関とおるの鶴岡・山形県政通信

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療養病床削減してもいいんですか?!~市議会で討論しました~

2006年06月26日 | 医療・介護・福祉など社会保障

 先週閉会となった6月定例市議会に、政府の療養病床削減計画に反対し、入院・介護施設の充実を、鶴岡市議会として政府に求めるという内容の意見書を提案しました。 
 賛成したのは日本共産党の3人と無会派の1人で、新生(自民)、黎明公明(保守系・公明)、連合(社民系・民主系)の32人(議長は採決に加わらず。一名は体調不良で退席)が同調しなかったために、賛成少数で否決されてしまいました。 

 議会の中ではこういう結果ですが、議論の内容がどうであったかご覧頂きたいと思い、佐藤博幸議員(新生)の反対討論と、私の賛成討論を掲載します。

<意見書案> 
  療養病床削減に反対し、入院・介護施設充実に関する意見書 政府・厚生労働省は医療制度改革の一環として、療養病床の内、医療型を25万床から15万床に削減、介護型13万床は全廃しようとしています。 厚生労働省は、入院患者は介護施設へ移行し、施設は老健施設や有料老人ホームに転換すればよいなどと説明していますが、特別養護老人ホームの待機者も年々増加の一途をたどって既に38万人にも達していますし、そもそも療養病床に入院されている方の多くは医療を必要としている方であり、介護施設での対応は困難です。 このように介護施設の基盤整備が遅れた状況の中で、療養病床が削減されれば、「入院難民」「介護難民」が広がり、本人と家族に耐え難い負担が強いられます。 
 つきましては、療養病床削減計画をやめ、必要な入院・介護施設の整備を進めることを要望します。 以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

<佐藤博幸議員反対討論> 
 療養病床削減に反対し、入院・介護施設充実に関する意見書の提出に関する意見書の提出について、新生クラブを代表して、反対の立場で討論します。

 厚生労働省は、(中略)患者の状態に即した機能分担を推進する観点から、医療保険、介護保険両面に渡って一体的に見直し、平成24年度までの体系的な再編を進める、療養病床将来像をまとめました。 
 再編計画では、医療型療養病床は医療の必要性の高い患者を対象として、25万床から15万床に減らし、医療保険制度に位置づける一方で、医療の必要性の低い人が入院している療養病床は、平成24年度に廃止をし、介護型療養病床13万床は、23年度までに全廃し、介護保険施設の老人保健施設、有料老人ホーム、ケアハウス、グループホームなどに転換するものです。 

 これはかつて介護施設が少なかった頃があり、昭和48年の老人医療費無料化以来、長年療養病棟は、病院で寝たきりなどの高齢者介護の受け皿となってきました。 入院して治療を続ける必要が無くなったのに退院しなかったり、介護する人手がいなかったりといういわゆる社会的入院や、冬の間だけ入院する越冬入院と呼ばれるものです。 
 平成12年4月に導入した介護保険制度は、医療と介護の機能分担を明確化し、介護の受け皿を整備することによって、高騰する医療費を抑制することがその目的の一つでした。 
 しかし、当時はまだ介護基盤の整備が十分でなかったこともあり、当面の対応として病院である療養病床の一部も介護保険施設として位置づけざるを得ない状況でした。  
 現在、一人当たり一ヶ月にかかる費用は、有料老人ホームは25万円前後、特別養護老人ホーム32万円、老健施設33万円であるのに対して、介護型療養病床は44万円、最も高い医療型療養病床は49万円もかかり、特別養護老人ホームなどと比べると17万円も高くなっております。 
 中央社会保障医療協議会の調査では、医療がほとんど必要ない人と、週1回程度でよい人と合わせると実に8割近くとあります。こうした人たちは、必要に応じて医師の診察を受けた上で、看護師が対応すれば十分であり、入院する必要性が無いと指摘されています。  
 本当に必要なのは、生活を助ける介護や機能回復訓練なのに、病院では薬漬け、検査漬けがまかり通り、身体を縛る拘束もあり、床ずれも多い例があるなどと言われています。 
 医療が必要で無い療養病床を無くし、多数の高齢者に介護施設に移ってもらえば、こうした医療と介護の混在は無くなるはずです。 
 わが国は、医療費高騰の要因として、欧米に較べて病床数が3倍、入院期間が3倍、医療従事者が3分の1と言われる、医療費のあり方が厳しく指摘され、これを期に30年来の課題解決に向けて大きく進んでいくものと考えます。 

