ガウリナSSです。
四人旅なう!
ガウリイがちょっと変態くさいので注意。
-------------------------------------------------
「ゼル、その文章は暗号になってるかも。ちょっと不自然だし」
「そうか、そうだな。だとすると...」
「ガウリイさん、次『ま』ですよ」
「ま、ま、魔族!でどーだ?」
あたしたちは四人で一つの机を囲んでいた。
あたしはゼルガディスと向かい合って魔道書を解読し、隣ではガウリイとアメリアが向かい合ってなにやら遊んでいる。
──まったく、遊んでるならどこか邪魔にならないとこに行って欲しいもんである。こっちは集中してるのに。
「リナ、この一文はどう思う?」
ゼルが指し示した文章を、身を乗り出してしげしげと見つめる。
「うぅん…ちょっと分かんないわね」
降参、とばかり肩を竦めてみせると、あたしは机の上のティーカップを手に取った。
うーん、爽やかな後味が素晴らしい。宿自慢の紅茶らしい。
「アメリア、次正義の『ぎ』な」
「あ~!それ私が言いたかったのに!ガウリイさんのいじわる」
「こーゆーもんは先に言ったもん勝ちだろ」
なんとも楽しそうな隣の二人に目をやると、二人はルールが特殊なしりとりに熱中していた。
「楽しそうね」
「...混ざるか?」
「結構よ」
ゼルの低い呟きを一蹴する。
「じゃ、ゼル、続きやりましょ」
「アメリア、次は『る』だ」
その時、ふと机の下でガウリイの左手にあたしの右手が触れた。
──あ。
偶然だ。あたしは何も言わなかった。ガウリイも、何も言わずにアメリアと話を続けている。
だけど、手は触れ合ったまま。
なんとなく今更手を引っ込め辛くて、そのままちらりとガウリイに目をやると、ガウリイは何も表情に出してはいなかった。
「ルビーアイ!」
「あーなんか懐かしい響きだなそれ」
いつものようにのほほんと、アメリアとしりとりを続けている。
──そっちがその気なら。
「......あ、ゼル。それ、力ある言葉(カオスワーズ)のことじゃないかしら」
しれっと言ってゼルとの会話に戻った。手の感触は気になるが、無視して魔道書に集中する。
と。
するり、と彼の手が動いた。ごく自然に、あたしの手を捕まえる。
──!
声に出さずに驚いて、あたしは思わず身を竦ませた。
「?どうかしたか?」
ゼルが怪訝な顔をした。
「な、なんでもないっ」
「...なら良いが」
──くううっ、ガウリイの奴!どーゆーつもりか分かんないけどっ
ガウリイはポーカーフェイスのままあたしの手を捕まえていた。それも、凄く軽い力で。あたしが抵抗すれば、すぐ振り払えてしまうような。
それでもあたしは、振り払えなかった。何でかって...そりゃ、なんとなく。
アメリアやゼルに見られたら、と思うと変な風にどきどきする。いくら机の下だからって、覗いたらバレバレだ。
ガウリイにはそんな緊張とか無いのだろうか。余裕な横顔が腹立たしい。
...くらげだからか。くそう、軟体動物め...
「リナ、ちょっと顔赤くない?大丈夫?」
ふいにこちらを向いたアメリアに指摘されて、あたしは内心飛び上がった。
「へ?そ、そんなこと無いわよ」
思わず言葉がぎこちなくなる。
色々と良く気がつくアメリアに日頃は感謝しているが、今日ばかりは恨めしい。
「ほんとだ。お前さん、熱でもあるのか?」
なーんにも知らないような顔でそんなことを言ってくるガウリイを、あたしは思わずジト目で睨んだ。
──あんったのせいでしょーがっ!
