燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

早死にしないように5 連載 その99

2014-12-02 | 症例集

 前回に引き続き、今回は「日米比較に見るセルフケアの現状と期待」と題して考えていきましょう。

 セルフケアの現状の日米比較をするには、その背景となる両国の医療政策や医療経済、医師と患者の医療への姿勢や考え方の違いを理解する必要がある。

 低医療費・国民皆保険・フリーアクセス・医療の平等など、日本には優位点が多々ある一方、医療の地域格差・予防政策の遅れなどの政策上の問題点がある。 さらに、まだまだ医師主導の医療が根強く、患者・家族の受療における権利と共に責務が十分理解されていないようである。

 米国では、健康保険は自分の選択で購入するもの、自分の健康の責任は自らにあるもの、受療の権利と共に自分がすべき責務も自覚していることが多い。 一方、日本国民はある意味では世界に稀なる「国民皆保険」という素晴らしい制度の有難さの認識が薄いせいか、それに甘え、さらには乱用(例えば、無料ならば何でも受療)している感がある。 したがって、セルフケアへの意識の低さ、あるいは意識格差がある。 米国人にとってセルフケアを実践することは、高い保険や自己支払いの高額医療費から自身を守る一手段なのである。

 日本では、医療提供者や国家政策としては先述の「住民戦略」や「ゼロ次予防」などが推奨されるが、個々人としてはいかに「セルフケアの意識改革」をするかがカギとなろう。 そのために、市民・患者への教育や啓発を的確に実践できる家庭医や総合医の役割は大きく、そのような医師育成も急務である。

 150年ほど前にアブラハム・リンカーンが言った「人民の人民による人民のための政治」は、現在でも生きた名言であり、健康・医療にこれを当てはめると、医療全体としては「国民の国民による国民のための医療」、また個々人に対しては「私の私による私のための健康」となろう。

 「セルフケア」は、健康の保持、病気の予防は当然のこと、病気にかかったときの対処、より良い受療の仕方に欠かせない。 また、医療参加への第一歩であり、さらには医療の改善、医療費削減にも貢献する。 家庭医らが患者を最初に診る医療を”プライマリケア”と呼ぶが、国民一人ひとりが究極のプライマリケアは「セルフケア」であることを理解し、それを自ら積極的に実行する必要があろう。

 このシリーズは以上です、では次回に。

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