遊民ヤギ爺

俳句と映画のゆうゆう散歩

映画 羅生門

2019-05-21 13:51:42 | 映画
令和元年5月21日(火)

映画 羅生門

この映画は芥川龍之介の短編小説「羅生門」と
「藪の中」を基に、黒澤明と橋本忍が共同で執筆、
黒澤明が大映映画で監督した作品である。
作品は、国内、殊に大映では余り評価されぬ時、
この映画を見たイタリアの映画関係者が、絶賛し
ぜひにとベネチア国際映画祭へ出品し、最高賞の
金獅子賞を獲得した。
海外では、黒澤明監督の作品として高く評価され
数々の賞を得た。当初この映画を酷評した大映の
永田雅一はその後豹変し、さも自分の手柄の様に
振る舞う。


物語は、戦乱と天変地異により飢餓が続く平安
時代の或る日、藪の中で昼寝をしていた盗賊の
前を侍の夫婦が通った。その妻の美貌に目を付け
た盗賊が、侍を縛り上げてその目の前で妻を犯す。
後に侍を殺しその妻と逃亡した、、、。
この事件を巡り、検非違使の前に呼び出され、
盗賊、妻、巫女の霊媒に呼び出された侍が証言。
それぞれに食い違う証言、、、、
それを目にした杣売りと旅法師が雨宿りした折り
居合わせた下人に語り掛ける。
そこに赤ん坊の泣き声が聞こえ、、、、。

小説では、朽ち果てた羅城門で老婆が遺体の髪を
抜き取り髷にして売る。そこへ下人が老婆を襲い
衣服を剥ぎ取る。

この二つを組み合わせて映画化した黒澤明監督。
「生きるために仕方なく人を殺す、罪の連鎖と
自分の保身のために、夫々に偽証する、真相は
藪の中、、、、、」
今になって、この映画の言わんとする事が少し
判ったような気がする。現代の社会にそのまま
通用する様で、、黒澤明監督の先見の明か。
生きるため止むを得ず犯罪を繰り返す人、、
忖度、保身のために平気で偽証する政治家達。
全ては藪の中(闇の中)

映画「羅生門」: 1950年、大映京都撮影所

スタッフ
監督 : 黒澤 明
原作 : 芥川龍之介「羅生門」「藪の中」
脚本 : 黒澤 明、橋本 忍
撮影 : 宮川 一夫、 照明 : 岡本 健一
音楽 : 早坂 文雄、 録音 : 大谷 巌
美術 : 松山 崇、  記録 : 野上 照代

キャスト
多襄丸(盗賊) : 三船 敏郎
金沢武弘(侍) : 森 雅之
  真砂(妻) : 京 マチ子
杣売り     : 志村 僑
旅法師     : 千秋 実
下 人     : 上田吉二郎
巫女(霊媒師) : 本間 文子
放免(下司)  : 加藤 大介

物 語

戦乱が続き、天変地異により疫病が広がり、政治も
退廃して飢饉にさらされる平安の初期の京都、、
荒れ果てた羅城門に男三人が雨宿りしている。



杣売りと旅法師が或る事件」の参考人として出頭
した検非違使の帰り途である。
居合わせた下人に、取り調べの不思議な話を語る。
実は、杣売りは事件」の目撃者で事実を知っている
のだが、、、。

数日前、薪を取りに山に入った杣売りは、武士の
遺体を発見した。現場には、女の笠、踏みにじられ
た侍烏帽子等が、、、、
道中で侍夫婦に出会った旅法師も出廷し、証言した。

最初に、侍の金沢を殺した盗賊の多襄丸が証言する。

「山中で寝ていた所、侍夫婦に出会った。




妻女が美しかったので、侍を騙し縛り上げ、侍の眼前
で妻女を手籠めにした。 その後、妻女が勝った方の
妻になる、と言ったので侍の縄を解き正々堂々と
戦い、勝ったが、その間に妻女が逃げた」と証言。


次に妻女の真砂は、

「手籠めにされた後、多襄丸は夫(金沢)を殺さず
そのまま逃げた。夫を助けようとしたが、眼前で男に
身を任せた私(真砂)を蔑む眼差しで見据えた。



それに耐えられなくなり、夫に私を殺す様に願った
が、叶わず、その後気絶した。 目が覚めると夫は
短刀で刺され死んでいた。自分も死のうと思ったが
死ねなかった」と証言した。

