前回に引き続き、高齢者の薬の飲み方について考えていきましょう。
高齢者では慢性疾患をもち、いくつもの病院にかかっていることも少なくないと思います。 薬剤の相互作用で、効果を落としたり、副作用が出やすくなったりすることもあります。 市販の薬、漢方薬、栄養剤を含め併用している薬があれば必ず医師に相談しましょう。
「以前風邪のとき咽頭炎の診断でもらった抗生剤が残っていたので、今回熱が出たときに飲みました」というのをよく耳にします。 抗生剤といっても何十種類もあり熱の原因疾患によりその選択抗生剤は異なります。 重症の感染症の場合のこっていた抗生剤を数日服用することにより診断・治療が遅れて危険になることもあります。
「以前、虫刺されでもらった軟膏(ステロイド)が残っていたのでかゆい水虫に使った」と耳にすることがあります。 ステロイドは免疫抑制作用があり、水虫は白癬菌という真菌(かび)が原因で起こっているので余計悪くなることがあります。
経口薬剤にも、長く放置しておくと効果が落ちていくものもあります。 座薬などは通常1~2年使用可能ですが、それは設定された温度、湿度、光の条件で保管された場合にかぎります。 また、目薬などでは防腐剤の入っていないものでは一日で使用不可のものあります。 余ったからといって、保管してまた使用することのないようにして下さい。
「お友達が○○のお薬が効いたと言うので、わたしももらって飲んだらすごく効いたので、同じ薬を出してください」と受診される患者さんがいます。 他人からもらった薬で思いもよらない副作用が起こることもあります。 同様に自分の薬が他人に副作用をもたらすこともあります。 絶対に薬の使いまわしはしないでください。
脳梗塞などで誤嚥のリスクがあれば市販の増粘剤を使用し、とろみをつけて飲みやすくすることもあります。 誤嚥を防止するためには、上体を起こし座位あるいは立位で服用するようにしてください。 粉剤と錠剤は別々にするなど、何回かに分けて飲んだ方がよい場合もあります。 服用後は、口をあけて残ってないか確認するようにしてください。
どのような症状でもかまいません、「変だな」と思ったら必ず医師に相談してください。
市販の風邪薬、解熱鎮痛剤で肝機能・腎機能異常をきたすこともあります。 常用している薬剤がある場合、定期的に医師の診察を受けて副作用のチェックを行ってください。
市販の薬は副作用が少ない、漢方薬は自然のものだから安全である、という先入観をもつのは危険です。 市販の薬、漢方薬も薬剤です。 効果もあり、副作用も起こりえます。
今回の連載はここまでです。 もっと詳しく知りたいという方は、「今からでも遅くない 病気にならない 健康生活スタイル」と題しました拙著がありますのでよろしくお願いいたします。 また、新連載を準備いたしますので、乞うご期待願います。 では、近いうちに。