真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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GHQの政策転換「逆コース」NO1

2025年02月07日 | 国際・政治

 再び大統領となったトランプ氏に対する非難、批判は続いています。確かに、トランプ大統領の、ガザやデンマークの自治領グリーンランドをアメリカが所有するとか、パナマ運河の返還を求めるというような発言は、とんでもない発言だと思います。でも、アメリカは、公にすることなく、そういうことを続けてきたと思います。

 

 下記は、「ニッポン日記」マークゲイン:井本威夫訳(筑摩書房)からの抜萃ですが、日本の戦後史にとって、きわめて重要な事実を明らかにしています。トランプの発言とそれほど変わらないようなことが話し合われ、実行されたといってもよいと思います。

 ポツダム宣言には、 

(7) そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。

(10)われわれは、日本を人種として奴隷化するつもりもなければ国民として絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待したものを含めて、すべての戦争犯罪人に対しては断固たる正義を付与するものである。日本政府は、日本の人民の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって障害となるものはこれを排除するものとする。言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立するものとする。

 とあります。

 でも、総司令部の各局から代表者が全部出席した極秘の会議が行われ、”日本の政界から戦争犯罪人を追放する指令案”についての議論のなかで、ポツダム宣言とは関係のないアメリカのための主張がなされているのです。
 ポツダム宣言は、連合国軍が日本領土内の諸地点を占領するのは、「ポツダム宣言の執行」が目的であることを規定ています。

 にもかかわらず、戦争犯罪人の追放が、日本を混乱させ、革命を招くおそれがあるとか、追放は最高指導者に限られるべきであるとか主張して、実は、戦争犯罪人を擁護し、彼らと手を結んで、日本を「反共の防壁」とするための主張をしているのです。

 だから、GHQの政策転換である「逆コース」は、当初からウィロビーを中心とした参謀第2部(G2)が準備していたことがわかると思います。

 そして、最終的には、ポツダム宣言通り日本の民主化や憲法改正を推進しようとしたケーディスなどを中心とした民政局(GSを、参謀第2部(G2)が抑え込んだといってもよいと思います。

                                         チャールズ・ウィロビー - Wikipedia

 だから、現在も日本は、自民党政権のもと「反共の防壁」国家として、アメリカに尽くしているのだと思います。

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                        第一章 期待の時期

 1220日 東 京

 夕べは、国務省や総司令部の人たちを招いて、クラブで晩餐会を催した。食事後、ロビーで酒を飲みながら新聞記者や将校や婦人たちの群れを眺めていたが、必然的にマックアーサー元帥論が始まった。元帥はつとめて舞台を離れて、またそのはるか上方にいるようにしているのだが、その存在は、いつもわれわれの身近に感じられ、彼と、その政策に関する議論が、このクラブで行われずに済む晩はほとんどない。ここにいる連中は、今のところ外国特派員というより戦時特派員と行ったほうが良さそうな連中なので、議論の的になるのは、元帥の日本における政治記録よりも軍人としての統帥力の方が多い。多くの特派員は海軍に従軍したので、元帥に対する海軍側の尖鋭な反感をうけついでいる。元帥麾下の広報部がレイテ島の勝利の日に発した命令の話などは、少なくとも十何回かは聞かされた。命令は海軍側のラジオ放送を禁止し、そのうえ、「この勝利の日は総司令官の記念日である」との説明を加えた。ある特派員たちは、元帥のきどった態度、文章、彼をと取りまく人々をひやかす。またさらに、兵隊たちの苦労を記憶するものは、元帥を「防空壕のダグ」なんていうあだ名で呼ぶ。

 が、ゆうべは戦争の話は出なかった。日本の占領は元帥麾下の宣伝将校たちによって描き出されているような無限の成功ではないということに意見は一致した。だが、しばしば犯される誤りが、かならずしも元帥だけの責任に帰すべきものでもないという点についても意見は一致をみた。われわれの多くは、旧態依然たる日本政府を通じて事を行おうとするのが、間違いのもとだと考えている。日本政府がわれわれの目的に対してもっとも悪質なサボタージュを行ない、民主主義から日本国民を「保護」しようとした実例はたくさんある。天皇ヒロヒトの留位ははなはだしい失策であったと考えている者も何人かいる。天皇制の神話は、われわれが破壊しようとしている封建的な旧日本と固く結びついているからだ。しかしこれらはたとえ誤まりだとしてが、元帥について静かに議論することは東京では不可能だ。いちばん激烈な批評家は元帥に属して戦線に従軍した連中だ。いま、その連中はだんだん大声になって議論をふっかけ始めた。彼らにいわせると、ほかのものは総司令部の内部でどんなことが起こっているのか知りもしなければ解りもしないのだそうだ。も、マックアーサー元帥のせいではない。間違いを仕出かしたのはどこか他のところだ。

 

 局外者は整然かつ知的な仕事が行われているような印象を受けるかもしれないが、実際のところ元帥やその腹心たちはとてつもなくたくさんの問題に直面している、と彼らはいう。元帥自身の意見は、その日昼食を共にした人の意見や、彼の行動を賞賛したり非難したりする毎朝の新聞にひどく左右される。各部局は、上部からの指導がないままに、自分の考えどうりにやっては、へまをやっている。宣伝効果だけが重大な動きに対する唯一の尺度になることもしばしばだ。元帥自身の功績帰せられているいろいろな措置の中には、総司令部以外の場所で発案されたものもたくさんある。たとえば、戦犯摘発の措置もアメリカ人ではないある役人の発意によるものだし、人権に関するの指令はワシントンで生まれた。