その後、巫女が呼ばれ、霊媒により死んだ金沢を呼び
出し証言させる。

金沢の霊は、


「真砂は多襄丸に辱められた後、彼(多襄丸)に情を
移し、多襄丸に同行する代わりに自分の夫(私)を殺
す事を求めた。 それを聞いた多襄丸はあきれ果て、
「女を生かすも殺すもお前が決めろ」と私(「金沢)
に告げた。それを聞いた真砂は逃亡し、多襄丸も後で
姿を消した。一人残された自分(金沢)は無念の余り
妻の短刀で自害した」と証言。


この話を下人に話した杣売りは「三人とも嘘をついて
いる」と言った。  杣売りは実は事件を見て居り
事実を知っていたが、事に巻き込まれるのを恐れて
黙っていた。
「多襄丸は手籠めにした後で妻に惚れ、俺の妻にと
頼むが断られ、金沢の縄を解く。亦、金沢は辱めを
受けた妻に自害をせまる、、。  真砂は笑い出し
自分勝手な男たちを戦わせ、殺し合いをさせる。



必死の戦いの末、金沢は刺されて死ぬ、、、、。


真砂は事の重大さ、恐ろしさにその場を逃げ出す。

三人の告白は、己の見栄のための虚言」である。
情けない真実に、旅法師は世を儚む、、、、。
その時、羅城門の門前の方から赤子の泣き声が、、
誰かが赤ん坊を捨てたようである。
下人は迷うことなく、赤子の着物を剥ぎ取り、赤子
を放置する。

杣売りが咎めるが、下人は「遺体の現場から無くな
った金沢の太刀や短刀を盗ったのはお前だろうが、
お前に俺を非難する資格はない」と言い、その場を
出て行く、、、、、

旅法師が思はぬ成行きに絶望していると、杣売りが
近づき、赤ん坊に手を伸ばす、、旅法師が手を払い
のけると、「自分の子として育てます」と言い残し
杣売りは赤子を抱きかかえて、去って行った、、。
最後に、 人間の良心を見た旅法師は己の不明を
恥じて合掌する、、、、。


今日の1句

青嵐吹き抜ける儘藪の中      ヤギ爺












ドリス・デイさん死去

2019-05-19 16:10:39 | 映画
令和元年5月19日(日)

昭和の大スター、ドリス・デイさん死去


5月13日、昭和を代表するアメリカの大女優であり
歌手でも在った「ドリス・デイ」さんが肺炎で亡くな
った。  97歳で在った。

中日新聞より

同年代で活躍した、日本の映画女優「京マチ子」さん
に続き、スクリーンの日米トップ女優が相次いで逝き
私の、昭和の佳き時代が終わった様である、、、。

ドリス・デイ : 1922年生まれ、
1940年、18歳でジャズバンドの専属歌手となり、
「センチメンタル・ジャニー」を歌いミリオンセラー
となる。
1948年「洋上のロマンス」で映画デビュー、、、


1953年、ミュージカル映画「カラミテイ・ジェー
 ン」がヒットし、人気を不動のものとする。


1956年のアルフレッド・ヒチコックの「知りすぎ
ていた男」で主演し、挿入歌の「ケ・セラ・セラ」は
アカデミー賞歌曲賞を受賞した。
今でも「人生はケ・セラ・セラ、くよくよするな、」
等とよく使われる言葉となった。

私たちの子供のころ(昭和の時代)、日本は戦後の
未だ貧しい時代で、アメリカの映画やTV等により
豊かなアメリカの生活に憧れを持っていた、、


テイ・フォー・トウ

ドリス・デイは、そんな時代のスーパー・スター、
「テイ・フォー・トウ」「パジャマ・ゲーム」
「先生のお気に入り」「ママは腕まくり」「恋人よ
帰れ」「マーメイド作戦」等々、、、、


パジャマゲーム

映画からそのままヒット曲を生み、
「テイ・フォー・トウ」「先生のお気に入り」
「恋人よ帰れ」「「パジャマ・ゲーム」他に、
「ピロー・トーク」「ガイ・イズ・ア・ガイ」
「アゲイン」「ドミノ」「シークレット・ラブ」等々、、
日本でも馴染の曲が多く、江利チエミ、雪村いずみ
ペギー葉山等が歌い、ヒットをした、、、、。


