真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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なぜ、ウクライナ戦争を支援するのか

2024年07月18日 | 国際・政治

 第三次世界大戦が迫っていると指摘する人がいます。私も、国際社会での西側諸国の動きが、それを示しているような気がします。日本の戦争準備もますます加速しているように思います。

 にもかかわらず朝日新聞は、714日朝刊の一面トップで、「刑務所か戦場か迫った警察」と題する記事を掲載しました。「ロシアの突撃兵 ウソつかれ前線へ」とか、”部隊8割死亡「死ぬために送られる」”などという副題が挿入されていました。

 また、その記事は2面に続き、”占領していない所に「旗立ててこい」”とか、”31歳「前進を偽装する撮影のためと気づいた」”、”34歳「誰も突撃の準備なんてできてなかった」”、「戦死者いとわぬロシア軍、東部戦線で攻勢強める」、”容疑者や移民に軍との契約を迫る「隠れ動員」も”と題する記事もありました。

 私は、徹底したロシア敵視の記事であり、プーチン社会主義政権を転覆しようとするアメリカの戦略に基づく記事だと思いました。

 これらの記事は、ウクライナ戦争の激戦地で捕らえられたロシアの突撃兵が、捕虜の一時収容施設で、朝日新聞の取材に応じ証言したものだということです。ロシア国内の反発をできるだけ小さくして、有利に戦いを進めるためには、あり得ることかも知れないと思います。でも、ウクライナの管理下に置かれたロシア兵の証言ですから、そのまま事実と受け止めることはできないところもあると思います。

 そして何より、こうした記事は、ウクライナ戦争の停戦を遠ざけ、ロシア領内へ攻撃を広げて、プーチン政権を転覆しようとするゼレンスキー大統領の主張(アメリカの戦略)を後押しする記事だと思います。対ロ戦争支持の記事だと思うのです

 逆に、ウクライナでは、暴力的な徴兵に遭遇したという動画の投稿が、ツイッターにしばしば投稿されています。(一例、https://twitter.com/i/status/1746829070992875715)。また、先日は、徴兵を逃れるために、国外に脱出しようとしたウクライナの男性が射殺さたとAFPBBNewsが報じました(https://www.afpbb.com/articles/-/3529140)。徴兵に関しては、ウクライナの方が苦しいだろうことは、明らかだと思います。いずれにしても戦争を続ければ、両方にさまざまな悲劇が起きるのであり、停戦すべきなのです。ウクライナの人々も、停戦を望んでいるという下記のような記事が、プラウダ(english.pravda)に掲載されていました。

 多数のフォロワーを持つウクライナのブロガーが、ゼレンスキー大統領に、できるだけはやく戦争を終わらせるよう呼びかけているというのです。ウクライナの人々は、戦争にうんざりし、失った領土を取り戻す必要性ではなく、「皆殺しになる」なる前に、戦争を終わらせる必要性について語っているというのです。だから、プーチン政権の転覆を意図するアメリカの戦略に従ってはいけないと思います。

Ukrainian bloggers with millions of followers call Zelensky for peace

Ukrainians sick and tired of war, call Zelensky for peace

https://english.pravda.ru/world/160031-ukrainian-blogers-peace/

 私が、アメリカの戦略に従ってはいけないと考えるのは、アメリカが戦争してでも、他国から利益を吸い上げないと国を維持できない体制になっていると考えるからです。以前取り上げましたが、エドワード・スノーデンが所属した国防総省の情報機関、国家安全保障局( National Security Agency:NSA)には、莫大な資金が投じられています。軍やCIAと連携する組織のようですが、アメリカは世界中から利益を吸い上げることによって、それらを維持し、世界中のあらゆる国に対して影響力を行使することができる体制にあるのだと思います。でも多くの場合、社会主義政権の国や反米政権の国は、利益を吸い上げられること、言い換えれば、搾取・収奪されることを拒否します。だから、アメリカはそうした国の社会主義政権や反米政権の転覆を意図し、戦争をくり返してきたと思います。

 西側諸国では、悪質な独裁者として知られるジンバブエフのムガベ大統領は、南アフリカの反アパルトヘイト運動を積極的に支援し、アフリカで絶大な尊敬を得ていたといいます。でも、南アフリカの白人政権は、一度ならず、ジンバブエの要所に対する爆弾テロや空爆などを行い、ジンバブエの不安定化を図ったといいます。

 下記抜粋文の記述を見逃すことができません。

南部アフリカ諸国がムガベ政権を支持し、欧米諸国が反ムガベ勢力を支持した「民主化のねじれ現象」の背景には、こうした経緯がある。支援公約を覆した英国政府と、ジンバブエを「ならず者国家」に仕立て上げ、反ムガベ勢力に多大な資金援助をする一方で食糧援助への反対さえも辞さなかった米国のジョージ・ブッシュ前政権のパフォーマンスも、一体誰のための援助か疑念を残した。

