絵葉書により、大正時代の海外出張の旅をたどってきましたが、今回からパリに入ります。そこで、今も昔のままに残るパリの、そして、今は変わってしまったパリの風景を、1924年に現地で買い求めた絵葉書で見ていきましょう。
最初のカードは、トロカデロ庭園から見たエッフェル塔の写真です。この庭園は、象やサイ、雄牛、馬の像がアクセントになっていました。このカードはYVON社が制作したものですが、ポストカードの表示は無く、切手を貼る枠も記されていません。同社は、単なる観光絵はがきではなく、観賞用の写真のカードとして出版したのかもしれません。もっとも、宛名を書いて切手を貼れば、葉書として通用したのでしょうが。
次の絵葉書は、1876年に建てられたトロカデロ宮殿の絵です。この宮殿には6000人収容のホールがあり、地上80mの塔にはエレベータで上がることができました。しかし、1937年に取り壊されて、現在のシャイヨ宮が建てられました。なお、この絵葉書の出版は、飛び出す絵本を出版したことでも知られるラファエロ・タック&サン社(TUCK)ですが、この会社はポストカードの普及にも熱心な会社でした。
上の絵葉書は、1836年に建てられたエトワール広場の凱旋門の上からの展望写真です。右側のクレベール通りの先に二本の塔が見えていますが、トロカデロ宮殿の塔です。また、エッフェル塔の左側に、微かに丸い輪のようなものが見えますが、1900年のパリ万博の際にシュフラン通りに建てられた、ラ・グラン・ルー(大観覧車)のようです。何れも後に取り壊されて、現在はありません。