2004年 : 大統領自由勲章授与
2008年 : グラミー賞生涯功労賞授与

本日の1句

若葉風木漏れ日の下テイフォートウ   ヤギ爺



次回は、お二人を偲んで唯一持っているDVDから
京マチ子の「羅生門」、ドリス・デイの「知りすぎ
ていた男」を紹介します。



京マチ子さん死去

2019-05-18 15:48:42 | 映画
令和元年5月18日(土)

グランプリ女優の死去


5月12日、銀幕の大スター「京マチ子」さんが
心不全のため亡くなられた。  95歳。

中日新聞より、

大阪松竹歌劇団に入り、ダンサーとして人気を集め
1949年に大映に入社、「最後に笑う男」で映画
デビューする。
谷崎潤一郎原作の「痴人の愛」で」大胆な演技が
注目される。
官能的な妖艶な姿に、肉体派女優と言われた。


1951年、黒澤明監督の「羅生門」でベネチア
国際映画祭でグランプリ受賞する。
1954年、衣笠貞之助監督の「地獄門」では、
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞する。


同じく1954年に溝口健二監督の「雨月物語」で
ベネチア国際映画祭の銀獅子賞を受賞した。
デビュー以来、次々に海外の映画祭で受賞をし、
「グランプリ女優」と呼ばれる、、、、。
後に、日米合作映画「八月十五夜の月」では、
米男優「マーロン・ブランド」と共演し、
ゴールデングローブ主演女優賞にノミネートを
される。

その他、多くの名監督に指名され、数々の名作にも
出演、「細雪」「鍵」「浮草」「華麗なる一族」
「春琴抄」等々、、、、。

浮草

晩年には山田洋二監督の「男はつらいよ純情詩集」
にも出演、寅さんのマドンナ役に抜擢される、。


その後、テレビ、舞台等で活躍「犬神家の一族」や
「必殺シリーズ」では、必殺仕事人、仕舞人、仕切
人等で活躍された。


1987年:紫綬褒章、1994年:勲四等宝冠賞
を受賞された。

私生活では、一時、大映の永田雅一社長との噂が
在ったが生涯独身を貫く。
この時代の名女優と言われた人は独身者が多い。
原節子、淡島千景等がある、、、。

京マチ子さんの映画の全盛期は、私は未だ子供で
残念ながら見ていない、、
官能的イメージが強く、、、また名作については
羅生門、地獄門、雨月物語等は内容が難しく、
子供の私には理解デキナカッタのが本音である。

大人になってから、再上映館で見た物も少ないが、
羅生門等、未だに判らない部分が多い、、
唯、京マチ子さんの美しさ、演技は今の女優さん
には中々、見つけられない様である、、。


今日の1句

マドンナてふ一際映ゆる薔薇の落つ     ヤギ爺



万作

2019-02-13 16:02:51 | 映画
平成31年2月13日(水)

万作 : まんさく、金縷梅、銀縷梅


マンサク科の落葉小高木で高さ3~6m
各地の山に自生する。
早春、葉に先立って黄色い線状のねじれた
四弁花が一杯咲く。

早春の山に「先ず咲く」が訛って「マンサク」
又、枝枝に先満つことから「マンサク」という
説もある。」
野の趣があり花季が速いので、季節感を重んじ
る茶花として活けることも多い。
蒴果は卵上球形で、二つに裂けて光沢の在る
黒い種子を弾き飛ばす。


亦、「金蠟梅」は中国産の別品種である。

土地によって違いますが、暖かい地方では、
既に「まんさくの花」が咲いています。



私の住む名古屋でも、時には庭先で、、
また名古屋城や徳川園等の庭園等には、
毛糸の捩れたような花が裸木の枝から
一杯に花を咲かせています、、、、、。

いつ見ても不思議な、何でこんな花が咲く
のだろうと思って暫し眺めている、、、


今日の1句

まんさくに風めざめけり雑木山    行方 虎次郎

映画 華氏119

2018-12-02 14:52:01 | 映画
平成30年12月2日(日)