「気分は悪くないから平気よ平気!」
腹立ち紛れにガウリイの手をギュッと握り返してやると、ひらりと逃げられた。
──あ、なんでよ。
一瞬離れた手はまたあたしの手にそっと添えられる。ふわりと感じる体温。心臓の音がさっきからうるさい。──誰のよ!ってあたしのか。
「まあ、無理すんなよ」
くしゃりと頭を反対の手で撫でられて、なんとも言えない気分。理解不能だ。あたしは思考を放棄した。
「...リナ、大丈夫なら続きを頼む」
ナイスなタイミングでゼルに声を掛けられて、あたしはそれに乗じて魔道書に目を向けた。
しばらくそのままゼルと話していると、急に手の甲をくすぐられる。
──子供かあんたは。
今度は反応なんてしてやらない。無視を決め込む。
...と、ガウリイの指がひょい、と動いて、あたしの指と絡んだ。
──うひゃあっ
あたしのとは全然違う、ガウリイの指。
あったかくて、ちょっとだけ骨張ってる。その指があたしの指と絡んだまま、優しく力を込めてくる。
──...ああ、もう。無理。耐えらんない。
がたん、と音を立ててあたしは立ち上がった。その拍子に二人の繋がりはぶつりと切れる。
「あ、あたしちょっとお手洗い行ってくる!」
「あ、じゃあわたしもー」
何も知らないアメリアと、あたしはひたすら敵前逃亡したのだった。
女二人が出て行ってから、ゼルガディスが小さくため息をついた。
「...あんまりいじめてやるな」
「あれ、気付かれてたのかあ」
さすがゼルである。あははと笑って頭をかくと、ゼルは眉間を押さえた。
「アメリアは気付いてなかったようだが...」
「いやーリナの反応があんまり面白かったから、つい」
──そう、ついやりすぎた。手が触れただけで真っ赤になって固まるリナがおかしくて......可愛らしくて。
「旦那も大概人が悪いな」
「ほめるなよ~ゼルガディスー」
「ほめとらんわ!」
それからしばらく、オレがリナの攻撃呪文の的になったのは、まあ、仕方ない...のか?
終わり
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いつになく黒いガウリイを書いてしまいました......。なんだこれ!ほんとにガウリイかっ!?
四人旅なう!
ガウリイがちょっと変態くさいので注意。
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「ゼル、その文章は暗号になってるかも。ちょっと不自然だし」
「そうか、そうだな。だとすると...」
「ガウリイさん、次『ま』ですよ」
「ま、ま、魔族!でどーだ?」
あたしたちは四人で一つの机を囲んでいた。
あたしはゼルガディスと向かい合って魔道書を解読し、隣ではガウリイとアメリアが向かい合ってなにやら遊んでいる。
──まったく、遊んでるならどこか邪魔にならないとこに行って欲しいもんである。こっちは集中してるのに。
「リナ、この一文はどう思う?」
ゼルが指し示した文章を、身を乗り出してしげしげと見つめる。
「うぅん…ちょっと分かんないわね」
降参、とばかり肩を竦めてみせると、あたしは机の上のティーカップを手に取った。
うーん、爽やかな後味が素晴らしい。宿自慢の紅茶らしい。
「アメリア、次正義の『ぎ』な」
「あ~!それ私が言いたかったのに!ガウリイさんのいじわる」
「こーゆーもんは先に言ったもん勝ちだろ」
なんとも楽しそうな隣の二人に目をやると、二人はルールが特殊なしりとりに熱中していた。
「楽しそうね」
「...混ざるか?」
「結構よ」
ゼルの低い呟きを一蹴する。
「じゃ、ゼル、続きやりましょ」
「アメリア、次は『る』だ」
その時、ふと机の下でガウリイの左手にあたしの右手が触れた。
──あ。
偶然だ。あたしは何も言わなかった。ガウリイも、何も言わずにアメリアと話を続けている。
だけど、手は触れ合ったまま。
なんとなく今更手を引っ込め辛くて、そのままちらりとガウリイに目をやると、ガウリイは何も表情に出してはいなかった。
「ルビーアイ!」
「あーなんか懐かしい響きだなそれ」
いつものようにのほほんと、アメリアとしりとりを続けている。
──そっちがその気なら。
「......あ、ゼル。それ、力ある言葉(カオスワーズ)のことじゃないかしら」
しれっと言ってゼルとの会話に戻った。手の感触は気になるが、無視して魔道書に集中する。
と。
するり、と彼の手が動いた。ごく自然に、あたしの手を捕まえる。
──!
