ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

悼む人

2009-01-15 05:00:00 | 読書
年末以来、平安時代の考証にと『陰陽師』を読み続けているのですが、初版から読むと相当な巻数にのぼり、6巻ぐらいまで読み終わったところで、年末に天童荒太の『悼む人』という小説が刊行されました。

文庫本ではないのですが、この人の本は『家族狩り』以来、見つけたものはすぐに読むことにしています。
私が小説と言うジャンルの本を読むようになったのは、『家族狩り』を読んで以降のことなのです。

坂築静人という青年、亡くなった人を悼んで全国を巡る旅を続けている人間を主題に、静人の母・巡子の病気の進行、蒔野杭太郎というエログロを対象に記事を書くジャーナリスト、夫を愛ゆえに殺してしまって「愛とは何だったのか?」を見つめる奈義倖世と名乗る女性を中心に話は進んでいきます。

静人は他人が亡くなった現場に出かけ「亡くなられた方は誰を愛していたのか」「誰に愛されていたでしょう」「人に感謝されたことがあったでしょうか」という3点を近辺の人に聞きまわり、そのことを心に刻んで悼むという行為を繰り返すのでした。

       

蒔野は最初に登場する人物、静人にジャーナリストとしてインタビューするのですが、悼むという行為に不快さを顕わにします。

巡子はガンを宣告され、静人の妹の美汐の妊娠とも絡めて話は進みますが、ガン患者の末期までよく描かれていると思いました。

倖世は仏様の生まれ変わりと言われる甲水朔也と結婚することになるのですが、朔也に「殺してくれ」と頼まれ、断る倖世に「愛しているなら言うことを聞いてくれ」と懇願され、ついに包丁で刺してしまうのです。それが本当の愛だったのか葛藤するわけです。

この紹介した登場人物が相互に絡み合って、この小説は成り立っていますが、私には静人の『悼む人』というより、愛とは何か、それは執着ということなのか、朔也と倖世の葛藤の方が考えさせられました。

この3連休、釣りにも出かけなかったので、一気に『悼む人』を読み切ってしまいました。天童さんが7年もの歳月を費やして書かれたものを僅か数日で読んでしまったのは、筆者に申し訳ないと思いもするのですが、小説は論文と違って読み易いのです。

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