ゆるい感じで。

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むかしばなし。(モブ/未来IF)

2020-12-12 01:03:15 | スレイヤーズ二次創作
久しぶりにワンライに参加させて頂いたので……

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「むかーしむかし、ある所に、それはもう恐ろしく強い魔道士、リナ=インバースという女がおってな……」
「おじいちゃん、それ話すの何回目~?」
 しんしんと積もる雪景色を窓から眺めながら。幼い少女は鼻の頭を赤くして、いつもと同じ昔話を始めた祖父に頬を膨らませる。――どうせまた、荒唐無稽な作り話をするつもりなのだ。こちらをちっちゃい子供だと思って。
 少女は窓にはあっと息を吐いて、曇ったガラスに指を滑らせ落書きをする。
「今度は強すぎてドラゴンにまで逃げられた話? それとも、強い魔族を何匹もぶち倒した話?」
 呆れたように言って。それでも、楽しげに話をする祖父の柔らかな声を聞くのは嫌いではないから。少女は振り返り、祖父の居る暖炉の前に並んで座り込んだ。ぱちぱちと燃える小さな火の前に手をかざすと、冷え切った指先がじわじわと熱を帯びていく。
「そうさなあ、まだ話していない事があったかな……私の爺様から聞いた話だからなあ」
「おじいちゃんのおじいちゃんなの?」
「そうさ。だから、私も知らない事が沢山あるんだよ」
 それは初耳だ。それならこのリナ=インバース冒険譚は、我が家に代々伝わる作り話なのか。――それを口にしたら、「これは作り話じゃない! 昔話だ!」と怒られそうなので、少女は黙っておくことにする。


「よし、それならこれにしよう。――むかーしむかし、あるところに……」
「必ずそこから入るんだよなあ……」
 祖父のいつもの口上に少しだけ眠くなりながら。長い毛足の絨毯の上で身体を縮こまらせて、少女は今日もまた見知らぬ少女の冒険譚を耳にする。いつもと少しだけ違ったのは、その話に出て来た天才魔道士の相棒が、いつもの金髪の剣士ではなくて、悪の女黒魔道士みたいな格好をした高笑いの女であったことだった。



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