猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

遠い国から来た男。

2013年03月10日 11時00分00秒 | ゴンザも隣人!?
 
 
久々、この方が主役です。
 
 
 
その男の名は『バーボンソーダ』。

真冬のNY。

アムステルダムAveと、
81stがクロスする交差点から、
その名は由来する。

一角にあるBARの、
片隅の席で、彼が何度も頼んだ飲み物。

それが…
バーボンソーダだったのだ。

「バーボンソーダをくれ」

注文をとりにきた店員が、
どこか、胡散臭げに彼の目を覗きこもうとしたのは。

…どんな理由からかはわからない。

ただ、そこで出てきたバーボンソーダは、奇妙に薄く、
瓶に詰められていたのも風変わりだったと、
彼は、遠い目をして語る。

「あれは…そう。俺がよく眺めた、
あの子の身体によくフィットした、
赤と白のドレスのデザインに似ていたな」

と。

「俺はただ、
バーボンソーダが飲みたかっただけなんだがな。
…普通の、ただ、ごく普通の」

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「バーボンソーダをくれ」

6度目の注文をして、
彼はそれを諦める。

なぜ、望んだものが出てこず、
バドワイザーばかりが出されたのか…。

「その理由は、後で知ったさ」

英語では、それはバーボンソーダではなく、
『バーボン&ソーダ』と、注文すべきだったと。

あのふざけた店員が俺の目を怪訝そうに覗き込んだのは…

その発音が、聞き取れなかっただけだったのだと。

「俺は途中で諦めたね」

皮肉な笑いを鼻から漏らし、彼は言う。

…あの冬。

あの真冬のNY。

アムステルダムAveと81stが交わる角のBARで、
6本目のバドワイザーを飲み干したのち、
俺は雑踏の中にその身を隠した。

「…ポンポン冷えちゃう!」

 
その男の名は『バーボンソーダ』

そう。

バーボンソーダを注文して、
けれどそれを聞き取って貰えず…

6度、バドワイザーを飲んだ男。