真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「憲法改正」と三島の決起呼びかけの演説

2009年04月12日 | 国際・政治
 どれほどのものか定かではないけれども、憲法を変えようとする動きの中に、三島由紀夫の歴史観や思想と同じものがあり、かなりの力を持っているのではないかと不安に思う。「交戦権の放棄」を放棄し、自衛隊を国軍と認め、旧日本軍と変わることのない建軍の本義を得ようとする考え方があるのではないかと思うのである。
 敗戦をさかいに180度方向を変えたかに見える日本の再出発は、米ソの力関係や朝鮮戦争の勃発によって大いに歪められた。GHQの占領下、アメリカの都合で密かに理不尽な取り引きによる戦犯免責が行われ、公職追放解除なども行われた。その結果、「旧日本軍」が様々なかたちで戦後の日本に生き延びたことは間違いない。したがって、日本国憲法の基本的な部分を、三島由紀夫のように、再び大日本帝国憲法へ逆戻りさせようと画策する動きがあっても、不思議ではないと思うのである。「自衛隊の歴史」前田哲男(ちくま学芸文庫)より抜粋する。
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                    事件と論争

 7 三島由紀夫と自衛隊

 70年11月25日、三島由紀夫は東京市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部・総監室バルコニーから、眼下に参集した自衛隊員に向かって決起呼びかけの演説を行った。三島生前最後の声であり、かつ自衛隊との断絶宣言ともなった。

「自衛隊にとって建軍の本義とは何だ! 日本を守ること、日本を守るとは何だ! 日本を守るとは天皇を中心とする、歴史と文化と伝統を守るんだ!
 よく聞け!聞け、聞け、聞けい、静聴せい!男一匹が命をかけて諸君に訴えているんだぞ!いいか、いいか!
 おれがだ、いまの日本人がだ、ここでもって起ち上がらなければ、自衛隊が起ち上がらなければ、憲法改正というものはないんだよ。諸君は永久にだね、ただアメリカの軍隊になってしまうんだぞ!
 諸君は武士だろう。武士ならばだ、自分を否定する憲法をどうして守るんだ。自分らを否定する憲法というものにペコペコするんだ。
 諸君の中には一人でもおれと一緒に起つやつはいないのか。一人もいないんだな。よし、おれは死ぬんだ。憲法改正のために起ち上がらないという見極めがついた。自衛隊に対する夢はなくなったんだ。
 それではここで天皇陛下万歳を叫ぶ。天皇陛下万歳!万歳!万歳!」。

 
 三島の演説に営庭集められた制服自衛官ははげしい野次でこたえた。「降りてこい」、「引きずり降ろせ」、「気狂い」、「銃で撃て」 などの言葉が録音されている。総監監禁さるの報は、隊員たちに敵意を燃え上がらせるに十分だった。自衛隊と三島の関係は、蜜月から破局へ、劇的に変わった。
・・・(以下略)


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