声に出さずに驚いて、あたしは思わず身を竦ませた。
「?どうかしたか?」
ゼルが怪訝な顔をした。
「な、なんでもないっ」
「...なら良いが」
──くううっ、ガウリイの奴!どーゆーつもりか分かんないけどっ
ガウリイはポーカーフェイスのままあたしの手を捕まえていた。それも、凄く軽い力で。あたしが抵抗すれば、すぐ振り払えてしまうような。
それでもあたしは、振り払えなかった。何でかって...そりゃ、なんとなく。
アメリアやゼルに見られたら、と思うと変な風にどきどきする。いくら机の下だからって、覗いたらバレバレだ。
ガウリイにはそんな緊張とか無いのだろうか。余裕な横顔が腹立たしい。
...くらげだからか。くそう、軟体動物め...
「リナ、ちょっと顔赤くない?大丈夫?」
ふいにこちらを向いたアメリアに指摘されて、あたしは内心飛び上がった。
「へ?そ、そんなこと無いわよ」
思わず言葉がぎこちなくなる。
色々と良く気がつくアメリアに日頃は感謝しているが、今日ばかりは恨めしい。
「ほんとだ。お前さん、熱でもあるのか?」
なーんにも知らないような顔でそんなことを言ってくるガウリイを、あたしは思わずジト目で睨んだ。
──あんったのせいでしょーがっ!
「気分は悪くないから平気よ平気!」
腹立ち紛れにガウリイの手をギュッと握り返してやると、ひらりと逃げられた。
──あ、なんでよ。
一瞬離れた手はまたあたしの手にそっと添えられる。ふわりと感じる体温。心臓の音がさっきからうるさい。──誰のよ!ってあたしのか。
「まあ、無理すんなよ」
くしゃりと頭を反対の手で撫でられて、なんとも言えない気分。理解不能だ。あたしは思考を放棄した。
「...リナ、大丈夫なら続きを頼む」
ナイスなタイミングでゼルに声を掛けられて、あたしはそれに乗じて魔道書に目を向けた。
しばらくそのままゼルと話していると、急に手の甲をくすぐられる。
──子供かあんたは。
今度は反応なんてしてやらない。無視を決め込む。
...と、ガウリイの指がひょい、と動いて、あたしの指と絡んだ。
──うひゃあっ
あたしのとは全然違う、ガウリイの指。
あったかくて、ちょっとだけ骨張ってる。その指があたしの指と絡んだまま、優しく力を込めてくる。
──...ああ、もう。無理。耐えらんない。
がたん、と音を立ててあたしは立ち上がった。その拍子に二人の繋がりはぶつりと切れる。
「あ、あたしちょっとお手洗い行ってくる!」
「あ、じゃあわたしもー」
何も知らないアメリアと、あたしはひたすら敵前逃亡したのだった。
女二人が出て行ってから、ゼルガディスが小さくため息をついた。
「...あんまりいじめてやるな」
「あれ、気付かれてたのかあ」
さすがゼルである。あははと笑って頭をかくと、ゼルは眉間を押さえた。
「アメリアは気付いてなかったようだが...」
「いやーリナの反応があんまり面白かったから、つい」
──そう、ついやりすぎた。手が触れただけで真っ赤になって固まるリナがおかしくて......可愛らしくて。
「旦那も大概人が悪いな」
「ほめるなよ~ゼルガディスー」
「ほめとらんわ!」
それからしばらく、オレがリナの攻撃呪文の的になったのは、まあ、仕方ない...のか?
終わり
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いつになく黒いガウリイを書いてしまいました......。なんだこれ!ほんとにガウリイかっ!?