注:これはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想と捏造が120%含まれてますので、苦手な方はお戻りください。
(8/23:ちょっとだけ加筆修正加えてます^^)
-------------------------------------------------
こんなにわくわくしたのは久しぶりで、だからかその日は懐かしい夢を見た。
リナさんやガウリイ様と旅したときの夢を。
ほんの数年前のことなのに、遠い日々のように感じるのは、あまりにも今の生活とギャップがあるからだろうか。
ぼんやりとあの頃を思い出すと、今でも胸が熱くなる。そして、少しだけ切なさで泣きたくなる。
──ガウリイ様。
彼への想いは、結局届かなかった。優しいあの人の隣には、いつも彼女がいたから。
吹っ切れたつもりだったのに、やっぱり忘れられない。
──なんて未練がましいのかしら。自分から諦めたくせに。
告白など出来なかった。だって、結果の予想がついたから。
...だけど。
リナさんだったらどうしたかしら。彼女だったら、きっと最後まで諦めない。それが私と彼女の違いなのだ。
...はう。
思ったより大きな溜め息が出て、私は苦笑してベッドから起きた。まだ朝と言うには早い時間だ。
水でも飲もうかとパジャマに一枚上着を羽織って立ち上がる。
──ん?
玄関の外に誰かの気配を感じた。こんな時間に、誰だろうか。
だが、その気配の主は家の前をすたすたと通り過ぎてしまう。
思わず、私は玄関のドアを開けていた。
「……あのっ」
小さな呼びかけに、彼はくるりと振り向いた。
「シルフィールさん。どうしたんです?こんな時間に」
ゼロスさんだった。いつもと全く変わらぬ様子で、いつもと同じ黒い神官服。
「そちらこそ、どうしてこんな時間にこんなところに?」
私の質問に彼はにこりと笑った。
「嫌ですねえ、僕の返事は分かってるでしょう?」
「...秘密、ですか」
私の答えに彼は満足げにうなずいた。
「正解です。何か不満でも?」
「いえ、別に」
「おや」
私の返事に、彼は初めて驚いた顔をした。
「いつもなら不誠実だ、とかなんとか仰るのに」
私は肩をすくめてみせた。
「今日は良いんです。気になりますし、はっきり言ってちょっと怪しいですけど...」
彼が何者で何が目的か、まだ私には推測も出来ていない。
「でも、誰にも人に言いたくないことはありますし」
「ふむ」
「...それに」
「それに?」
「教えてくれる気が全く無いなら、いくら聞いたって無駄ですからね。今日はそんな無駄な問答を繰り返す気になれないので」
少し捨て鉢な言い方になってしまったのは仕方がない。こんな時間だし、こんなタイミングだから。
──気を悪くしたろうか...?
ちらりと彼を見やると、彼は顔を覆って震えていた。
「え...」
「くく…あっはっはっ!面白い人ですね、シルフィールさん。あなた、いつも無駄だと分かって僕に色々聞いたり怒ったりしてたんですね」
そう言われるとちょっと微妙な気分になるのだけれど。
「まあ...そうですわね」
爆笑していたゼロスさんは、少しだけ真面目な顔をした。
「一つだけ教えて差し上げましょう。シルフィールさん」
そのとき小さく風が吹いて、彼のマントがひらりと揺れた。
「僕は毎晩、僕にとっての神に祈ってるんです」
「あなたにとっての?」
「...ええ」
そう言って、彼は私の肩にそっと触れた。
「なーんて、嘘です」
「へ?」
虚を突かれて目を丸くすると、彼はくすくすと笑った。
「ちょっと夜の散歩をしていただけです」
「......」
なにか言う気にもなれない。
「そんな呆れた顔しないで下さいよー。場を和ます冗談、て奴です」
冗談、とはどこまでなのか。「夜の散歩」の方がよっぽど嘘臭い。
「今のじゃ和みません!」
思わず叫ぶと、ゼロスさんはそうそれ、と笑う。
「やっと本調子みたいですね」
「え...」
「さっきはちょっと落ち込んでらしたみたいですし」
やっぱり気付かれていたか。そして...
──もしかして、彼なりに元気づけてくれた?
「それでは、ごきげんよう」
ゼロスさんは上機嫌に言ってひらひらと手をふった。
暗闇に消えていく後ろ姿を、私はしばらく黙って見送った。
「...冷たい手でしたわね」
彼の白い手袋と、私の上着ごしにでも、彼の手がとても冷えていたのが分かった。
頭の中で色々な考えが浮かんでは消えていく。
「……ガウリイ様」
ぽつり、と意図せず呟いた言葉は、暗闇に吸い込まれるように消えた。
続く
-------------------------------------------------
次回に続きます!
