不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Nativita' di Filippino Lippi

2007-01-02 11:40:07 | アート・文化

フィレンツェのドゥオモの東裏を走るVia Bufaliniにある
Cassa di Risparmio di Firenze銀行の
本社ビルの一階・Sala delle Colonneで
銀行所有の9点の芸術品を展示する展覧会開催中。
キリスト生誕をテーマにした聖母子像だけを集めた展覧会。
この9点の作品は銀行のプライベートコレクションですから
普段はお偉いさんのお部屋などに飾られているものばかりで
通常は一般非公開。

1400年代から1600年代にかけての作品を集めている中で
必見なのは、やはりFilippino Lippi(フィリッピーノ・リッピ)の
「Madonna col Bambino e Angioli(聖母子と天使)」。
フィレンツェ・ルネッサンスの絵画ではよく見られる
「Tondo(トンド)」なのですが
この作品はその中でももっとも大きなものとして知られています。
ウフィツィ美術館に収蔵されている有名なミケランジェロの
「Tondo Doni(トンド・ドーニ「聖家族」)」は直径120cm。
それに対してこのフィリッピーノ・リッピのトンドは直径173cm。

Filippino_lippi_nativita
才能と環境に恵まれたフィリッピーノ・リッピの
成熟期の作品といわれるもので
聖母子を中心に繊細な世界が描かれています。
天使たちの物憂げな柔らかな表情と仕草には
師匠であるボッティチェッリの影響がよく見られ、
右背部の海を中心とした風景画の技法には
レオナルドの影響が見られます。
限りなく正確に近い遠近法で描かれる建物の中の
一シーンを切り取りながら
右後方に外の景色を取り入れることによって
モノトーンになりがちな画面を
アシンメトリーに切り崩しているところが
この作品のすごいところ。
ピエトラ・セレーナの灰色の石つくりの建物に
描かれる金のオーナメントは非常に凝っていて
病的な感じさえ受けます。
建物の単調な色合いと
天使たちの纏う繊細な色彩の服が
作品全体を非常に落ち着いた、
それでいて華やかで軽やかな雰囲気に仕上げていて
その大きさを感じさせない、見ていて飽きない作品です。

見たくてたまらなかった作品。
期間限定でも一般公開されて嬉しいです。


NATIVITA'
Da Filippino Lippi a Francesco Botticini
nove capolavori di arte sacra
会場:Banca Cassa di Risparmio di Firenze - Sala delle Colonne
      Via Bufalini 6 Firenze
会期:2006年12月12日から2007年1月12日まで
開館時間:8:30-16:45 (月曜日から金曜日)
入場料:無料

logo_albero4 banner_01