猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

遠い国から来た男2

2013年03月12日 01時29分38秒 | ゴンザも隣人!?

 

今日の主役は写真右側に立つ男。
ゴンザの、小学校時代からの親友S氏。
小さいことは気しない、気のいい男で、今や三児の父。
そして左は…若き日の『バーボンソーダ』ね(笑)


まったくこの国は、どうかしていやがる。

「どこが自由の国だって?」

小さく、異国の言葉で呟いてから、男は振り向く。

ついさっきまで、目の前を滔滔と流れていた川は、
今や逃げ道を塞ぐ堀となり、
替わりに横たわっているのは現実だけだ。

『俺はただ、釣りを楽しんでいただけだったのに…』

「ファッキンジャップ!
ここは俺たちが楽しむための土地だ。
今すぐ出ていけ!」

近づいて来た男たちは、
きっと付近の住民だろう。

「やれやれ。釣りぐらい…」

いや。
この、いけすかない連中に、
話は通じないだろう。

雄大な自然の中でさえ、
狭量になれるのは、
『開拓者』たちの縄張り意識か。

『撃たれなかっただけ、マシかもしれないな』

マディソン川に別れを告げて、
男は歩き出す。

『バーボンソーダは元気にしてるかな?』

そういえばこの国に初めて来た時。

ヤツと失敗を繰り返しては、
笑い合ったものだった。

NYの街中で馬の糞を踏んだこと。
思わず飛びのいたら、その足でまた馬糞を…

あの、ヤツと一緒に飲んだBARでは、

「瓶ビールをくれ」が通じず、
不思議に思ったもんだ。

「ビンビアープリーズ!ビンビアープリーズ!」

「…?」

ビンが英語じゃないってことに気づいたのは、

そう、アイツ。

バーボンソーダにそう指摘されてからで、
だけどそれまでに、俺は、散々
「ビンビアー!」を連発した後だったっけな。

いや、だいたい、アイツの名前はバーボンソーダのはずだってのに、
なんであの時、ヤツはバドワイザーばかり飲んでいたんだ…?

「まったくもって、自由の国だぜ!」

いつか、同じように釣りをしたニュージーランド、
クラナキ川では、ライフルを向けられさえしたが、
馬に跨がったその男は、
俺がただの釣り人とわかると、
「ゆっくり楽しんでゆけ」
と立ち去ったもんだ。

「まったく、どうかしていやがる」

異国の言葉で呟きながら、
男は、マディソン川に別れを告げる。


あれから十数年。

可愛い妻と子供に囲まれ、
男は呟く。

「まったく、自由の国だぜここは。
何より、『ビン』が通じるもんな」

美味いビールは、いつもホームにあるものだ。

家族のために新築した家で、
男はゆっくりそれを飲み干した。



*文中の出来事は、

すべてS氏の実体験に基づいたものですが、
S氏の『呟き』についての部分は、私の想像です(笑)