イスラエルによるナチス・ドイツに類するジェノサイドが、パレスチナのガザ地区で続いています。毎日、毎日、ガザでは、パレスチナの人たちが亡くなっています。
それだけではなく、イスラエルは、ハマスのイスマイル・ハニヤ最高指導者を、イランの首都テヘランで殺害しました。イラン国内でハマスの最高指導者が殺害されたことを受けて、イランは報復を宣言しています。また、イスラエルは、しばらく前、レバノンのヒズボラ司令官も殺害しています。殺害されたのはウィサム・タウィル司令官と戦闘員だということです。
私は、長く中東が安定しない責任は、アメリカにあると思っています。
だから、「イラン 世界の火薬庫」宮田律(光文社新書303) から、「第四章 イランとアメリカ」の「1、アメリカの意図」を抜萃しました。
現在につながる重要な指摘があります。見逃すことができな指摘をいくつか列挙します。
〇 アメリカ軍の関係者たちがイランに潜伏して、イランの反体制運動との接触を図っている…。
〇 ハーシュ記者によれば、アメリカのイラン空爆の目的は聖職者主導のイスラム共和国体制を動揺させ、人々が政府打倒のために立ち上がることを促すというものだ。こうしたイスラム共和国体制の打倒は、…、AI PAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)系の研究所である「ワシントン近東政策研究所」のパトリック・クローソンによっても提唱されている。
〇 アメリカが核問題をイラン・イスラム共和国体制の打倒の口実として考えているのは中東の石油を支配するためで、イスラム共和国体制打倒のためには軍事力の行使が必要と国防総省の上級顧問も語るようになった。
〇 イランは、対テロ戦争によってアフガニスタン、イラク、中央アジア、湾岸諸国と米軍が駐留する国によって包囲されているが、そうしたイランが体制の維持を図るためには核爆弾の製造が必要だというのが少なからぬアメリカ政府高官の認識である。
〇 2006年冬、国防総省はイランの核施設を攻撃するために、M61─11という、地中を貫通する核爆弾である、バンカー・バスター戦術核の使用をホワイトハウスに提言したといわれている。
〇 ホワイトハウスもまた「イラン・シリア政策オペレーション・グループ(ISOG:Iran Syria Policy and Operation Group)」を設立し、アメリカのメディアに対してイランの否定的イメージを強調するように訴え、イランの反体制派に資金を与え、さらにイランに関する情報を蒐集するようになった。
〇 アメリカは、イランの核問題に関して国連安保理の動きがその期待通りいかない場合、安保理を無視して単独で、あるいは有志連合で軍事行動を起こす可能性がある。
こうした指摘を踏まえれば、現在、アメリカが、エジプトやカタールとガザの戦争の停戦交渉を仲介するということに期待が持てないことは明らかだと思います。停戦交渉の仲介は、多くの国が関わる国際機関や中立の立場にある国がするべきだと思います。イスラエルに対する軍事支援を続けるアメリカが、公平な停戦案を提示するはずはないと思うのです。アメリカが提示する「停戦案」は、きっとイスラエルと共有する戦略に基づいた案であり、国際社会を欺くためのものである可能性もあると思います。したがって、停戦に関わる報道には注意をする必要がある、と私は思います。
また、下記のような報道は、アメリカのイスラエル支援が、アメリカ政府のみならず、軍産複合体と一体であることも示しているのではないかと思います。
アメリカのハイテク大手企業が、イスラエルのAIを活用した大量虐殺やアパルトヘイトを熱心に支援しているというのです。
また、ハマスによる攻撃の直後、グーグルのCEOは、ソーシャルメディアで声明を発表し、イスラエル人に同情を表明し、メタ、アマゾン、マイクロソフト、IBMなど、他のハイテク企業の幹部たちも、みなイスラエルへの熱烈な支持を表明したとのことです。だから、抗議運動が行われているのです。
中東に対するアメリカの関わりをふり返ることは、今、とても大事だと思います。
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第四章 イランとアメリカ
1、アメリカの意図
倒したかった本当の敵
2006年4月8日号の『ニューヨーカー』誌おいてジャーナリストのセイモア・ハーシュは、ブッシュ政権がすでにイランの核施設に対する軍事攻撃の準備段階に入ったと述べている。ハーシュ記者は、アメリカの空軍は空爆する標的のリストの作成に入り、またアメリカ軍の関係者たちがイランに潜伏して、イランの反体制運動との接触を図っていると伝えている。ブッシュ政権が、核問題に関連してイランのイスラム共和国体制の打倒考えていることは周知の事実となった。