(8/23:ちょっとだけ加筆修正加えてます^^)
-------------------------------------------------
こんなにわくわくしたのは久しぶりで、だからかその日は懐かしい夢を見た。
リナさんやガウリイ様と旅したときの夢を。
ほんの数年前のことなのに、遠い日々のように感じるのは、あまりにも今の生活とギャップがあるからだろうか。
ぼんやりとあの頃を思い出すと、今でも胸が熱くなる。そして、少しだけ切なさで泣きたくなる。
──ガウリイ様。
彼への想いは、結局届かなかった。優しいあの人の隣には、いつも彼女がいたから。
吹っ切れたつもりだったのに、やっぱり忘れられない。
──なんて未練がましいのかしら。自分から諦めたくせに。
告白など出来なかった。だって、結果の予想がついたから。
...だけど。
リナさんだったらどうしたかしら。彼女だったら、きっと最後まで諦めない。それが私と彼女の違いなのだ。
...はう。
思ったより大きな溜め息が出て、私は苦笑してベッドから起きた。まだ朝と言うには早い時間だ。
水でも飲もうかとパジャマに一枚上着を羽織って立ち上がる。
──ん?
玄関の外に誰かの気配を感じた。こんな時間に、誰だろうか。
だが、その気配の主は家の前をすたすたと通り過ぎてしまう。
思わず、私は玄関のドアを開けていた。
「……あのっ」
小さな呼びかけに、彼はくるりと振り向いた。
「シルフィールさん。どうしたんです?こんな時間に」
ゼロスさんだった。いつもと全く変わらぬ様子で、いつもと同じ黒い神官服。
「そちらこそ、どうしてこんな時間にこんなところに?」
私の質問に彼はにこりと笑った。
「嫌ですねえ、僕の返事は分かってるでしょう?」
「...秘密、ですか」
私の答えに彼は満足げにうなずいた。
「正解です。何か不満でも?」
「いえ、別に」
「おや」
私の返事に、彼は初めて驚いた顔をした。
「いつもなら不誠実だ、とかなんとか仰るのに」
私は肩をすくめてみせた。
「今日は良いんです。気になりますし、はっきり言ってちょっと怪しいですけど...」
彼が何者で何が目的か、まだ私には推測も出来ていない。
「でも、誰にも人に言いたくないことはありますし」
「ふむ」
「...それに」
「それに?」
「教えてくれる気が全く無いなら、いくら聞いたって無駄ですからね。今日はそんな無駄な問答を繰り返す気になれないので」
少し捨て鉢な言い方になってしまったのは仕方がない。こんな時間だし、こんなタイミングだから。
──気を悪くしたろうか...?
ちらりと彼を見やると、彼は顔を覆って震えていた。
「え...」
「くく…あっはっはっ!面白い人ですね、シルフィールさん。あなた、いつも無駄だと分かって僕に色々聞いたり怒ったりしてたんですね」
そう言われるとちょっと微妙な気分になるのだけれど。
「まあ...そうですわね」
爆笑していたゼロスさんは、少しだけ真面目な顔をした。
「一つだけ教えて差し上げましょう。シルフィールさん」
そのとき小さく風が吹いて、彼のマントがひらりと揺れた。
「僕は毎晩、僕にとっての神に祈ってるんです」
「あなたにとっての?」
「...ええ」
そう言って、彼は私の肩にそっと触れた。
「なーんて、嘘です」
「へ?」
虚を突かれて目を丸くすると、彼はくすくすと笑った。
「ちょっと夜の散歩をしていただけです」
「......」
なにか言う気にもなれない。
「そんな呆れた顔しないで下さいよー。場を和ます冗談、て奴です」
冗談、とはどこまでなのか。「夜の散歩」の方がよっぽど嘘臭い。
「今のじゃ和みません!」
思わず叫ぶと、ゼロスさんはそうそれ、と笑う。
「やっと本調子みたいですね」
「え...」
「さっきはちょっと落ち込んでらしたみたいですし」
やっぱり気付かれていたか。そして...
──もしかして、彼なりに元気づけてくれた?
「それでは、ごきげんよう」
ゼロスさんは上機嫌に言ってひらひらと手をふった。
暗闇に消えていく後ろ姿を、私はしばらく黙って見送った。
「...冷たい手でしたわね」
彼の白い手袋と、私の上着ごしにでも、彼の手がとても冷えていたのが分かった。
頭の中で色々な考えが浮かんでは消えていく。
「……ガウリイ様」
ぽつり、と意図せず呟いた言葉は、暗闇に吸い込まれるように消えた。
続く
-------------------------------------------------
次回に続きます!