(© Provided by The Wall Street Journal. )
① ""中国にドットコムバブル到来か、IT業界に既視感""
Phred Dvorak and Liza Lin 2018/10/16 09:03
度を超えた支出に法外なバリュエーション――。20年前のドットコムブームが再び戻って来たようだ。しかし、今度の主役ははるかに大きい中国企業だ。
スマートフォン経由でコーヒーを受注する北京に本拠を置くスタートアップ企業が、立ち上げからわずか7カ月で評価額が10億ドル(約1118億円)以上のいわゆる「ユニコーン」の領域に到達した。「トラック業界のウーバー」と呼ばれる別の企業は、評価額が2017年売上高の300倍に高騰した。米配車大手ウーバー・テクノロジーズ自体の評価額は売上高の10倍程度だ。
しかし、中国にダイナミックな活気を見いだしている投資家がいる一方で、厄介な国内規制や世界的な貿易摩擦などの要因が相まって市場が一段と脅かされつつあると見る投資家もいる。最大のリスクは、ドットコムバブルが再び崩壊することだ。つまり、2000年代に米IT(情報技術)セクターの価値を数十億ドル吹き飛ばし、IT投資を何年も冷え込ませたサイクルが中国にも到来する可能性だ。
② そうした兆候は既に現れている。中国の上場IT企業の株価は先週、世界的なIT株の下落や米中の貿易紛争激化に対する懸念を受けて急落した。上海総合指数は先週7.6%、IT銘柄が多くを占める深セン市場は10.1%それぞれ下落した。
さらに米政府は最近、テクノロジー関連のスパイ行為で中国政府を非難しているほか、人権侵害についても懸念を表明している。もし米国が中国IT企業を対象に制裁を科せば、それら企業は製品の主要市場を失う結果になりかねない。
中国IT産業の成長を主に支える同国のネットサービス大手は自国では政府からのプレッシャーに、海外では対米関係の緊張にさらされているほか、株価下落にも直面。「にわかに板挟みの状況に陥っている」と、米シンクタンク、ユーラシア・グループのテクノロジーアナリスト、ポール・トリオロ氏は指摘する。「こうした問題は今後、悪化する一方だ」
③ 米企業上回る調達額
今のところ、スタートアップ企業についてはブームが続いている。ダウ・ジョーンズ・ベンチャーソースのデータによると、中国のユニコーン企業109社は総価値が米国のユニコーン企業127社のそれを上回る(5350億ドル対4780億ドル)だけでなく、米企業に比べてかなり速いスピードでユニコーン企業になっている。
シリコンバレー有数のベンチャーキャピタル(VC)企業セコイア・キャピタルのファンドに詳しい関係者によると、同社は最新のグローバルファンドの資金の大部分(最大60%)を初めて中国に投資する可能性がある。ファンドの運用資金は80億ドルと同社史上最大となる見通しだ。
ベンチャーソースのデータによると、中国のスタートアップ企業の資金調達額は今年これまでに710億ドルと、初めて米スタートアップ企業の調達額(70億ドル)を上回りつつある。その投資額は5年前の18倍と2000年代のIT株バブル以来のペースで成長しており、中国が世界のテクノロジーハブとしてシリコンバレーを追い越すのではないかとの見方も出ている。
しかし、中国IT企業の支配力は脅かされつつある。中国政府が民間IT企業の影響力に警戒感を強めているほか、IT最大手の多くが黒字化のめどがほとんどたたないまま価格消耗戦で資金を急速に使い果たしている。
今年の中国スタートアップ企業に対する投資の約45%が国外からのものであることを考えると、余波は世界に及ぶ可能性がある。一部の投資家は既に痛手を受けている。
そうした事態が垣間見えるのが、中国の自転車シェアリング企業だ。それら企業は昨年、資金を迅速に投じることができなかった。北京や上海などの国内都市に数百万台の自転車を設置したあと、一部企業は欧米の都市圏征服を目指していた。
しかし今、キャッシュフロー問題が顕在化しつつある。事情に詳しい関係者によると、摩拝単車(モバイク)は最近、直近の資金調達ラウンド後の評価額を10億ドル近く下回る価格で身売りした。またOFO(オフォ)は海外事業の拡大計画を後退させており、業界3位の小藍単車(ブルーゴーゴー)は昨年、経営破綻した。
④ 厄介な国内規制
もう1つの不確実要素が、中国の規制環境だ。中国の巨大IT企業の躍進は長らく国家の誇りとなっていた。中国指導部は依然イノベーション(技術革新)を促してはいるものの、テンセントホールディングスやアリババ・グループ・ホールディングなどの国内IT最大手の多くに対する統制を強め、政府の意に沿わない製品の販売をやめさせたり、阻止したりしている。