 療養病床を廃止するということでありますが、実際は病院から介護施設への衣替えになります。 政府は転換のための対策を、転換支援の助成事業などをおこなうとともに、老人保健施設、特別養護老人ホームなどの設置基準の見直しをおこなうとしています。 
 これから一層厳しくなる医療財政や、利用者の立場を考えれば、この改革は避けて通れないと考えます。
  その理由の 
  一つ目は、社会的入院を無くさなければならないこと、 
  二つ目は、高齢者は介護施設などで生活し、専門の職員にお世話をしてもらう方     
   が、質が高く快適に過ごせる可能性が広がるし、使える部屋も介護施設の方が  
   病院より広く、生活の場に相応しいこと、 
  三つ目は、給料の高い医師や看護師の配置が、介護施設の方が少なく、コスト
   が低くて済む
ことです。  

 本市には、平成17年4月1日現在、療養病床が192床あり、内介護型病床は5施設81人の定員になっております。 現在療養病床にいる高齢者にとっては、病院が介護施設になったり、病院から介護施設に移されたりすれば、医療やサービスの負担がどうなるのかという不安もあるでしょう。 
 介護施設が無いのでやむを得ず療養病床を利用している人たちにとっては、受け入れてくれる代わりの介護施設があるのかという不安も残るでしょう。 
 こうした不安に政府は、丁寧な説明をし、十分な受け入れ施設を準備した上で進めていくこと、療養病床については、合併症などにより全身の医療管理が必要な人には、医療の必要度に応じた評価区分を、実態を十分反映したものになるようにすることを要望して、この度の、療養病床削減をやめ、必要な入院・介護施設を整備することを要望した意見書の提出について、反対の討論と致します。

<関徹賛成討論> 
 日本共産党議員団を代表して、療養病床削減に反対し、入院・介護施設充実に関する意見書に賛成の立場から4点申し述べます。  
 今通常国会で与党の多数により可決成立した、医療保険制度大改悪法案の中で、療養病床削減計画が示された訳ですが、この計画は、現実の医療の状況、療養型病床の状況を考えれば、決して実施されるべきではないし、実施することのできるはずのない、極めて危険な計画であります。

 第一の問題は、「社会的入院が半分もいる」などという主張自体が、誤りであるということであります。 
 この7月1日から実施されました診療報酬の改訂では、療養病床の入院患者をADL区分で三段階、医療区分で三段階に分け、一番低い区分の診療報酬を、とても病院が経営していけないほどの低い水準に引き下げるという改訂を行いました。 
 日本療養病床協会がおこなった調査の中で、最も低い医療区分Ⅰに該当する患者が49.9%を占めたことが報告されています。山形県保険医協会の調査では45.8%です。 
 この区分の患者の状態を見ることで、政府の言う「社会的入院」なるものの実態を知ることができますが、療養病床協会は、5930人の患者から250にのぼる症例を報告しています。
 末期癌で転移があるが癌性疼痛はない方、四肢麻痺であるが頭部外傷によるもの、胃ろうがほどこされているが、発熱の無い方などなど、区分Ⅱ、Ⅲの19疾病及び状態から外れる人はすべてⅠに分類される、驚くべき事態となっています。 
 また、軽度とされる方も、看護師を始めとする専門職が 配置をされている療養病床だからこそ、「軽度」の状態が保たれているのであります。
 口腔ケアによる肺炎予防、尿量測定等の観察などをもとにした尿路感染予防などなど、介護施設や、ましてや在宅では、困難なケアであり、そうしたケアが失われれば、容易に重症化するというのが、療養病床の大半を占める高齢者の特徴でもあります。 

 二つ目に、療養型病床が削減された後に、退院患者が安心して療養できる場所が確保される見通しが無いという問題です。 
 今でさえ、特養待機者が全国に34万人、鶴岡でも500人を超えています。介護基盤の整備はまだまだこれからの課題なのであります。参酌標準なる基準が設けられ、施設の増設には待ったがかけられているというのが今の実態であります。 
 社会的入院の是正などを口にするのであれば、必要な介護施設の整備にこそ取り組むべきでありますが、療養型を減らした分、どういう施設整備をするのか、それがまずもって示されなければなりません。 

 また厚労省は、「老人保健施設や老人ホームへの転換を支援する」などと言っていますが、療養病床と一人当たり病床スペースが異なる老健施設などへの転換は、大きな改造を必要とします。 
 多くの病院がまだ今の療養病棟をつくった時の支払いも進まない状況の中で、新たな改造をおこなえる病院が限られることは火を見るより明らかでありす。 
 しかも、今医療区分Ⅰに分類される方々の中で、先にあげたような医療的処置を要するような人は、医師・看護師などの数が少ない、老健や特養などでは対応が困難だとして、受け入れが厳しく制約されているのがこの地域でも実情であります。 
 つまり、現行の療養病床が仮に介護施設に転換したとしても、受け入れが困難な方々が多く発生するということであります。 

