私の出会ったきょうだいたち (その3)
「きょうだいが、ふつう学級を望まないから」
その言葉を久しぶりに聞いた。
しばらくして、《台風の避難所からホームレスの人を追い返した》話を思い出した。
何のつながり?と思っていたら、ある本の主人公の少年の声が聞こえてきた。
□
「ものすごい巨大な台風が来て、雨風も激しくなって、ここに入れてくださいってホームレスの人が訪ねてきた。そこで『ダメです』って言った人のことを僕は考えてみた。」
「追い返したら、命にかかわるとわかってる。その人に何かあったら自分のせいだ。そんなの嫌だよね。だったら、どうしてその人はダメって言えたの?」
「そのとき自分のことは考えていなくて、避難所にいるほかの人たちとか、一緒に働いている人たちが自分のことをどう思うかということを考えていて、なんていうか、本当には自分のことを考えてなかったんじゃないかな」
「みんなホームレスの人を受け入れたくないはずだと考えたから、追い返したんじゃないかな。」
「追い返した人は、避難所という社会を信じていない」(※1)
□
あ、ここ、ここ。
もしきょうだいの「ふつう学級」を望まないのだとしたら、それは学校
や友だちを「信じていない」ってことなんじゃないか、と私は思うのだ。
「信じていない」が言い過ぎだとしても、どこかで「安全じゃない、不安だ」と感じているから、そう答えるのだとおもう。
私自身はそういう「きょうだい」(子ども)に会ったことがないのだ。
□
親の覚悟によっても、きょうだいの腹の座り具合は変わる。
25年前。
当時は、ふつう学級を希望する親をあきらめさせるため、教育委員会が「家庭訪問」に来ていた。母親がインターホンに怯えていると、小3のお兄ちゃんが「ぼくが断わってこようか」と言って追い返してくれた。玄関から戻ったお兄ちゃんは言った。
「母さん、たたかうって決めたんだろ」
それから20年。
お兄ちゃんは結婚し5人の子どもが生まれた。末っ子はダウン症で呼吸器が必要だった。その子が、去年、保育園を断られたことで、また私たちとつながった。
きょうだいがふつう学級にいたきょうだいは、我が子に障害があっても、当たり前に保育園そしてふつう学級に行こうとする。
これも、私の出会ったきょうだいに共通の「当たり前」。
(つづく)
※1『ぼくはイエローでホワイトでちょっとだけブルー2』ブレイディみかこ・新潮社
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