出勤すると会社の机の上に冊子が置いてありました。
デクノボーオーナーの山崎司朗さんが書いた自然栽培で米作りをした記録です。
5年前、福岡正信著書の「わら1本の革命」と出会い、この本がきっかけで自然農法に毎年挑戦しています。
昨年の夏も紹介しましたが、今年も試行錯誤しながら新たな栽培方法を加え、米作りを実践。 先日収穫を終えたようです。その記録を振り返ってみましょう。
8アールの田んぼは原則「無肥料」「無農薬」「無除草」で行われます。植えた品種は「ひとめぼれ」と「陸羽132号」。岩手では「ひとめぼれ」は定番ですが、店頭ではあまり見かけない「陸羽132号」について説明しましょう。
大正10年に秋田県で日本初の人工交配によってできた優良水稲で、昭和初期冷害に強い品種ということで宮沢賢治が推奨し、昭和4年から27年間作付け面積がトップだった品種です。賢治ゆかりの品種なのです。
この地方では秋に耕起するのですが4月に2回行ったようです。耕起の時期が収穫に大きく作用する。土を乾かすと収穫量が多いという「乾土効果」を得るためです。
そして、青森の「奇跡のりんご」を生んだ木村氏のやり方で、表土を軽く田植えができる程度に掻く方法を取り入れ、5月7日に町内で一番乗りで田植えをしています。今年は15日頃植えるよう指導があったにもかかわらず早めに植えたのは、今年SRI農法を取り入れたからです。
SRI農法とは岩澤信夫著書の「究極の田んぼ」という本で紹介されている自然農法です。
マダガスカルで生まれた画期的な米増収技術で、苗が小さいうちに植えること、苗は間隔を空けて粗植すること、水田は水分を保ちつつ湛水しないことの三つが原則です。三つ目がポイントです。
そこで4アールの田んぼに陸羽132号の苗を1本か2本で30から40センチ間隔で10センチ未満の長さで植え、田植えをしてかっちゃくするまで水をかけて、田んぼの水を抜きます。
田植え時期は水で満水になっている田んぼの中に1枚だけ干からびた田んぼがあり、異様な光景だったようです。さすがに心配になり6月までは干からびない程度に湛水したようです。
夏は昨年通り無除草を徹底し、秋をむかえます。
9月13日の稲刈りには「陸羽132号」の方が「ひとめぼれ」よりも30センチ長く、穂には200粒の米がついたそうです。最終的には「陸羽132号」の苗2箱から籾入り袋で5袋半。「ひとめぼれ」の苗7箱から5袋採れたそうです。今年の実験では「陸羽132号」をSRI農法で育てると収穫量が上がった結果になりました。天日干しで脱穀した新米の味はひとめぼれよりも美味しかったそうです。
最後に従来の米作りから自然農法で栽培する難しさが書いてあります。
周囲の人たちに褒められながらも真似できない!と言われ、それでも美味しい米を作る楽しみを味わう。
農薬の悪影響を危惧し、自然と共存しながら米作りを追及する、この米作りそのものが山崎さんの哲学です。