 三つ目に、医療費抑制策の誤りです。  
 政府は、医療費が増大して医療保険制度が破綻するなどと主張をしていますが、そもそも日本の医療費は、GDP費に占める医療費の割合が、OECD加盟国中18位であることに示されるように、世界的には低い水準にあるというのが客観的な事実です。 
 医療には一層の財源を投入して、安全・安心、ゆとりの医療を築いていくことこそが国民の願いであります。 
 
 さて、療養型病床削減による社会的入院是正自体が、そのことを通して医療費を削減することを狙うものですが、ここには重大な問題が隠されています。 
 「療養病床で一ヶ月約49万円かかる」こういう主張がありますが、一年以上入院している患者は、その約7割(33万円)程度にとどまるのであります。 
 一方、例えば特養では、介護給付に較べまして、特養は32万円、老健が33万円というようなデータも出ている訳ですが、介護給付に加えまして、療養病床の費用計算と同じように、減価償却等資本費や医療費・自治体の超過負担を計算すれば、35~40万円程度要するということ、在宅でも要介護5の方を介護するために必要な費用は358300円の介護給付だけでなく、本当に必要な介護をおこなえば療養型に入院している以上の費用を要するのだということが、日本福祉大学の二木氏の研究などで明らかにされています。 

 反対討論の中で、「病院では薬漬け・検査漬け」などという見解も示されましたが、療養型は包括払いですからいくら投薬をしたり検査をしても収入は増えませんので、そういう事態は今の状況では無いのではないかと思うのであります。 

 「療養病床から退院した方が、特養などの施設に行っては、却って費用がかかる」ということは、療養病床削減による医療費べらしは、削減される23万床の患者の少なくない部分が、施設にもいかず、在宅でも十分なサービスを受けないことによって初めて可能となるという、恐るべき計画であるということであります。 

 四つ目に、山形県・庄内の特殊性を見なければならないということであります。
  65才以上人口10万人対比での療養病床が最も多いのは、高知県の 3980床でありますが、一方山形県 はその16%に過ぎない648.2床で47位 にとどまっています。庄内はさらに少ない訳であります。
 一方で、特養・老健・軽費老人ホームの三つ合計は、全国平均を超えているということでありますから、山形県では、社会的入院なるものの割合が全国で最も少ないと考えられる地域なのであります。 
 そして、高齢化率、高齢者のみ世帯数、所得水準の低さなどの条件を考えれば、療養病床が削減された時に、最も深刻な問題が発生すると考えられる地域であるということであります。 

 今議会の総括質問に対する答弁の中で市長が、厚労省の主張を引いて「お医者さんの治療が必要無い方が半分ぐらい、病床が消えてなくなる訳でない」と述べられましたが、厚労省のその主張が誤りであるだけでなく、この地域の実情は、どこにも増して深刻であるということであります。 

 鶴岡には、医療型、介護型合わせて388の療養病床がありますが、私はこの間、療養型病床を持つ病院の医師、看護師、事務管理者の方々のお話を伺ってきました。
 鶴岡の療養病床の多くの患者さんが「社会的入院」などとして追い出しのターゲットにされている。大変な事態だと痛感をしたところであします。 

 主に以上の4つの点から考えて、鶴岡市議会としては今次意見書を是非とも採択し、法が改悪されたもとでも、その具体化を許さないために全力を尽くしていくべきであると強く訴えるものであります。

<終わりに>
 議会本会議での意見書に関する討論は、反対の人が先に意見を述べますが、それが終わるとすぐに賛成討論となりますので、「反対意見の批判」という形にするのはなかなか困難です。
 今回の反対討論に対しては、すべての主張ついて批判を展開したいところですが、残念ながらそうなっていないのは、以上の事情によります(それでも今回は、反対討論を聞いて気づいた点をいくつか自分の討論に盛り込みましたが)。

 しかし、私自身は、反対討論を聞いていて、政府・厚生労働省の主張(そしてそれが市長の主張)をなぞっているだけで、鶴岡の療養病棟の現実はちっとも知らないナと思いました。
 それでも、「多数決」で決めてしまうというのですから困ったものです。
 ご覧になった皆さまはどうお感じだったでしょう?