電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

津村節子『似ない者夫婦』を読む

2009年08月01日 06時08分32秒 | 読書
津村節子さんというと、吉村昭氏の夫人とだけは承知しておりましたが、残念ながら著書を読んだことはありませんでした。たまたま、図書館で『似ない者夫婦』という題を目にして、面白そうだと手に取り、借りて来た次第。そういえば、先に吉村昭氏の自伝風の随筆集を読んでおり(*)、ここには夫人との結婚の経緯やら生活の困難やらが描かれ、少々世俗からずれているような夫人の言動を、面白く読んだものでした。ただし、それは夫君の側の見方。実際に、夫人の側から見たとき、どうだったのか。

私が夫と一緒に旅をしようと思ったら、夫の取材の折に同行し、夫が図書館に行ったり、取材の相手の人と会っている間に観光し、夜ホテルで落ち合って食事をするくらいである。
夫は、書斎にはいり原稿用紙に向かっている時が一番倖せで、ひたすら書き続け、ストレスというものがない。私は小説を書くのが苦しくて、夜うなされては夫に起こされたりする。その上夫は、締切り前に原稿を書き上げてしまい、新聞連載などは始まる前に書き上げてしまうくらいだから、そういう男と同じ家に居るだけで私は猛烈なプレッシャーを感じさせられる。」(「似ない者夫婦」p.184より)

このあたりの呼吸が、中年夫婦になると実によくわかるものです。同行するところと別行動するところの、ほどよい距離感がコツなのでしょう。当方も、妻を演奏会に誘いますが、あまり地味な曲目だとダメなようです。逆に、私のほうが映画に誘われますが、悲恋ものやホラーなどはわざわざ観る気になれず、興味関心の一致したときに映画館に足を運ぶ、といった具合。

そうそう、本書中の「東と西」という随筆は、日本オペレッタ協会がハンガリーのブダペスト・オペレッタ劇場で、レハールの「微笑みの国」を公演する話でした。これなどは、とってもとっても羨ましい(^o^)/
もう一つ、「遍路の便り」に紹介されていた、将棋面誠氏の『無医村に花は微笑む』の上梓の話題は、読んでみたいと思い、さっそく備忘録にチェックを入れたところです。

(*):吉村昭『私の文学漂流』に見る作家夫婦のあり方~「電網郊外散歩道」より
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