映画 華氏119 ドキメンタリー

監督 : マイケル・ムーア
製作 : マイケル・ムーア、カール・デール
     メーガン・オハラ
製作指揮 : バーゼル・ハムダン


トランプへの挑戦




先月(11月21日)、東宝シネマズ・ベイシテイ(港区)へ
出かける。間も無く上演が終る頃のため、プレミアム
シートは20名足らず、、。

一昨年、米大統領となり世界中を混乱の渦に巻き込んだ
トランプ氏誕生の内側にカメラを入れ、誕生の要因と、
トランプの言動に反発し、行動をする若者達に迫る。

華氏119


2016年11月8日(土)、「米国大統領選挙」
ニューヨーク・タイムズの予想では、ヒラリー・クリ
ントンの勝率は85%、対するトランプは僅か15%、
国民の大半がヒラリーの勝利を確信し、諦めムードの
共和党陣営、、、、。
開票が始まり、当初ヒラリーが順調に得票を伸ばし、、
ところが中盤から、予想外の展開が、、、、、
選挙戦の最重要地域の「オハイオ州」の票をトランプ
が獲得、、、、、此処から様相が一変する、、、、、
次第に開票速報が接戦となる、、、、、、。
翌日(9日)、遂に、トランプが勝利宣言をする、、

大統領選前のムーア監督の予言が的中する結果が、、
その要因の一つ、
五大湖周辺の「ペンシルバニア」「オハイオ」
「ミシガン」「ウイスコンシン」の4州を、ヒラリー
は楽観して殆ど遊説しない。此処は元々民主党支持者
の労働組合が多く、過去には民主党が圧勝していた。
所が近年、この地域の自動車産業等の工業生産が落ち
込んでいた、、、。
これに目を付けたトランプは、積極的に此処を廻り
遊説をし、民主党への暴言を繰返した、、、。
もう一つの要因は、
民主党のバーニー・サンダースが、ヒラリーの企業
献金を批判し、若者や貧困層の支持を集めたが、、
民主党内部から、彼の政策が行き過ぎと指摘され、
民主党内の「スーパー代議員制度」により、候補戦
に敗れる。これにより、サンダースは大統領選挙に
失望し、撤退。彼の支持者が離れて行った。

ミシガン州フリントでは、水道の汚染問題が深刻化
州知事(共和党員)はこれを隠蔽、、住民の訴えに
より当時のオバマ大統領が現地に赴き、、、、
地元住民の前で、この水を飲み(実際はふりをして
コッソリ棄てる)「この水は安全です」 これに
失望した住民は、、、、、、

共和党のトランプは巧に、現役の政治家を批判し、
暴言を繰返し、共和党の大統領候補となる、、、

共和党のトランプに失望し、拒否反応をする国民が
増大し、史上最低レベルの投票率55%となり、
約1億人が選挙に行かなかった。
これ等の要因が重なり、民主党の自滅、タナボタの
トランプが勝利(どこかの国と似てませんか?)


その後、ムーアはミシガン州フリントを訪れ、
地元の人の話を聞き、、、知事に面会を求める。

知事に門前払いされ、、、、。怒るムーア監督は
知事公舎の門前に「汚染水のタンク車」を止め、
汚染水をまき散らす、、、、。


ムーア監督は中間選挙に於いて、民主党の内部から
政治を変えようとする、若手候補者にカメラを、、
ニューヨーク、ブロンクス地区で出馬するプエル
トリコ系女性「アレクサンドリア・オカシオ・コル
デス」(28歳)。彼女は過ってサンダース議員の
選挙スタッフをしていた。
(先日の中間選挙で、現職の共和党候補を破る)

2018年2月フロリダ州バークランドの高校で
退学になった元生徒がライフル銃を乱射して、
17人が死亡、、、、。
生徒らは「銃規制」を求め立ち上がる、、、
「我々の命のために行進」を企画、全米に数十万
の高校生を動員、トランプを筆頭とする共和党
議員を落選させようと訴える。
(2年後の大統領選は我々にも選挙権が在る)と、

映画の終盤、
エール大学の「テイモシー・スナイダー教授」を
訪ねる。「彼はナチスドイツ国家の歴史とホロコ
ースト」の研究の第一人者で、
ヒトラーの演説とトランプの暴言(スピーチ)を
重ね合わせる。
ラストシーンで銃乱射のタダグラス高校の生徒が
犠牲者一人一人の名前を読上げる、、、、。
それに、ボブ・デイランの「神が味方」の曲が
エンデイングとなり、、、、、、。

日本でも同様な選挙制度により一党独裁で無能
な政治家ばかりが増え、問題を起こしてはモミ
消し、どんな法律、議案も議論のなされぬ儘、
成立する、、、、。
このままで良いのか?日本の若者達も立ち上が
って欲しい、、、、、。

この映画、すべての若者に見てほしかった。


今日の1句

散り急ぐ山茶花の径夕間暮れ    ヤギ爺