令和3年3月31日(水)
霾 : つちふる、黄砂
モンゴルや中国北部の黄土地帯で、春に吹き荒れる季節
風により、大量の細かな砂塵が空高く舞い上がり大気中
に広がり、遠くまで及ぶ現象をいう。
黄砂ともいい、3~5月頃に多く日本へも飛来し、空は
黄もしくは黄褐色となり、太陽は生気を失い視界は狭く
著しく悪くなる。
それを「霾晦」(よなぐもり)といい、大正末期頃から
詠まれだした季語である。
昨日、日本上空にもこの「黄砂」のニュースが流れた。
(画像は2018年当時のもの、)
「大陸からの西風の影響で、西日本から北日本までの
広範囲で観察された。視界が3km迄落ち、交通機関へ
影響を及ぼした」。洗濯物に注意とのこと。亦、積雪の
在る地域では新雪が黄色くなるともいわれる、、、。
今朝の中日新聞コラム「中日春秋」に黄砂に纏わる記述
が在ったので紹介したい。
歌舞伎屈指の名場面、名セリフだろう。節分の夜、お嬢
吉三が語る「月もおぼろに白魚の篝もかすむ春の空、、」
(月もおぼろに白魚の、、と、お嬢吉三)
三人吉三の大川端である。やさしく輝く月も、遠くが霞む
春の空気も日本人が昔から好んだものだ。近頃はそんな
場面を思わせる夜に出逢う好機のようである。
只、大川端も同じだったかもしれないが、黄砂現象の賜物
らしい。 そう聞けば、情趣も少しそがれるか。
(中国、北京)
(東京上空)
この春の黄砂は規模が大きいようだ。西日本にとどまらず
列島を広く覆っている。 日中の街並みは遠くがかすみ、
桜を引き立てる青空もくすんでしまっている。
(名古屋市内でも)
不調を感じる方も居るか。
[雲端につちふる心地して、、、] 松尾芭蕉は「奥の細道」
に書いている。「つちふる」は風で土が降ることで、黄砂
も意味するらしい。雲の切れ端から砂まじりの風が吹き下
ろし、辺りは暗くなる。山道の不気味さをつちふるに重ね
ている。
不気味さは中国でさらに大きい。中国北部等で先日発生し
た黄砂の規模は、ここ数年で最も強烈であるという。
映像に在る都市部は、セピア色の写真のように茶色く染ま
っていた。
砂漠の拡大が、日本にもやって来る黄砂に影響していると
も聞く。「つちふる心地」の世の中に気がかりの種は絶え
ない。 名セリフの終りの言葉に「こいつは春から縁起が
いいわえ、」とならぬものか。
(中日新聞朝刊コラム:中日春秋より、引用した)
「雲端につちふる心地して、」は、松尾芭蕉の奥の細道の
「尿前の関」の中の俳文で、
「雲端につちふる心地して、篠の中踏分踏分、水をわたり
岩に躓て(つまずいて)、肌につめたき汗を流して最上の
庄に出づ」の一節、、雲端が黄砂の中のような、、か
今日の1句(俳人の名句)
天をもて黄砂の国とつながれり 大峯 あきら