ゆるい感じで。

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困惑のサイラーグ[5](ゼロシル)

2013-08-16 23:22:20 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
*これはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。捏造と妄想100%ですので、苦手な方はお戻り下さいませ。

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「神聖樹の種など、貴方が用意させたのですか? ゼロス」

そう問われて、僕は苦笑した。
「いえ、僕は何もしていません。驚きましたが、あの種は偶然隣国の善意によって寄贈されたようです」
「まあ、サイラーグはよい隣人をお持ちですわね」
くすくすと笑いながら言う海王様は心底楽しそうに見えた。
「全くです。仕事のしがいがあるというものですね」
肩をすくめて見せれば、彼女はにやり、と唇の端を吊り上げた。

「...さて、それでは私はゼラスとお茶でもしてきますわ。貴方の仕事ぶりを教えてあげる約束がありますもの」
「か、海王様...?」
急に嫌な汗が吹き出した。
「うふふ。女子会ですわ、女子会!」
上機嫌な海王様は青いドレスの裾を翻して行ってしまった。

そもそも魔族に性別など無いはずなのだが、獣王ゼラス様と海王ダルフィン様は人間に擬態する時女性の形を取る。
──それが女子会とは......
全く、上司の考えることはよく分からないのだった。

****************

「竜族にエルフ族だなんて、思い付きませんでしたわ!」
シルフィールさんは興奮気味にその場を行ったり来たりし始めた。
「おお、でも竜族やエルフ族にあてなどありませんぞ...」
「竜族は難しいですが、ライゼール領内にいくつかエルフの村があったはずです。すぐに遣いを」
細かな指示を人々に出しながら、彼女は思考を巡らせる。
僕はそれを眺めながら、時折口を挟んだ。
「エルフ族は人間嫌いが多いですけど、どうするつもりで?」
「出来る限り礼を尽くしましょう。こちらから出向き、謝礼も払わなくては。知恵を貸して頂くわけですから」
「そうですね。こちらが高圧的な態度で出たらきっと反発を招くでしょうねえ」
「エルフ族は気位が高いですからな」
街の長老が口を挟んだ。
「誇り高い一族です。それに、人間が彼らを虐待した歴史を忘れてはいけません」
ぴしりと言ったシルフィールさんは、いつもよりも凛々しく人々と討論を交わしていく。
「では、どのくらいの謝礼を払うつもりで?」
「今はあまり豊かではありませんからな...」
たかが木の種の真偽。だが、サイラーグには聖なる木であり再興の要だろう。彼女たちはどこまでも真剣だった。

「ゼロスさん」
話し合いが一段落ついてから、シルフィールさんに呼び止められた。
彼女の笑顔は今までに見たことが無い程明るい。
「素晴らしい案をありがとうございます」
「いえいえ、ただ思いついたことを言っただけですから」
首を振った僕に、彼女も首を振った。
「それでも、貴方の案で希望が見えました。もしこの種が本物だったら...」
そこまで言って、「種」を握り締めて黙り込んだ彼女から、えもいわれぬ正の感情が溢れ出し、僕は思わず身を引きそうになった。

「もしかしたら偽物かもしれませんよ?誰かの悪戯とか、ぬか喜びさせようとする誰かの陰謀とか」
その可能性をつついてやれば、彼女の喜びの感情は少し収まった。代わりに「不安」がちらりと漂う。
「そうですわね......でも、こんな風にわくわくしたのは久しぶりなんです」
彼女の瞳がきらきらと輝いた。

「...サイラーグが壊滅してから、色んなことがありました」
「そうでしょうね」
この街に起きた悲劇は大体把握している。そこに魔道士リナ=インバースが関わっていることも。
冥王様によってこの街が死霊都市と化したことは記憶に新しい。
「でも、この街はまだ生きている。また元気になれる。フラグーンがあれば皆の心の支えになるはずなんです」
彼女の目の輝きが、僕には少し眩しすぎる。僕は気付かれないよう視線を少し逸らした。
「いえ、私の支えになって欲しいんです。フラグーンに」
「...思い入れがあるみたいですね」
そんな話をしてくれると言うことは、少しは心を許してくれたということだろうか。
「ええ。幼い頃から、フラグーンは私とともにあったんです。あの事件が起こるまでは...」
どこか遠くを見つめる彼女は、幸福とともに悲しみを漂わせている。
僕は、それを見つめながら、彼女になんと声をかけるべきか迷った。

「あら、ごめんなさい。こんな話をされても困りますよね」
手を口に当てて苦笑した彼女は、ぺこりと頭を下げて行ってしまった。
「…本物だと良いですね」
彼女を見送って小さく呟いた僕は、そのままその場を立ち去った。

──本物だと良いですね。そしたら、それが芽を出した瞬間に、貴女の目の前で叩き潰して差し上げましょう。
彼女の笑顔が絶望に染まる瞬間を想像して、僕は口元が綻ぶのを抑えることが出来なかった。


続く

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次回に続く!先が見えない!(笑)