身ともに安心安全で卒業まで過ごせる環境を提供する責任がある。障害がある子を受け入れるには専門知識がある教員を配置するなど、人的・物的なサポートがないと厳しい現状もある」と指摘する。
■文科省の姿勢の「ねじれ」…
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定員内不合格 沖縄は最多、東京や大阪は「ゼロ」のなぜ 文科省は?:朝日新聞デジタル
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(その3)
定員内不合格25回の男性との出会い 舩後靖彦議員、質問重ねたわけ
編集委員・氏岡真弓2024年11月24日 18時00分
定員割れなのに不合格になる公立高校の「定員内不合格」の問題について、れいわの舩後靖彦参院議員は国会で2019年から5回以上質問し、22年度に始まった文部科学省の全国実態調査のきっかけをつくった。「募集定員は設置者が都道府県民に向けて何人まで入学させるという公約です」と舩後議員。なぜ質問を重ねたのか、課題はどこにあるのか。話を聞いた。
――定員内不合格の問題を知ったのは。
2019年、沖縄の重い知的障害のある男子生徒のご両親から手紙をいただいたのがきっかけです。男子生徒は、地域の小中学校で当たり前にともに学んだ同級生とともに高校受験に挑戦しました。
1年目は受験生が定員より1人オーバーのなか不合格。2年目、今度は2クラス分の席が空き、定員に達していないのに不合格でした。手紙は「定員内不合格をなくすことが、インクルーシブ教育(障害の有無などにかかわらず、全ての子どもが共に学び合う教育)の実現につながるのではないか、ぜひ取り組んでほしい」と結ばれていました。
「定員内不合格という言葉さえ知らなかった」
実は、手紙を読んだ直後は、定員内不合格がどうして問題なのか、すぐに腑に落ちたわけではありませんでした。
というのも、私も自分の子も、また周囲もみな、自分の学力に応じて志望校を決め、高校受験をして合格して高校生になりました。もし不合格となったら、2次募集で受かる高校を再受験して高校生になっていましたから、「定員内不合格」という言葉すら知りませんでした。
ほとんどの人と同様に、私も「高校の教育を受けるに足る能力・適性」がある生徒が高校生になれるといういわゆる「適格者主義」が当たり前と思っていたのです。
定員内不合格にされた子どもたちが中学卒業後、どんな浪人生活を余儀なくされているか、想像力が十分及んでいませんでした。
「公立に通うほとんどの子、無償なのに」
――いつ、問題として取り上げようと。
ご両親が上京され、訴えを聞くなかで、私が議員になる前に関わりのあった、人工呼吸器利用していた千葉県の渡邊純さんが19年、21歳で亡くなっていたことを知りました。純さんが志望した県立高校では看護師配置が整わないというので、私の介助者で訪問看護・介護事業所を運営している方が仲介して、看護師配置を可能にしました。しかし、不合格で、願いはかないませんでした。
ご両親によると、純さんは亡…
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