高校教科書選定については、各教科で検討を重ね決定します。いわば教員の重要な仕事の一つです。今回、その選定前に事実上圧力をかけるような「見解」を府教委が各校に出すなど聞いたことがありません。「君が代」強制を正当化するために都合の悪い事実を隠蔽するためなら、これはゆゆしき問題です。
本日(7月16日)朝日新聞夕刊に掲載されました。現場からの生々しい報告と共にご覧ください。
【現場からの報告】
本校の社会科は来年度の教科書選定で実教出版の日本史Aを選定していますが、「日の丸君が代の記述」を巡り、この教科書を裁定しないよう圧力がかかりました。しかし、教科会を何度か開き、校長とも交渉し、このままこの教科書で行く方針です。検定も合格しているこの教科書について採用しないようこうして個別に圧力をかけてくることに憤りを感じています。
実況出版の日本史A(日A302)と日本史B(日B304)の
「国旗国歌法を巡っては日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争で果たした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保障するかが議論となった。政府は,この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制する物でないことを国会審議で明らかにした。しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある。」
という記述について、府教委は
【一面的なものであると考える。それは、学習指導要領の趣旨や,平成24年1月16日の最高裁判決で、国歌斉唱時の起立斉唱を教員に求めた校長の職務命令が合憲であると認められたことに全く言及がないからだ】
また、教科書選定の手引き「地歴」には
【特定の事項・事柄を強調しすぎていたり、一面的な見解を十分な配慮なくとりあげていないこと。】
を示していることをあげ、次のように指示を出しています。
【文科省は、教科書検定に合格したこの教科書について、「検定上誤りとは考えられず、許容されるものである」という見解を示していることから、府教委としては,一部の記述のみをもってこの教科書を採択しない,との結論まで至っておりません。各学校においては、これらのことを踏まえ,校長の権限と責任の下、選定理由を十分明確にし、適正に選定を行うようお願いします】
つまり、半分圧力をかけつつ、文科省にも配慮して、結局は各学校の校長に責任を負わせる形で、この教科書を昨年選定した十数校?にメールを送ってきている、というのがこの間のいきさつです。
本校では,このまま実教でいくことを教科会で確認し、校長の了承のもと採用理由をさらに追加明示して提出することにしました。現在、校長と府教委の間でやりとりが続いています。