ワニなつノート

自分の「呪い」を解くための100のメモ ⑱

《はじめてのおつかいと「調整のアドバンテージ」》(後編)

        □

「いつものおとうさんじゃない」

「いつものおとうさんじゃない」

しんじろうは2回繰り返した。

 

一度目は思わず口から出たことば。

二度目は自分の声を、自分の耳で聞き、確かめるため。

《いつものおとうさんじゃない!? あれ? いつものおとうさんとちがうけど、いつものおとうさんだ。いつもとちがうのは、なんだっけ? そうだ、おかあさんがいないんだ。あかちゃんがうまれたから。ぼくはお兄ちゃんになるんだ》

きっと、そんなことを考えなら、「いまこの状況」を理解しようとがんばっている。

「いつも」の「安全なつながり」を取り戻そうと調整している。

 

はじめてのおつかい。

はじめての《やり遂げる意思》。

それを覚悟するための時間。

 

大人には「見通し」と「調整のアドバンテージ」が、ある。
そして子どもにも、「見通し」と「調整」は必要だ。
だから子どもの「調整」を待ってあげる責任が、大人にはあるのだ。

大人にできることは、つながりの安全を保ちながら「待つ」こと。(はじめての保育園も。はじめての学校も同じ。子どもの「はじめて」に必要なのは、いつも待つことだ。)

          □

玄関で長靴をはく、しんじろう。

「泣いてでも、いかないといけない」

そう言いながら、しんじろうは扉を開ける。

 

外に出てもまだしゃくりあげて泣いている。

「ぼくならいける」 

自分にそう言い聞かせ、歩き出す。

 

パン屋さんにつくころには涙もかわく。

「何か欲しいものあるの?」

「あんぱん」

 

「一人で雨の中きて偉いね」

「だってあかちゃんいるから。」

 

「あかちゃんがいるの?」

「ふたりいるから」

 

「二人? 双子? 赤ちゃんはいつ生まれたの?」

「きょう」(本当は昨日だけど)

 

店を出た直後に、しんじろうの声がきこえる。

「かってきた!」「よかった!」「かえてよかった!」

「やさしい子だった!」

《やさしい子》というのは、お母さんがいつも自分をほめてくれる声。それを、ちゃんと自分の耳に聞かせ、確かめる。

だから2件目のお店では、もう頼りなさのかけらもない。

「自分の大丈夫」を「自分で確かめる」時間がどれほど大切かが、よく見える。

 

そして、しんじろう帰宅。

「ただいまー。いけた!」 

「どうだった?」という父の声に、しんじろうが答える。

「たのしかった!!」

 

              □

という訳で、以下の二つの法則の説明、おしまい。

《その1》子どもの「やり遂げる意思」を貯める時間+大人の「待つ」時間=「協働調整」の時間

《その2》子どもの「勇者の本能」+大人の「信頼」=自分を好きでいるための「安全なつながり」

【写真:仲村伊織】

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