中国共産党機関紙の人民日報は6月、投資を「ギャンブル」にしかねないITスタートアップ企業への資本殺到に警鐘を鳴らした。スマホメーカーの小米科技(シャオミ)は意欲的な新規株式公開(IPO)計画を縮小し、最終的に当初期待していた評価額の約半分となる540億ドルで7月に上場することを余儀なくされた。
それでも資金は流入し続けている。中国の投資会社、高瓴資本集団(ヒルハウス・キャピタル・グループ)は9月、新たに106億ドルのファンドの組成を明らかにした。アジアのプライベートエクイティ(PE)企業の調達額としては過去最高で、米投資ファンドKKRが昨年立ち上げたファンドの調達額93億ドルを上回る。ヒルハウスによると、ファンドは「大幅に応募超過」となった。
中国ITブームの支持者はリスクを冒す価値はあると話す。
その1人がテンセントの元幹部で投資会社、元生資本(ジェネシス・キャピタル)の創設者の彭志堅(リチャード・ペン)氏だ。ジェネシスは、トラック業界のウーバーと呼ばれる満幇集団(フル・トラック・アライアンス・グループ)の最新の資金調達ラウンドで出資している。「外部の多くの人は、中国企業の資金調達ペースは過剰でバリュエーションは非常に高いと考えている」とペン氏は指摘。「しかし、第1に(中国企業は)巨大な可能性を秘めており、第2に中国企業の成長ペースは国外の同業他社をはるかに上回る」と述べた。
⑤ 第2のアリババへの期待
格好の例がアリババだ。同社が2014年に実施したIPOは史上最大規模となり、米VCのGGVキャピタルをはじめとする投資家は巨額の利益を得た。GGVのマネージングパートナー、童士豪(ハンス・タン)氏によると、2003年にアリババに投資した当時、同社の評価額は1億8000万ドル前後だった。以来、同社の価値は2000倍以上に増加した。
タン氏は「アリババの資金調達ラウンドはどれも高くついた」としながらも「しかし、同社は5000億ドル企業になり、もうすぐ1兆ドル企業になるだろう」と述べた。
今は投資先を求めて多額の資金が流れ込んでおり、時に従来の指標ではバリュエーションを正当化するのが難しくなっている。一部のスタートアップ企業はまだ開発してもいない市場を基に見込み売上高を算出していると銀行関係者は話す。
また、中国金融市場は依然制約があり、投資の選択肢が不足していることから、開かれた経済市場では他に向けられる可能性のある資金がスタートアップ企業に流れている可能性が高い。
また、中国政府が最近、アリババやテンセントなどのIT大手に対する支配力を強めていることは、IT企業の事業見通しがいかに急速に変化しかねないかを物語っている。人工知能(AI)などの先端技術で世界をリードするにしろ、国内にデジタル監視網を構築するにしろ、IT企業は自社技術が政府の幅広い目標にいかに合致しているかに大きく左右される。例えば、テンセントのソーシャル・メッセージ・アプリ「微信(ウィーチャット)」は言論の取り締まりや群衆の監視に利用されている。
アナリストの推計によると、テンセントの一部ゲームの規制当局による承認が遅れたことで、同社の4-6月期(第2四半期)売上高は15億ドル減少した。それ以前には、アリババの関連会社アント・フィナンシャル・サービス・グループが、政府が支援する制度を優先するため、高収益が期待できる信用スコア事業から手を引くことを当局に余儀なくされた。
※ この頃、アメリカのマスメディアの中国に対する見方が厳しくなっていると思い
ます。特にウォールストリートジャーナルは、保守的で強硬な面があります。
理由の一つは、世界の覇権争いの相手国ということもありますが、科学、軍事、
世界戦略での躍進と追い上げが急で危機感があるのが原因と考えています。
確かにやり過ぎは、ゴーストタウンや過当競争、偽ブランド、取引・契約の不透明性
など至る所に見られますが、経済については中国(人)の考えや行動は、自国の基準で判 断するべきではありません。
簡単に言えば、図太いしたたかな野心的な肉食系であり、また、その膨大な人口
と資金力で朝鮮戦争ではありませんが、経済における""人海戦術""ともいうべきもの があり、倒れても倒れても、次から次へと出て来るというパワーがあります。
それに一党独裁制で指示・命令があれば、一斉に動くというのも、ある意味で
大きなメリットです。
こういう大国を相手にするには、"隣の芝生は緑"ではなく"隣の芝生は枯れる"とか
崩壊するという本当の分析を欠いた視野狭窄の人達では、対処できないのは、ちょっと
考えれば判ります。今、中国の経済、企業に関する本を何冊か読んでいます。読めば
読むほど、あなどれない国だということが実感されます。
更に言えば、隣国をあげつらう暇があるなら自国の弱点を改革して、強靭化を図る
のが先決です。