前にも述べたように、アフマディネジャド大統領はホロコーストを否定し、イスラエルが世界地図から抹殺されることを訴えた。こうしたアフマディネジャド大統領の姿勢に対してブッシュ政権の高官たちは、アフマディネジャド大統領が中東におけるアドルフ・ヒトラーになるのではないかと見ている。ブッシュ大統領はイランが核兵器を持とうとしていることを確信していると国防総省からも見られるようになった。
ハーシュ記者によれば、アメリカのイラン空爆の目的は聖職者主導のイスラム共和国体制を動揺させ、人々が政府打倒のために立ち上がることを促すというものだ。こうしたイスラム共和国体制の打倒は、「はじめに」でも述べたように。AI PAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)系の研究所である「ワシントン近東政策研究所」のパトリック・クローソンによっても提唱されている。
クローソンは長年にわたってイスラム共和国体制の打倒を提唱してきた人物で、イスラム共和国体制が継続する限り、イランは核兵器を持つだろうと述べ、イランに対して大規模な戦争を行うべきであると主張する。対テロ戦争開始以降、ブッシュ大統領が本当に打倒したかったのは、イラクのサダムフセイン政権ではなく、イランのイスラム共和国体制であるともアメリカでは見られている。
アメリカが核問題をイラン・イスラム共和国体制の打倒の口実として考えているのは中東の石油を支配するためで、イスラム共和国体制打倒のためには軍事力の行使が必要と国防総省の上級顧問も語るようになった。イランは、対テロ戦争によってアフガニスタン、イラク、中央アジア、湾岸諸国と米軍が駐留する国によって包囲されているが、そうしたイランが体制の維持を図るためには核爆弾の製造が必要だというのが少なからぬアメリカ政府高官の認識である。
軍事アナリストのサム・ガーディナーは、イランの核兵器開発能力を完全に奪うためには、イランの化学兵器工場、イラク国境の近くに配備されたイランの中距離弾道システム、14時空軍基地を攻撃し、さらにペルシャ湾のタンカーの航行にとって脅威となるイランの巡航ミサイル・システムや潜水艦を攻撃しなければならないと主張している。イラン・イラク戦争でイラクが化学兵器を使用したことは有名だが、イランもまたイラン・イラク戦争中から化学兵器部隊を持っていた。
友好国への武器移転
2006年冬、国防総省はイランの核施設を攻撃するために、M61─11という、地中を貫通する核爆弾である、バンカー・バスター戦術核の使用をホワイトハウスに提言したといわれている。このバンカー・バスター戦術核は、特にテヘランから300キロほど離れたナタンズの核施設を攻撃するために必要と考えられている。5万基とも推測される遠心分離器を持つナタンズの核施設は、地下100mほどの地中深く掘られてているからだ。
アメリカはナタンズが、もはやIAEA(国際原子力機関)の監査体制の下に置かれていないと判断している。かりにナタンズの5万基の遠心分離機が実際に稼働すれば年間20発の核弾頭を製造できるとアメリカは主張するようになった。ナタンズの核関連施設の破壊はイランの核エネルギー開発能力を奪う重大な手段であるが、通常兵器ではこの核施設を破壊することは不可能とアメリカは政府は考えている。
アメリカは、核開発を行ない、ヒスボラにロケット弾を移転するイランの軍事的脅威に対し、その同盟国であるイスラエルの軍事力を強化するために、イスラエルや中東におけるアメリカの友好国に武器を移転するようになった。アメリカはイスラエルによるナタンズ攻撃にも備えて100発のバンカー・バスター爆弾をイスラエルに売却したと見られている。このバンカー・バスターの移転は、核開発を行っているイランに圧力を加える目的を持っている。
2006年6月下旬に、アメリカの防衛協力局「DSCA:Defense Security Cooperation Agency=ディフェンス・セキュリティ・コーポレーション・エージェンシー」は、アメリカによる諸外国への110億ドルの武器売却を承認するよう議会に求めた。アメリカ製兵器の最大の輸入国はサウジアラビアで、サウジアラビアはその国家防衛隊の近代化のために58億ドルの予算を投入するつもりでいる。サウジアラビア政府は旧式のMIA2戦車に代えてM1A2戦車を購入する予算を29億ドル計上した。
アメリカ政府がナタンズの核施設に関して充分な情報を持ちあわせていないことも、またアメリカ政府に戦術核の使用を検討させる結果になっている。アメリカ政府にとって戦術核の使用はきわめて難しい選択だが、かつてアメリカは日本に対して困難な決定を行ったと語る高官もいる(広島長崎への原爆投下を指す)。
