東京新聞の「定員内不合格」(千葉)の記事2つ (その2)
障害児の「定員割れ不合格」なぜなくならない? 98%超が高校進学する時代、全ての子に学業のチャンスを
2024年11月26日
千葉市在住で知的障害のある浜野こゆきさん(15)が今年、定員割れの千葉県立高校を受験したが不合格となった。「千葉『障害児・者』の高校進学を実現させる会」によると、1989年の発足以降、千葉県で少なくとも障害がある158人が受験し、46人が定員内不合格になった。浪人するなど一人が複数回、受験することは珍しくない。合格者もいる一方、7年間浪人して受験を続けたが合格できず、亡くなった生徒もいる。定員内不合格の理由は、学校側から「総合的判断」や「学ぶ意欲の不足」と説明されることが多い。
◆「受験する時点で意欲は示されてる。二重三重の差別」
「学ぶ意欲があれば定員内不合格にしないよう指導している」とする千葉県教委の説明について、東京大大学院教育学研究科の小国喜弘教授(教育学)は「学ぶ意欲を試験で測るのは無理がある」と指摘する。
受験する時点で意欲は表明されており、浜野さんのケースは「学校側は適切ではない問いを出し、適切ではない判断を下し、県教委が容認した。二重、三重の障害者差別ではないか」と問題視する。
1995年に県立高の定員内不合格がゼロとなった神奈川県。「神奈川・『障害児』の高校入学を実現する会」によると、県は過去に、定員内不合格の理由として学校長らが「卒業の見通しが立たない」などと説明していた。同会事務局長の柳沢恵美子さんは、1988年の会結成以来、各学校と粘り強く交渉を続けるなどした結果、重度の知的障害や脳性まひのある生徒の進学も実現したと指摘。「誰もが障害に配慮した試験を受けられ、行きたい学校に進めるようにするべきだ」と訴える。
◆学校側の受け入れ態勢が合否に影響か
千葉県立高でも重い障害がある生徒が合格するケースはあり、必ずしも障害の程度で線引きされているわけではない。合否は、学校側の受け入れ態勢が影響するとの声もある。
元千葉県教委職員の江崎俊夫・植草学園大特命教授は「予算、人員、教員の理解が必要で、中には無理だと判断される場合もある」と話す。例えば、障害のある受験生がいると、職員会議で高校生活を送れる環境を担保できるか話し合うだけでなく、職員増員の予算が出るかどうかも課題になるという。
◆高校進学率6割台だった1960年代の「適格者主義」が影響
江崎さんは障害のある生徒が高校でさまざまな経験をして社会で生きる力を育むことの大切さを挙げ、「障害にかかわらず全ての生徒が高校に通うのが理想。県教委や予算を確保する県の決意が必要だ」と強調する。
入学許可は各校の校長に権限がある。小国教授は定員内不合格が無くならない背景として、1963年に国が示した「適格者主義」の影響を挙げる。高校進学率が6割台だった当時、高校の教育課程を履修できる見込みがない者の入学は適当ではないとする考えだ。しかし現在の進学率は98%超。「事実上の義務教育になった。全ての子が高校に通うことを保障する環境を法的に整備するべきだ」と唱える。