『 リアの車高調整 』
オートバイの “ リア 車高 ” は、ライダーに合わせて リア サスペンション の プリロード調整を行なえば 、そのライダーに適した 値に調整された事になります。
殆どのオートバイは、リアサスペンションの形式が スイングアーム方式ですから、ライダーが乗車した時(1G’時と言います)、スイングアーム の “ 垂れ角 ” (水平からの下がり角)が “ リア車高 ”と言えます。
この “ 垂れ角 ” は、ライダーに合わせてプリロード調整を適切に行なえば、ライダーの体重が異なっても、必ず同じ角度になります。
つまり、別な言い方をすれば、ライダー乗車時の “ リア車高 ” ( スイングアームの垂れ角 )は オートバイ毎に最適な値が決まっていて、その値に合わせる為に ライダーに合わせた プリロード調整が必要だ、と言えます。
これで、オートバイの整備・セッティングの基本、1.「 タイヤの空気圧の調整 」に続いて、2.「 リア サスペンションの プリロード調整 」、つまり リア の車高調整が出来た事になります。
続いて必要になるのが、3.「 前後の車高バランス調整 」です。
『 前後の車高バランス調整 』
リアの車高とフロントの車高のバランスを調整する作業を 「 前後の車高バランス調整 」と言います。
前後の車高のバランスが崩れていると、操縦性・ハンドリングの安定感や軽快感が損なわれるので、最適な前後バランスに調整する事が 整備・セッティング の基本です。
「 リアサスペンションのプリロード調整 」で “ リアの車高 ” は決まりますので、それに合わせて “ フロントの車高 ” を調整するのが バランス調整の基本になります。 リアの車高は、調整で説明した通り、ライダーの体重に合わせて プリロード調整 を行なう事で求められますが、フロントの車高調整は 主に フロント サスペンション 取り付け位置の調整で行ないます。
調整方法は、時速 10㎞ 程で直進走行しながら、右 または 左 にバンクさせてターンを行なった時の、フロント(ステアリング)が切れ込むタイミングを見て行ないます。
バンク直後、フロントの切れ込み・舵角が遅れる事なく始まればバランスが取れていて、仮に フロントの車高が低ければ 遅れ、逆に高ければ 早目に始まります。
ステアリングの切れ始めの動きは、殆どのオートバイで、ケーブルやハーネスと車体との接触などにより、右と左で はっきりとした違いがありますので、必ず 右から左の 軽く動き始める方向へのターンでの確認が大切です。
ステアリングの左右の動きの確認は、車体を直立状態にさせ、フロント サスペンション周りは 一切フリーのまま、車体下部をジャッキアップして フロントホイールを路面から浮かせてから、ハンドルを左右にゆっくり切って確認します
『 社外製 リアサスペンション ユニット の場合 』
社外製の リアサスペンション ユニット に交換しているオートバイの場合、特に 「 車高調整機構 」がついている場合には、更に調整が必要です。
2.「 リアサスペンション の プリロード調整 」を行なった後、前述の通り、オートバイ毎に決まっている 最適な スイングアーム の “ 垂れ角 ” ( リアの車高 )に調整が必要になるのです。
調整方法は、時速 10 km 程で直進走行しながら、アクセルを一気に開けたフル加速させ、その時の スイングアーム または スイングアーム ピポット 部の 動きを見て調整を行ないます。
加速した際、垂れ角のついた スイングアームの関係で、ピポット部には 車体を上方向へ押す力が働き、同時に 加速によって 荷重がリア側に移った事で、ピポット部を下方向へ押し下げる力が働きます。
「 車高調整機構 」の役割は、この ピポット部を 上向きに押し上げる力と、下向きに 押し下げる力をバランスさせる為、スイングアームの角度を調整する寄稿です。
仮に、この ピポット部に働く力がバランスしていない場合、上向きに押し上げる力が大きいと リアサスペンション が 作動し難い状態とり、 下向きに押し下げる力が大きいと リアサスペンション を 縮めてしまう状態になり、どちらの場合にも リア タイヤの グリップが 失われる事に繋がり、直線走行時よりもバンク時のアクセル操作で グリップを失う事態を招きます。z
[ 注意点 ] ・・ 社外製のリアサスペンション ユニットは、純正装着のユニットと較べて、様々な機能が備わっていて、一見、それが 高性能であり高機能・高価格の証だと思いがちですが、それは誤解です。
純正品の場合は、あらゆる走行試験を繰り返して、最適な スプリングレート や ユニットの長さ、ダンパー(減衰)に調整された品が装着されていますが、社外製のユニットの場合には それら膨大な走行テストは殆どされていません。
その上、そうした製品を輸入する際には、車両毎に作られた状態で輸入されるのではなく、ユニットを シリンダーやピストン、ボルトエンド など 部品毎に輸入していて、主要な シリンダーやピストンなどの 種類は僅かしかありません。
輸入した後、注文に合わせて、それらの シリンダーやピストンなどを組み合わせて、○○ 車用 として販売しているのです。
つまり、純正品の様に 最適な ユニット長 や ダンパー 調整が行われていないのを補うために、「車高調整機構」や 「多段階ダンパー調整機構」で補う必要があるだけです。
社外製 サスペンションユニットの良い点は、比較的 高精度で作られた部品である事、スプリング交換とオーバーホールが容易である事だと理解すべきで、逆に悪い点は、必要になっている適切な調整作業が行なえないと、本来の性能を発揮できないばかりか、タイヤのグリップを失う原因を作ってしまう事だと理解すべきですが、イメージ広告に押されて誤解されている事は残念な限りです。
『 その他 』
〇 フロントサスペンション の プリロード調整は、リアのそれとは異なり、調整・セッティングの 順位は高くなく、前後の車高調整の後に行なうのがお勧めです。
〇 前後車高バランスを行なう場合、フロント サスペンション (フォーク)の整列が取れている事が重要になります。 それは、整列が取れていないと、左右の ターン特性に差が生じる為です。 同様に、前後タイヤ の 整列調整もお勧めですが、それらは セッティング作業ではなく、基本的な整備作業のため、この項では説明を省きます。
※ 開催イベント『 オートバイとライダーのための “ クリニック ” 』では、リアサスペンション の プリロード調整 や 前後車高バランス取り作業など、参加した人の 要請や疑問に合わせて、実車を使った 実際の作業やセッティングをサポートしています。
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