アメリカの統合参謀本部ではいったんイランに対する核兵器の使用を断念する声も上がったが、ホワイトハウス関係者の一部はイランへの戦術核の使用を放棄していないとと見れている。特に、ラムズフェルド元国防長官が選出したメンバーからなる「国防科学委員会(Defense Science Bディフェンスセキュリティボードは、イランに対する戦術の企画の使用を支持し、Defense Science Board)」は、イランに対する戦術核の使用を支持し、より破壊力があり、放出する放射能の少ないB61─11を使用できると国防総省に提言を行っている。
ネオコンの意向
2007年になって、ブッシュ政権はイランとシリアに対する敵対的姿勢をより明確にするようになった。ブッシュ大統領は1月10日の演説で、イランとシリアがテロリストを支援しているが、イラクのテロリストたちを訓練し、武装させているネットワークをアメリカが壊滅させると述べた。
2006年11月の中間選挙でイラク戦争に対する「ノー」という答えが国民から突き付けられ、ネオコンの影響力が低下したと考えられているものの、ブッシュ大統領の「新イラク戦略」はネオコンの「アメリカ企業研究所(AEI)のフレデリック・ケーガンの考えに基づいている。AEIは、アメリカのイラク戦争を最も熱心に提唱したシンクタンクで、ケーガンはネオコンの雑誌である『ウィークリー・スタンダード』の編集者としてウィリアム・クリストルとともに活動している。イラクへの2万人以上の増派もAEIの発案によるものだ。
ネグロポンテ国家情報長官が辞任した背景にもネオコンの意向があったと見られている。ネグロポンテがイランは次の10年間に核兵器を製造できないと発言したことが、ネオコンやユダヤ・ロビーの逆燐に触れたとされる。モサドなどイスラエルの情報機関は、イランがあと2年で核弾頭を保有するようになるとしきりに訴えるようになった。
2007年にアメリカ中央軍司令官にはウィリアム・ファロンが任命されたが、彼は空爆の専門家であり、アメリカやイスラエルによるイラン攻撃は空爆で行われることが想定されているため適任だとみられている。ファロンはネオコンと近い関係にあり、アメリカとイスラエルの軍産複合体の協力を推進するJINSA(ユダヤ国家安全保障研究所)の2001年の授賞式に功労者として参加した。JINSAはイラク攻撃を推進し、そのためのロビー活動を行っている。ディック・チェイニー副大統領、またジョン・ボルトン元国連大使もJINSAのメンバーだった。
ホワイトハウスもまた「イラン・シリア政策オペレーション・グループ(ISOG:Iran Syria Policy and Operation Group)」を設立し、アメリカのメディアに対してイランの否定的イメージを強調するように訴え、イランの反体制派に資金を与え、さらにイランに関する情報を蒐集するようになった。ISOGで指導的な立場にあるのはやはりネオコンのジャームズ・F・ジェフリー、エリオット・エイブラムズである。
エリオット・エイブラムズはイスラエルのタカ派であったベンジャミン・ネタニヤフの政策立案などを行い、ネタニヤフ首相の下で作成した『完璧な突破口』という報告書では、シリア・イラン・ヒスボラを攻撃し、入植地の拡大を提供していた。エイヴラムズは、2006年7月のイスラエルとヒスボラの戦闘の際にはシリアを攻撃する事を主張した人物だ。
アメリカ政府説
アメリカ政府の説では、アフマディネジャド大統領は1986年に革命防衛隊の特殊部隊に入り、1980年代後半のテロ活動に加わったという。アメリカはアフマディネジャド大統領が、テヘランのアメリカ大使館占拠事件にも関わったと主張しているが、こうしたアメリカ政府の主張は、アメリカ国民のイランに対する憎悪を強めるためのものであることは間違いない。
アフマディネジャド大統領が革命防衛隊員であったことはアメリカのイラン攻撃に絶好の口実を与えている。さらにアメリカ政府は、アフマディネジャド大統領はFBIの指名手配人物であるイマド・ムグニーイェとも関係を持っていたと訴えるようになった。ムグニーイは、1983年にレバノンのベイルートにおけるアメリカ大使館やアメリカ海兵隊兵舎爆撃事件の首謀者の一人とFBIは主張している。
CIAの中東担当官であったロバート・ベアは、アフマディネジャド大統領や革命防衛隊は核兵器を製造することができ、それをイスラエルに向けて発射する可能性があると語る。
アメリカは、イランの核問題に関して国連安保理の動きがその期待通りいかない場合、安保理を無視して単独で、あるいは有志連合で軍事行動を起こす可能性がある。
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