夢七雑録

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31.谷中に遊ぶ

2009-05-18 21:21:25 | 江戸近郊の旅・嘉陵紀行
 文政六年三月十二日(1823年4月22日)、嘉陵は、谷中の天眼寺(台東区谷中1。写真)を訪れ、儒者の春台太宰純の墓に詣でる。表に春台太宰先生之墓と刻み、裏には服部南郭の文を記す。書は松下烏石である。近くに書肆嵩山房の小碑も建っていた。太宰純(1680-1747)は春台と号し、荻生徂徠門下の儒者であった。このあと、玉林寺(台東区谷中1)を訪れ、中村蘭林の墓に詣でる。中村蘭林(1697-1761)は、幕府儒官の室鳩巣の門下で、医者から儒者に転じた人物である。ここに将軍家光が訪れたことがあり、当時は不忍池が見えたので望湖山と名付けたという。次に訪れたのは、領玄寺(台東区谷中4)である。この寺には亨師桜という桜があり、十月の御会式の時に花を咲かせるが、春にも花が咲いていた。その次に、瑞輪寺(台東区谷中4)を訪れる。寺の門から本堂まで200mほどの間、大樹の桜並木が続いていたという。

嘉陵の紀行文に登場するコースは、長い距離を歩くものが多いが、今回は谷中の狭い範囲を巡るだけであり、ちょっとした散策といったところである。

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