ワニなつノート

自分の「呪い」を解くための100のメモ ⑰

《はじめてのおつかいと「調整のアドバンテージ」》(前編)

 

           □

「はじめてのおつかい」をみていると、ときどき「親の見積もり」と「子どもの調整」のズレがみえる。1月の放送に、それがよく見えるエピソードがあった。

主人公は4歳のしんじろう。

撮影が明日!という日に、赤ちゃんが生まれ、父親が作戦を引き継ぐことになる。

 

           □

母親が応募するのは、ふだんの子どもをみていて「大丈夫」だと思うからだ。子どもの「力」は分かっている。おつかいの日までに、母親はいろいろなシミュレーションをし、「覚悟と調整」の時間を持つことができる。しかも母親とテレビスタッフは綿密な打ち合わせをして、お互いの了解と安心を作り上げている。

つまり「仲間」と「調整のアドバンテージ」がたっぷりあるのだ。

 

           □

しかし父親は違う。ディレクターとのやりとりからもそれは明らかだ。

「昨日、お母さんと綿密な綿密なお話をさせていただいて、おつかいの内容ももうバッチリ。で、どうしましょう?」

「どうしましょうね。本人もやる気は出来上がってるので、おつかいはさせてあげたいと思います…」

「出せますか?」

「出せます…」と言いつつ、父は首を傾げる。「これから気持ちをつくっておきます」

「・・・・」

――3人の幼い子どもたちとの、母親のいない夜。父親に「調整のアドバンテージ」はない。

 

           □

翌日。作戦開始。

「お母さんいないと大変だね。寂しくないの?」

「さみしい」

「お母さんの病院、行く?」

「いく」

「お母さんが好きなものを持って行ってあげるってどう?」

「いいね」

「お買い物いける?」

「いけない~」

そこで、父は母の作っていた「お守り」と新しい長靴をみせる。

でも。

「パパといっしょにいきたい~~~~」

「大丈夫、大丈夫」

            □

これが母親だったなら、お守りと長靴をみせることで、日々の「調整」とつながったのかもしれない。ところが「代役」の父親とは調整がない。それをしんじろうは、こう表現した。

「いつものおとうさんじゃない」

なんて、的確な表現だろう! 

4歳の子どもが、「協働調整」の不足を見事に表現しているのだ。

子どもを侮ってはいけないな。 

それに、「調整のアドバンテージ」がないのは、父親だけじゃない。しんじろうも、なんの見通しも調整も持たずに、「はじめて」に向かおうとしているのだ。

(つづく)

【写真:仲村伊織】

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ようこそ就園・就学相談会へ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事