 それはともかくとして、総司令部内部には劇的な分裂が発展し、全政策立案者を二つの対立陣営に分けてしまった、とこの批評家たちはいう。一つの陣営は日本の根本的改造の必要を確信するもので、他の陣営は保守的な日本こそ来たるべきロシアとの闘争における最上の味方だという理由で基本的な改革に反対する。日本で必要なのはちょっとその顔を上向きにさせてやることだけだというのである。

 二、三日前、この両陣営の争いは表面化した。第一ビル6階の一室で、日本の政界から戦争犯罪人を追放する指令案についての極秘の会議が行われ、総司令部の各局から代表者全部出席したが、たちまち分裂が起こった。

この案に反対の人たちは次のような論点の数々をあげた。

一、徹底的な追放は日本を混乱におとしいれ、革命さえ招く恐れがある。

二、追放を必要とするとしても、逐次に行うべきで、それ間息をつく暇を国民に与えなければならない。

三、追放は最高指導者に限られるべきである。命令への服従は規律を定めるところであって、部下は服従以外に途はなかったからである。

 軍諜報部の代表を先鋒に、軍関係の四局は固く結束して追放に反対した。国務省関係のある者もこれに味方した。追放を支持したのは主として民政局で、総司令部の他の部局もばらばらながらこれを支持した。予期しない助けが天然資源局の若い中尉から出された。天然資源局には、この男以外に追放問題に興味を持つ者がいなかったので、彼がこの会議に出席を命じられたのだった。

 4時間にわたる議論は、激烈な言葉で終始し、また当の問題からしばしば逸脱しそうになった。しかし結局妥協が成立し、追放令の原案はすこぶる水増しされた形になった。

 会議後、軍事諜報部のチャールズ・ウィロビー少将は、自分の立場に関して長文の声明を発表した。その声明は、「原則としては」追放に賛成するむねに始まり、次に何ページかをこの指令の論難に費やしている。クートニイ・ホイットニイ准将の下にある民政局では時を移さずこれに対する応答を発表し、ウイロビー少将の覚書の前の部分は、後半の意見と符節の合わぬものがあり、もしウイロビーの好むような型の追放が行われたら、日本の政府は「通訳と情婦」たちによって組織されるようなことになるだろうと、反駁した。

 数日前、われわれ特派員の全部はマックアーサー元帥の室に集まったが、元帥はその席上、彼はウイロビーの意見には反対で、ホイットニイおよび民政局の意見に賛成だと言った。

 私たちはこの追放令にからまる内輪話に傾聴した。そして言った。OK、この軋轢が大いに深刻だ、そして将来もっと激しくなるだろう。しかし業績の如何は、秘密会議の内情によってでなく、実現された成果によって採点されなければなるまい、と。

 われわれの多くは、日本降伏以後発せられたいろいろな指令は、当を得たものと考えている。今年の8月は日本の武装解除に関する基礎的な指令の月だった。十月には人間の基本的自由に関する命令が発せられた。──特高警察の追放、政治的権限および人権に対する最後の制限の撤廃、強力な労働運動に対するわれわれの期待について日本国民の関心を喚起する確固たる断言、政治犯の劇的な釈放、11月、12月には、土地の再分配、失業者の広範な救済計画、神道と国家の分離家族的大トラスト、すなわち財閥解体など根本的改革についての命令が発生られた。いまでは演説も集合も自由になった。マックアーサー元帥の総司令部のある建物の筋向いの日比谷公園には、共産党の弁士たちの嗄れ声の激越な演説を聞くために何千人もが集まり、東京の各新聞紙は極左から凶暴な国家主義に至るまでの全音階にわたって意見を述べ立てている。労働運動の組織者たちは時と追い駆けっこするように忙しがっているし、労働運動は総司令部の労働課の職員たちが統計をつくりきれないほど、急速に成立しつつある。因習に囚われた保守的な日本の農村さえ、いまや目覚めつつあり、組合組織者たちは縦横に農村をとびまわり、近く行われるであろう農地改革のニーズを伝えては農民組合への加入を説きまくっている。

 しかし、こうした自由の発現はまだまばらであり、広汎な大衆層は今もって昏睡状態にあるというのがわれわれの一致した見解だ。改革の大部分はいまだ言葉の範囲を出でず、行動の領域でには移されてないということも、みんな認めるところだ。しかし、諸般の指令の内容は創造中の新しい民主主義に感動的な形態を与えた。これはアメリカが誇ってもいいと思う。

 総選挙の期日を延期する指令を発する決定をマックアーサー元帥が与えたということを今日知った。この総選挙を大がかりな詐欺行為たらしめないように、日本政府の遵守すべき最小限度の規準も指令に示される。

 この目前に迫った指令に関する流言で、ここ3日間日本の政界は混乱に明けくれた。日本の政治家たちはひどく戸まどいしているようで、戦犯のむらがり集まる多数党の進歩党では、事実幹部たちが当の解散を協議するため、会合を後に予定している。

 この指令は確かに日本の政治に対する直接の干渉で、マックアーサー元帥は気乗りがしていなかった。しかし、こうした処置が必要なことは、すでに数週間前から明白だった。もしこうした干渉が行われなければ、次の「民主」国会がまたもや恬として悔いない国家主義者達によって占領されることは、幾多の兆候に供して明らかだ。そしてかかる国会は日本再生へのマックアーサー元帥の全計画を覆滅させることも必定だ。

 

 

 

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