新宿山ノ手七福神は昭和初期に作られたものである。今回は、江戸の絵図上を次の順路で巡拝する。善国寺(毘沙門天)―経王寺(大黒天)―厳島神社(弁財天)―法善寺(寿老人)―永福寺(福禄寿)―鬼王神社(恵比寿神)―太宗寺(布袋尊)。
(1)善国寺(新宿区神楽坂5-36)
神楽坂を上がっていくと、坂の途中、左側に善国寺がある。この寺は徳川家の祈願所であり、毘沙門天の寺として庶民の信仰を集めてもいる。毘沙門天は、寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻に現れたとされることから、狛犬の代わりに虎の形の石寅が置かれている。
(2)経王寺(新宿区原町1-14)
神楽坂の上から左に行く(大久保通り)。御箪笥町、山伏町、市ヶ谷柳町を経て、牛込原町に出る(この辺り、古い地名が現在も残っている)。ここに、経王寺がある。牛込は火事が多い土地であったが、ここの大黒天は焼け残ったため、火伏せの大黒天として知られるようになったという。
(3)厳島神社(新宿区余丁町8)
経王寺から西に行き、若松町の分かれ道で左の道をとる。馬ノ首団子坂という、妙な名前の坂を下っていくと、左側に厳島神社、通称抜け弁天がある。この弁財天は、源義家が社殿を建てたのが始まりとされており、また、江戸六弁天の一つでもある。
(4)法善寺(新宿区新宿6-20)
抜弁天の境内を通りぬけると、法善寺がある。この寺の裏手に七面の社があり、かつては境内に桜が多かったため、上野の山に負けない程の花見客が訪れたということだが、それも昔の話で、今は花見の場所ではなくなっている(現在、この寺には、身延山の鎮守である七面明神が祀られている)。
(5)永福寺(新宿区新宿7-11)
法善寺から戻って、抜弁天の斜め前にある永福寺に行く(この寺には、江戸では珍しい五葉の松の大木があったという)。
(6)鬼王神社(新宿区歌舞伎町2-17)
久左衛門坂(職安通りの北側を通る坂)を下って、西大久保村の村道を行くと、稲荷社がある(現在、この稲荷社は鬼王権現を合祀して、稲荷鬼王神社になっている)。
(7)太宗寺(新宿区新宿2-9)
西大久保村を斜めに通る道を歩き、番衆町に出て、成覚寺の前を過ぎ、門前町を右に折れると内藤新宿で、太宗寺がある。この寺は甲州街道に面しており、江戸六地蔵の一つが置かれていた(六地蔵とは、江戸の出入り口に当たる六ヶ所の寺、品川寺、東禅寺、太宗寺、真性寺、霊巌寺に置かれた地蔵尊のことである)。ここからは、甲州街道を通って帰路に就く(現在の最寄り駅は新宿御苑駅だが、新宿駅まで歩いても遠くはない)。