伝えるチカラ 受けとるチカラ
先日、「てがみ」と「ハクテン」を読んでくださった方から
手紙をいただきました。
温かいその手紙の中に、「あの子の顔、この子の顔を
思い浮かべながら書かれたのでしょうねぇ。
あのお母さんの顔、あのお父さんの顔を思い浮かべながら
書かれたのでしょうねぇ」という言葉があり、
その瞬間、あの物語を書いている間、
思い浮かべていた子どもたちが、
雪崩のように頭の中をよぎっていきました。
そして、伝えたかった最初の思いを、
改めて思い出しました。
そしてまた、自分の表現したことが伝わるということは、
相手の受け取る力に頼らなければ成り立たないものだと
いうことに気づかせてもらいました。
相手が、受けとる力を持ち合わせていなければ、
私の表現したい思いが届くことはないのでした。
「伝わる」ということは、
「私が表現できた」ということではありませんでした。
わたしが表現したいことを、相手が「受けとめてくれた」ときに、
そこに「伝わる」があるのでした。
「どう表現したらいいかを迷いながら、探し歩いている姿」
を含めて、受け取ってくれる人がいて初めて、
「思い」がかろうじて細い糸を渡っていくのです。
「伝えたい、伝えたい」と念じること、
それは一歩下がってみれば、
「相手はこのことが分かっていない。
そう簡単に分かるはずがない」と、
そう思っている自分の姿が見えます。
「相手に伝わらないだろう」と思っているからこそ、
「伝えたい、伝えたい」と
自分に念じるようなところがあります。
伝わらないだろうと、相手を強く疑うからこそ、
「自分が表現する力」だけに囚われるのですね。
そして、「伝えたい」という願いが、
いつのまにか「教えてあげる」「導いてあげる」…、
そんなふうに姿かたちを変えてしまうのだと思いました。
それでは、最初のおもい、
小さな子どもたちから受けとったおもい、
「伝えて」という小さな声を聞いたときのおもいとは、
かけ離れたものになってしまいます。
言葉を持たない小さな子どもたちから、
「伝えて」と言われた思いを、
私が本当に忘れないでいることができるなら、
「私が、私が」と、がんばらなくても、
「小さな子ども」の声を聞くことができる人になら、
私の言葉が足りないこと、表現が未熟なことも含めて、
受けとってもらえるのだと思いました。
受けとる力を信じて、頼っていいのだということ。
「本人の意思はお互いにたずねあいながら」であるなら、
私の表現したい思いも、きっと受けとめ合いながら、
伝わっていくのですね。
あらためて、踏みとどまる気持ちを思い出せていただいたこと、
本当に感謝してします。
PS:
子どもに対しても、「分からない障害」
「思いを受けとることができない障害」と見る目そのものが、
思いを伝えることの「障害」にならないはずがありません。
わたしと子どもが初めから持ちあっている、
「伝える力」「受けとる力」を、
最初から手放すことになるのですから。
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