 下記は、「新・現在アフリカ入門 人々が変える大陸」勝俣誠(岩波新書)から「第二章 民主化20」の 「2 ジンバブエの政治経済危機」の一部を抜萃しました。

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                   第二章 民主化の20

                 2 ジンバブエの政治経済危機

 

 南部アフリカでのムガベ像

 第一は、ムガベが、ヨーロッパによる植民地支配に対して自らの力で独立を勝ち取った、アフリカ全体でも数少ないカリスマ的アフリカ人リーダーの一人であることだ。

 ジンバブエはかつて、英国の植民地推進者セシル・ローズの名にちなんで「ローデシア」と呼ばれた、白人中心の実質的アパルトヘイト国家だった。1960年代、ムガベは他のナショナリストと共に反植民地闘争を開始し、前出のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANUPF)という名称でゲリラ活動を展開した。

 79年、ムガベは英国と停戦し(ランカスター合意)、翌80年、新生国家「ジンバブエ」の首相そして大統領になり、その後、2013年現在に至るまでその座にとどまってきた。

 80年代、ムガベ大統領は、首都ハラレに隣国南アフリカでは非合法とされていたアフリカ民族会議(ANC)の拠点を提供するなど、南アフリカの反アパルトヘイト運動を積極的に支援し、アフリカで絶大な尊敬を得た。これに対して南アフリカの白人政権は、複数回にわたり、ジンバブエのANC事務所への爆弾テロや空爆などで応酬し、ジンバブエの不安定化を図った。南アフリカの反差別運動に対するムガベ大統領の揺るぎなき支援は、南部アフリカでのジンバブエの評価を確固たるものにした。

 

 かつてANCのリーダーだったタボ・ムべキ元南アフリカ大統領が、数回にわたりジンバブエでの与野党間の対立の調停活動を行ったが、ムガベを説得できず、欧米のメディアにはムベキの軟弱な態度を非難する声さえ出た。しかし、その背景には、以前のムガベ支援へのANCの恩義あったと思われる。実際、60歳代でゲリラ戦の経験のないムベキが80歳代で独立戦争を戦ったベテランのムガベ大統領に向かってどこまで強い発言ができたであろうか。

 それどころか、かつて南アフリカのアパルトヘイト勢力を支援した諸国が加盟するSADCでは、2007年の首脳会議において、ムガベ大統領に対しては野党との対話を促す一方で、英国など欧米諸国による経済制裁を批判し、その圧力にアフリカ人として毅然と立ち向かっているとして、ジンバブエ支持が満場一致で再確認されたほどである。

 冷戦下に植民地支配に対して武力闘争によって独立を勝ち取った国が多い南部アフリカの現代史の文脈を見ないと、ムガベ独裁に対する欧米とこの地域の間の温度差は分かりにくい。

 

残る英国の公約反古ツケ

 危機が長びいたもう一つの要因として、白人入植者の土地問題に対する英国の対応がある。

 前述した1979年のランカスター合意の時点で、ジンバブエでは、わずか6000人の白人入植者が最も肥沃な土地のほとんどを所有し、450万人のアフリカ人が、残りのより生産性の低い土地での伝統的農業に押しやられている状況だった。英国政府は同合意で、白人の売り手とアフリカ人の買い手の合意による土地改革を、資金援助によって支援すると公約した。

 しかし実際には、それから10年たっても合意よる土地改革は進まず、それに追い打ちをかけるかのように、97年、英国のトニー・ブレア政権は、土地改革問題は植民地問題ではないとして土地改革支援の打ち切りを通告し、歴代の政権が継承してきた公約を覆してしまった。

 このとき、ジンバブエの国家財政は、IMFに課せられた経済改革の不調と旧解放軍戦士に対する大盤振る舞いによって、危機的状況にあった。そのため、ブレアの通告を受けたムガベ政権は、2000年になるや白人大農場を補償なくして接収。政権維持に功績のある軍人や与党関係者と貧農への再配分を強行したのである。こうした経緯から、身内への配分は良くないとしても貧農への補償なき土地接収自体は支持する、というジンバブエ人は、今日でも少なくない。

 南部アフリカ諸国がムガベ政権を支持し、欧米諸国が反ムガベ勢力を支持した「民主化のねじれ現象」の背景には、こうした経緯がある。支援公約を覆した英国政府と、ジンバブエを「ならず者国家」に仕立て上げ、反ムガベ勢力に多大な資金援助をする一方で食糧援助への反対さえも辞さなかった米国のジョージ・ブッシュ前政権のパフォーマンスも、一体誰のための援助か疑念を残した。

 


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