燃えるフィジカルアセスメント

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けいれん4 連載 その72

2014-08-26 | 症例集

 今回も前回に引き続き痙攣についてです、今回は「見落としがちな疾患」です。

 a 痙攣と紛らわしい病態:失神  

 失神とは、脳血流は瞬時的に遮断されることによって起こる一過性の意識障害である。 通常は数秒~数分で回復し、意識障害などを遺すことはない。 このため、脳細胞の過剰な放電から由来する反復性の発作である痙攣とは原因的な病態が異なる。 ただし、失神に痙攣を伴うことがある。 実際、血管迷走神経失神は予後良好型の失神の代表格であるが、このタイプの失神の場合でも、5%に全身性の痙攣をきたすことがある。

 ショックバイタルを呈する病態は、脳血流が瞬間的に遮断されることによって、痙攣をきたすことがある。 ショックバイタルを呈する病態には、心原性・閉塞性・血管拡張性・容量低下性ショックの4つのカテゴリーがある。

 b 痙攣と紛らわしいその他の病態

 精神科的痙攣(偽痙攣):転換性障害などでみられるもので、真実の痙攣ではない。 ただし、真実の痙攣を起こす患者が時に偽痙攣を起こすこともあるので注意を要する。

 脳底型片頭痛:片頭痛の前兆の責任病巣が脳幹付近と考えられるもの。 回転性めまいや耳鳴り、複視、失調、構音障害、一過性の意識障害などの脳幹由来様の症状が前兆として起こる片頭痛の特殊型。 ものが歪んで見えたり(変視症)、小さく見えたり(小視症)、逆に大きく見える(大視症)などの「不思議の国のアリス症候群」が現れることもある。

 ナルコレプシー:昼間に突然の強い眠気に襲われ、睡眠発作を繰り返す過眠症の一種。

 Limb-shaking transient ischemic attack:頸部の過伸展などによる頸動脈の一時的な閉塞によって起こる四肢のリズミカルな間代様運動。 ジャクソン行進は認めない。

 QT延長症候群:心室頻拍による失神発作や、心室細動による急死をきたす恐れのある疾患。 痙攣を呈することがあり、てんかんと誤認される例もある。

 c 全身性疾患に伴う中枢神経病変

 膠原病:全身性エリテマトーデス患者においては、中枢神経ループスによる痙攣をみることあり。

 肉芽腫性疾患:結核(結核腫)やサルコイドーシスなどが中枢神経障害をきたすことがある。

 腫瘍随伴症候群:肺がんや乳がん患者における辺縁系脳炎などで痙攣を起こすことあり。

 Reversible posterior leukoencephalopathy syndrome (RPLS):妊娠子癇、高血圧性脳症、化学療法や免疫抑制薬(シクロスポリンなど)投与中などの患者にみられる病態。 頭痛、視野障害、意識障害、痙攣などをきたす。 MRIなどの出現により診断されるようになった。

 薬剤性痙攣:新たに痙攣を呈した患者をみたときには必ず薬剤性または薬剤の影響も考えることが重要である。 血中濃度が治療域以内の薬物でも痙攣発作を起こすことがあるので要注意である。

 d その他

 低酸素性脳症(呼吸停止後の蘇生患者など)や臓器不全(肝不全や腎不全)が進行した患者、甲状腺クリーゼでも痙攣を認めることがある。

 今回は以上です、次回は問診時の注意点について考えていきましょう。

 

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