前回、(その3)を威勢よく書きました。
結構、自信ありげに書きました。
でも、すぐ後に、「待てない自分」が次々試されます。
土曜日の夜、パソコンに一通のメールが届いていました。
『とりあえず一報
ホントに車にひかれました
足が…
くっつけば…
くっつかなかったら
切断
覚悟はしてたものの…
生きててラッキーです』
名前がなく、アドレスも見覚えがなく…。
でも、中身が中身だけに、誰?誰?誰?
私にこう伝えてくるのは誰?
必死で頭を回転させました。
とっさに「自殺」しそうなのは誰?と考えたり、
友人の顔がうかび…、何度もメールを読み返しているうち、ふと「…子どもだ」と気づきました。
相談会で「落ち着きのない子どもで…、一人で学校に通わせるのが心配…」という話題が出ることを思い出しました。
そうしたとき、私がなんと答えているか。
「…ずっと縛っておくわけにもいかないし」
「…実際、子どもが交通事故にあった話は聞かないし」
「子どもなりに危険を避けるようにしてるんだから…」と。
そして、「足の一本くらい折れても仕方ないって覚悟するしかないところもあるし…」という自分の声がよみがえりました。
もしかしたら、相談会にきたお母さんが、「そうだ、子どもを信頼して、一人で歩かせてみよう」としたのだとしたら…。そうして「ホントに車にひかれた」のだとしたら…。
とっさに、自分の言葉を後悔しました。
どこの誰か分からないけれど、返事をしない訳にはいかない。
でも、子どもの足が…。それだけの重症なら他は?
そう考えながら、かろうじて返信を送りました。
『手掛かりがなく、考えました。
子どもが…、ということですね。
相談会で、私が、「ひかれても…」という話をしたのですよね。
無責任な言葉になってしまい申し訳ありません。
回復されることを願わせて下さい。』
しばらくして、返信がありました。
『そんぐらいの覚悟で世に出してるので大丈夫です。
いつも勇気もらってます。
後押ししてもらってます。
新たな名言待ってますから』
いつも?
会報を読んでる人?
ブログを読んでいる人?
それにしても、子どもが車にひかれ、足を失うかもしれない今この時点で、「そんぐらいの覚悟で世に出している…」と言えるのは、ふだん並大抵じゃない苦労を生きているのだろうと、そんなことを思いました。
私にメールをしてくるのだから、「普通学級」であることも間違いないでしょう。
勇気をもらってる?
この短いメールのやり取りでさえ、勇気をもらっているのは、私の方でした。
後押し?
後押しされているのは、私の方でした。
状況が見えないし、「事故」に動揺するのは仕方ないにしても、「事故」を見ないために子どもの「普通の暮らし」を制限させることに逃げ込んじゃいけない。
それはそうだけど、でも…。
自分は何を考えなければいけないのか、そのことを考えました
◇ ◇ ◇
そのメールがあった夜、ホームの子どもが一人、家出中でした。
数日前から、実家に戻りたい、自立なんかしたくないと言っていました。
他にも二人が、0時を過ぎても帰ってきませんでした。
「こんなところに、居たくない」と子どもたちが思うようなホームなら、ない方がいいんじゃないか。そう思っていました。
実際、次女が高校を続けることも、かなわなくなりました。
私が思う「子どものため」には、結果として少しも子どものためにならないんじゃないか。
そう思わされる事態が次々と起こります。
でも、「…ずっと縛っておくわけにもいかないし」。
5,6歳の子どもの親に、「足の一本くらい折れても、仕方ないって覚悟するしかない…」と言っておきながら、自分は何をしてるんだろう。
◇ ◇ ◇
日曜日、事故にあった子どもが分かりました。
毎月の例会で会っている子どもでした。
毎年キャンプで会っている子どもでした。
開設前のホームに、遊びに来てくれた子どもでした。
何度も会報の表紙を飾っている、なっちが事故にあったのでした。
メールが誰か分からなかったのは、慌てていたなっちママが携帯ではなく、パソコンのアドレスに送信したからでした。
今日、なっちの病院に行ってきました。
事故から4日目。なっちは、グルグル巻きの左足以外は、いつものなっちでした。
いつもの笑顔で、私の手をにぎってくれました。
ベッドに寝ているなっちのほっぺをつまんでも、頭をくしゃくしゃしても、嫌がらず照れ笑いをしていました。いつもなら、「なにするんだよお」と返してくることろですが、少しだけパワーの落ちているなっちに、少し泣きそうになりました。
コメント一覧
yo
kawa
最新の画像もっと見る
最近の「ワニなつ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(472)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(28)
- 0点でも高校へ(395)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(133)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(93)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(351)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事