循環器フィジカル・ケース4
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
症例4:
65歳女性〔主訴〕左半身の脱力と構音障害
数年前より高血圧を指摘されるも治療せず放置。今回、買い物中に突然、左半身脱力を自覚し、救急車にて来院。救命士によると、左半身運動麻痺と構音障害あり、とのこと。
バイタルサイン:血圧 90/60 mmHg、脈90 /分、呼吸 18/分、体温 36.3度。
身体所見上、顔面を含む左半身筋力低下があり、緊急で撮影されたCT所見と合わせて、右大脳半球領域における急性期脳梗塞との診断。
担当医は、脳外科オンコールに相談して緊急血栓溶解療法の準備を開始。しかしながら、指導医により、四肢の脈拍の触診と上肢の血圧の左右差がチェックされた。以下がその結果。
右橈骨動脈脈拍弱い:右上腕血圧 90/60 mmHg
左橈骨動脈脈拍強い:左上腕血圧 170/100 mmHg
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピットフォール
「脳梗塞のみにショックなし!」というクリニカル・パールがある。
このような患者では、脳梗塞以外の他の要因も考慮。
脳梗塞急性期患者では、血圧が140/90以上となる場合がほとんど。
それ未満であれば、むしろ他の疾患の合併も考えるべき。
心臓血管系の急性病態では、「対称性の破れ」がないかどうか、四肢の脈拍を触知する。
脳梗塞患者は全例で血圧の左右差をチェックすべき。
急性大動脈解離が原因となって脳梗塞をきたすことがある。
その後の経過と解説
再度、詳しい問診によって、脱力感を自覚する前に激しい背部痛もあったことが判明。
さっそく、胸部造影CTで、急性大動脈解離(スタンフォードA型)と診断され、緊急で手術が施行された。
最終診断:急性大動脈解離:スタンフォードA型(上行大動脈より解離)
![]() |
日本の高価値医療 High Value Care in Japan (ジェネラリスト教育コンソーシアム) |
徳田安春 | |
株式会社尾島医学教育研究所 |
テレビや新聞より早いグローバルな情報や科学的に正確なエビデンスに基づき、サプリなどの宣伝なしの信頼性の高い中立な情報をお届けします。キンドル版「知っておくと役に立つ最新医学2016(ノンフィクション)」こちらいかがでしょうか。
科学的根拠に基づく最新医学情報とグローバル・スケールでの先端医学のホットな話題を提供し、わかりやすく解説します。メルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」こちらいかがでしょうか。
臨床推論の総論とピットフォールをマンガでサクッと1時間以内に習得できます。エキスパート診断医への一歩を踏み出すことができます。「マンガ臨床推論~めざせスーパージェネラリスト~」こちらも合わせていかがでしょうか。