燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

キーポイント集 連載 その64

2014-07-22 | 症例集

 今回は総合診療のキーポイントとして、短めのものを何個か集めてみましたので、では

 ●大量出血・高度脱水の患者では血圧正常の場合、ティルト・テストを行う

 消化管出血、腹腔内出血、下痢、嘔吐などの患者では、出血・脱水が進行すると、低容量性ショック(血圧低下+主要臓器循環不全)をきたす恐れがある。 血圧低下が起こる前の段階(プレショック)を捉えることができれば、適切で迅速な治療判断を行うことができる。 そのためにはティルト・テスト(Tilt test)を行うとよい。

 臥位から座位へヘッドアップ(キャッチアップ)し、3分以内のバイタルで、収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、心拍数が20/分以上増加すれば陽性であり、プレショックの診断となる。 また、仰臥位でも心拍数が収縮期血圧より大きい場合には「バイタルの逆転」と呼び、これもプレショックを示唆する。

 もし夜間帯などで、上部消化管出血の患者が来院した場合、ショックバイタルでなくても、必ずプレショックの有無を確認する。 ティルト・テストが陽性であれば、緊急上部消化管内視鏡検査の適応である。

 ●低容量性ショックvs敗血症性ショックの鑑別では呼吸数に注目せよ

 ショックバイタルのうち、急性期の現場でよく遭遇する鑑別は「低容量性ショックvs敗血症性ショック」である。 このとき頻呼吸(>20回/分)がみられたら、敗血症性ショックを考慮すべきである。

 ①敗血症による乳酸アシドーシスにより、代償性呼吸性アルカローシスを惹起

 ②敗血症で増加した血中エンドトキシンやサイトカインが呼吸中枢を亢進(SIRS)

 ③敗血症の原因が重症肺炎の場合、呼吸不全により呼吸数が増加

 急性熱性疾患では、脱水と発熱がともにみられることが多く、ショックバイタルの原因として、敗血症性ショックの可能性があれば、early goal-directed therapyの適応(CVラインの挿入にてSvO2の測定などにより治療管理を決定する)となる。 「脱水のみに頻呼吸なし!」と覚える。

 一方、敗血症の急性期では発熱がない場合や、逆に低体温の場合もあるので、体温上昇がなくても敗血症は否定できない。 むしろ、バイタルや意識レベルの急激な変化(いわゆる急変)では、常に敗血症を考慮し、ただちに敗血症ワークアップ(sepsis workup)を行う(血液培養を2セット採取し、痰・尿・組織液のグラム染色と培養を提出後、起炎菌を適切に想定した抗菌薬の迅速な投与)。

 今回は以上です、では次回に。

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