こちらもワンライより!
ランツ君一人称で、二部終了後設定。
ガウリイについて語るランツ。思い出話的な。
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「おう、ランツじゃねえか。お前、まだ死んでないとはしぶといねえ」
ふと、昔馴染みの傭兵仲間と街で出くわした。相変わらず口が悪い奴だが、根は悪い奴ではない。久しぶりに会った男の顔に変わりが無くて、俺は嬉しくなった。
「お前もな」
にやりと笑って言い返す。
「はっは、ちげえねえや!」
気にした風もなく笑った男は、俺を酒場に誘うのだった。
「俺にはコレがあるからな」
懐から取り出した巾着袋の中身を、俺はそいつに見せてやった。俺の大事な御守り代わり。こいつのおかげで、俺は今までなんとかやってきたのだ。
「ん、なんだそりゃ? 女からの貰いもんかあ?」
「いんや、俺の心の兄キから買ったんだ」
「はあ?」
得意げに言い切る俺に、相手は呆気にとられたように口を開ける。ついでに首を傾げる。
そんな男に、俺は巾着袋ごとそれを手渡してやった。そいつは中身を取り出して、しげしげと観察する。
しばらくして、男は何かに気づいたように目を丸くした。
――そう、その反応が嬉しいのだ。
「って、なんだこれ! 金貨が真っ二つじゃねえか…!」
「すげえだろう。兄キが剣で斬ったんだ」
にやり、と笑って言ってやる。
そう、それはあの金髪剣士が俺にくれた代物だった。――ガウリイの兄キ、今頃元気にしているだろうか。まだ、あの嬢ちゃんと一緒にいるのだろうか。……たぶんきっとそうだろう。
脳裏に浮かぶ、あの二人組の後ろ姿。
「剣で、か……。そりゃ、相当な腕がねえと無理だな」
酒場のカウンターに並べられた、真ん中辺りで半分にされた金貨。綺麗な切り口に、剣を扱う者なら皆息を呑むだろう。
「だろうだろう! すげえ男だったんだよ、あの兄ちゃんは……」
「お前が胸張ってどうすんだよ」
呆れた様子の男に、俺は思わず苦笑した。
「はは、だよな」
――でも。
一見とっぽい兄ちゃんにしか見えなかったあの男の、剣の腕を。一目見た瞬間に、俺は惚れたのだ。剣士としてのあの男に。
そんな男に、一瞬でも認められた喜び。「リナを頼む」と、極限状態で大事な相棒の命を託されたという事実。
あの日。サイラーグでの出来事。
俺にとって、忘れる事の出来ない経験だった。
「そいつが、俺に『諦めるな』って言ってるような気がするんだ。簡単に死ぬんじゃねえ、生きろってな」
「ほおお……なかなかカッコイイ事を言うようになったじゃねえか、ランツ君よう」
にやにやと笑う男に、俺はちょいと気恥ずかしくなって、頭を掻いた。
「へへ、惚れたかあ?」
「惚れた惚れた! じゃあ、そんなカッコイイランツ君に今日は奢って頂こうかな」
「オイオイっ、そりゃねえぜ!」
慌てる俺に、男は冗談だと笑う。
酒場の明かりを受けてきらりと光る真っ二つの金貨。それを眺めて飲む酒は、なかなか悪くないのだった。
おわり
ランツ君一人称で、二部終了後設定。
ガウリイについて語るランツ。思い出話的な。
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「おう、ランツじゃねえか。お前、まだ死んでないとはしぶといねえ」
ふと、昔馴染みの傭兵仲間と街で出くわした。相変わらず口が悪い奴だが、根は悪い奴ではない。久しぶりに会った男の顔に変わりが無くて、俺は嬉しくなった。
「お前もな」
にやりと笑って言い返す。
「はっは、ちげえねえや!」
気にした風もなく笑った男は、俺を酒場に誘うのだった。
「俺にはコレがあるからな」
懐から取り出した巾着袋の中身を、俺はそいつに見せてやった。俺の大事な御守り代わり。こいつのおかげで、俺は今までなんとかやってきたのだ。
「ん、なんだそりゃ? 女からの貰いもんかあ?」
「いんや、俺の心の兄キから買ったんだ」
「はあ?」
得意げに言い切る俺に、相手は呆気にとられたように口を開ける。ついでに首を傾げる。
そんな男に、俺は巾着袋ごとそれを手渡してやった。そいつは中身を取り出して、しげしげと観察する。
しばらくして、男は何かに気づいたように目を丸くした。
――そう、その反応が嬉しいのだ。
「って、なんだこれ! 金貨が真っ二つじゃねえか…!」
「すげえだろう。兄キが剣で斬ったんだ」
にやり、と笑って言ってやる。
そう、それはあの金髪剣士が俺にくれた代物だった。――ガウリイの兄キ、今頃元気にしているだろうか。まだ、あの嬢ちゃんと一緒にいるのだろうか。……たぶんきっとそうだろう。
脳裏に浮かぶ、あの二人組の後ろ姿。
「剣で、か……。そりゃ、相当な腕がねえと無理だな」
酒場のカウンターに並べられた、真ん中辺りで半分にされた金貨。綺麗な切り口に、剣を扱う者なら皆息を呑むだろう。
「だろうだろう! すげえ男だったんだよ、あの兄ちゃんは……」
「お前が胸張ってどうすんだよ」
呆れた様子の男に、俺は思わず苦笑した。
「はは、だよな」
――でも。
一見とっぽい兄ちゃんにしか見えなかったあの男の、剣の腕を。一目見た瞬間に、俺は惚れたのだ。剣士としてのあの男に。
そんな男に、一瞬でも認められた喜び。「リナを頼む」と、極限状態で大事な相棒の命を託されたという事実。
あの日。サイラーグでの出来事。
俺にとって、忘れる事の出来ない経験だった。
「そいつが、俺に『諦めるな』って言ってるような気がするんだ。簡単に死ぬんじゃねえ、生きろってな」
「ほおお……なかなかカッコイイ事を言うようになったじゃねえか、ランツ君よう」
にやにやと笑う男に、俺はちょいと気恥ずかしくなって、頭を掻いた。
「へへ、惚れたかあ?」
「惚れた惚れた! じゃあ、そんなカッコイイランツ君に今日は奢って頂こうかな」
「オイオイっ、そりゃねえぜ!」
慌てる俺に、男は冗談だと笑う。
酒場の明かりを受けてきらりと光る真っ二つの金貨。それを眺めて飲む酒は、なかなか悪くないのだった。
おわり
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